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中国意匠特許制度の改正と実務(2024年)

本記事は、発明推進協会の発行する発明誌の2024年7月号、8月号に連載した中国の意匠特許制度の改正に対応する実務上の変更の詳細な説明を転載するものです。冊子掲載のため、有料とします。

はじめに
 中国の特許庁に当たる国家知識産権局は、2021年6月1日に特許や意匠に関し広範囲にわたって影響のある改正特許法を正式に施行した。この法改正の実務上の適用を定める特許法実施細則および審査基準である特許審査指南の改正には2年以上要し、2024年1月20日にようやく施行されたところである。中国の特許法は意匠権も対象としており、その改正には存続期間の延長や、部分意匠、国内優先権など新たな制度の導入だけでなく、意匠の国際登録に関するハーグ協定(1999年版)の加盟に伴う措置もあったが、同協定は中国に関して2022年5月5日に発効しながら国際意匠出願の審査も行われず長期間滞留していた。
 改正特許法実施細則および改正特許審査指南により、意匠特許出願の規定や審査基準の変更内容が明確となったことから、意匠特許権侵害紛争が多く発生している中国で意匠特許権を活用するための参考になるよう、出願手続き上の変更点やその注意点を解説する。
主な改正内容
 2021年の特許法改正における意匠特許出願に係る変更点と対応する特許法(以下、かっこ内では法と略称)、特許法実施細則(以下、かっこ内では実と略称)、特許審査指南(以下、かっこ内では審と略称)の条項は、以下のとおり。
・意匠特許権の存続期間を10年から15年に延長。出願日が2021年6月1日より前は10年間であったが、6月1日以降は15年間となった。(法42条1項)
・部分意匠の保護が明確化された。(法2条4項、実30条2項、31条3項、審第一部第三章第4.4節、4.5節)
・意匠特許でも国内優先権主張が可能となり、出願人が中国で第一国出願している場合、出願日から6カ月以内に同一主題の意匠特許を出願するとき、発明特許および実用新案特許出願も含め優先権を享有できる。(法29条2項、実35条2項、3項、審第一部第三章第5.2.2節)
・秘密意匠に代わる審査延期を利用できる。(実56条2項)
・意匠特許の有効性評価書(専利評価報告書)の請求主体に被訴侵害者が追加された。(法66条2項)
・初級審査(方式審査)で創作性の審査が追加された。〈実50条1項(3)号、審第一部第3章第8.2節〉
・意匠の国際登録に関するハーグ協定加盟に伴う関連手続きと審査が追加された。(実第12章136~144条、審第六部)
上記以外の意匠出願に関する主な改正は、以下のとおり。
・意匠特許出願書類の補正に関する要件(審第一部第3章第4.1節、第4.2節および第4.3節)
・法律違反、社会倫理違反および公共の利益の妨害(審第一部第三章第6.1.1節、第6.1.2節および第6.1.3節)
・意匠特許権の非登録要件(審第一部第3章第7.4節)
・単一性審査(審第一部第3章第9節)
・範囲を超えた補正に関する審査(審第一部第三章第10節)
  紙幅も限られるため、本稿では、部分意匠、単一性、分割出願、国内優先権、出願書類の自発補正、審査延期、意匠国際出願などについて紹介する。

以下は、記事をご参照ください。

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