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中国「特許紛争行政裁決と調停弁法」(意見募集稿)公示

国家知識産権局(CNIPA)は、7月18日、特許紛争行政裁決と調停弁法(专利纠纷行政裁决和调解办法)意見募集稿を公示し、9月2日まで一般からの意見を募集する。

中国政府が2014年10月に行政裁決制度を健全化し、行政機関が行政管理活動と密接に関連する民事紛争を解決する機能を強化することを強調したことに始まり、2021年の「知的財産権強国建設要綱(2021-2035年)」、「第14次5か年計画、国家知識産権局の保護と運用の規則」で、特許侵害紛争の行政裁決制度が役割を発揮し、行政裁決の執行力を強化、知的財産権侵害紛争の行政裁決制度を健全化、知的財産権行政裁決チームの人員配置と能力の強化を提案した。その後、特許法及び特許法実施条例の改正を受けて、2023年9月、国家知識産権局、司法部は、「新時代の特許侵害紛糾行政裁決業務の強化に関する意見」を公示し、法治保障の強化、法定職責の厳格な履行、事件処理の強化、支援システムの整備などの面から特許侵害紛糾行政裁決を具体的に整備した。2024年4月に、国家知識産権局は8部門と共同で「知的財産権保護システム建設プロジェクト実施計画の通知」を公示し、特許、著作権の行政裁決の規範化の構築強化の必要性を指摘した。
 こうした背景は、司法による紛争解決から行政による紛争可決に舵を切る中国政府の強い意向が反映されており、特許法関係の法整備が終わったこの時点で、手続法である弁法案を作成し、意見募集の運びとなりました。司法での紛争解決は増加傾向でコストと時間がかかるとの批判や懲罰的賠償の利用増加があり、裁判に代わる行政ルートです。日本企業にとって、行政手続きに注意が必要であることから意見募集稿ではあるが、仮訳を作成し、ご紹介する。

 本弁法は以下の通り、5章86条からなる。
 第一章 総則   第1~11条
 第二章 行政裁決 第12~62条
  第1節 事件処理手順
  第2節 権利侵害判断
  第3節 証拠
  第4節 重大特許権侵害紛争の行政裁決
  第5節 医薬品特許紛争の早期解決メカニズムの行政裁決
 第三章 行政調停 第63~79条
  第1節 調停手続き
  第2節 実体基準
 第四章 法的責任 第80~83条
 第五章 附則    第84~86条

本弁法では、行政裁決での一般的な権利侵害に加え、重大な特許権侵害紛争、医薬品特許紛争の早期解決メカニズム及び特許開放許諾実施紛争を含む。このため、本弁法が成立すると「重大特許侵害紛争行政裁決弁法」と「医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」は同時に廃止される。
 一方、行政調停では、特許出願権と特許権帰属紛争、発明者と創作者の資格紛争、職務発明創造の発明者と創作者の奨励と報酬紛争、発明特許出願公開による賠償請求権紛争、及びその他の特許紛争が対象となる。
 その他の注目点としては、新たな送達手段、オンライン口頭審理、特許業務管理部門、関係当事者、技術調査官、合議体、技術鑑定などの規定に加え、行政裁決申立ての資格、法定期限(時効3年)、合併審理などが明確にされ、関係規定が追加されている。

特許紛争行政裁決と調停弁法(意見募集稿)仮訳
专利纠纷行政裁决和调解办法(征求意见稿)2024年7月18日

第一章 総則
第1条【立法根拠】 党中央、国務院の知的財産権保護強化に関する政策決定を貫徹し、社会主義市場経済秩序を維持し、法に基づき行政をさらに推進し、特許権者と一般公衆の合法的権益を保護し、特許紛争の行政裁決と調停作業を規範化するため、「中華人民共和国特許法」(以下、特許法)、「中華人民共和国特許法実施細則」(以下、特許法実施細則)及び関連法律法規に基づき、本弁法を制定する。

第2条【適用範囲】 特許業務管理部門は、特許侵害紛争を処理、その他の特許紛争を調停する場合、本弁法を適用する。
 特許業務管理部門は、特許紛争の行政裁決と調停業務において難しい問題に遭遇した場合、上位の特許業務管理部門に専門的指導を求めることができる。

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