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中国 特許審査指南の改正(2)発明特許保護期間延長手続き

国家知識産権局が改正し、2024年1月20日に施行した特許審査指南(ガイドライン)から実務に影響のある主な事項を紹介する。2回目は、発明特許出願の審査遅延や医薬品に関する発明特許の販売承認に伴う存続期間の延長手続きとその注意点です。医薬品特許の存続期間延長では、法律や法規に外国企業の新薬で中国での上市承認前に外国ですでに上市されていた場合は対象外とする規定はないものの、国家知識産権局の説明会でそうした発言があったために、公平な保護がされないと認識や反応があり、中国政府の対応には疑問があることから今後の対応が注目される。


(一)特許出願審査遅延(特許法第42条第2項)に基づく特許権利期間の補償(PTA)

 (背景)
 特許権利期間は、特許法第42条第1項で20年と規定し、出願日起算と特許権利期間の起点と終点を明確にているが、権利の発生は公告日であるため、実際の保護期間は20年よりも短いのが普通である。特許権利期間補償制度(PTA:Patent Term Adjustment)は、1999年のアメリカの発明者保護法に由来し、その後、日本、韓国などが相次いで独自のPTA制度を制定し、各国が補償する具体的理由に違いがあるものの、特許出願の登録手続き中に出願人以外の原因による不合理な遅延期間に対して追加の権利期間を補償している。中国がPTA制度を導入した理由の一つは、発明特許出願の実体審査にかかる期間は比較的長く、審査期間の不合理な延長の理由が専利局にあって出願人にない場合、特許権者は自らの責任に帰さない理由で特許権期間を失うことになり不公平との指摘があることの他、2020年に当時のトランプ大統領の強い圧力からアメリカと包括的貿易協定を二国間で締結したことにある。
 2020年の第4回特許法改正で、特許法第42条第2項を新設しPTA制度を導入し、発明特許出願の登録過程における出願人に起因しない不合理な遅延について、相応の特許権利期間の補償を与えることで、特許権者の合法的権益をより適切に保護することにした。
 注意点は、2021年6月1日以後登録になった発明特許が対象が対象であり、実用新案や意匠特許出願は対象外であること、特実同日出願をした案件は対象外であることなどである。

 (改正法)
特許法第42条第2項
 発明特許出願日から起算し満4年、かつ実体審査請求日から起算し満3年後に発明特許権が付与された場合、国務院専利行政部門は特許権者の請求に応じ、発明特許権について登録手続き中の不合理な遅延について特許権利期間の補償を与える。但し、出願人に起因する不合理な遅延は除く。

特許法実施細則第77条から第79条、第84条
第77条 特許法第42条第2項の規定に基づき特許権期間補償を請求する場合、特許権者は、特許権の登録を公告した日から3か月以内に国務院特許行政部門に提出しなければならない。
第78条 特許法第42条第2項の規定に基づき特許権期間補償を与える場合、補償期間は、特許の登録過程における不合理な遅延の実際の日数に基づき計算する。
 前項にいう特許の登録手続における不合理遅延の実際の日数とは、特許出願日から4年を経過し、実体審査請求日から3年が経過した日から特許権の登録公告日までの間の日数をいい、合理的な遅延日数と出願人による不合理な遅延日数を減じる。
 以下に掲げる情況は、合理的な遅延である:
 (1)本細則第66条の規定に従い特許出願書類を補正後に特許権が登録された場合、復審手続による遅延;
 (2)本細則第103条、第104条に規定する情況による遅延;
 (3)その他の合理的な状況による遅延。
 同一の出願人が同日、同様の発明創造に対し実用新案特許及び発明特許を出願し、本細則第47条第4項の規定に従い特許権を取得した場合、当該特許権の期間には、特許法第42条第2項の規定を適用しない。
第79条 特許法第42条第2項に規定する出願人による不合理な遅延には、以下に掲げる情況が含まれる:
(1)指定期間内に国務院特許行政部門が発行した通知に応答していない;
(2)出願遅延審査;
(3)本細則第45条の規定の情況による遅延;
(4)その他出願人による不合理な遅延。
第84条 国務院特許行政部門は特許法第42条第2項、第3項の規定に基づき提出された特許権期間補償請求を審査後、補償条件に適合すると判断した場合、期間補償を与える決定を下すとともに、これを登録と公告する。補償条件に適合しない場合、期間補償しない決定を下すとともに、請求を提出した特許権者に通知する。

 対応する審査指南の規定は以下の通り。
1.第五部第9章第2節 特許法第42条第2項に基づく特許権利期間の補償
 請求の提出、補償期間の確定、補償請求期間の審査、登録と公告

(PTA認定の説明)

(1)請求の提出(第2.1節)
 特許権者は、自発的に、特許出願の登録公告日より3か月以内に専利局に請求し、相応の費用を納付しなければならない。一般的な手続きとしては、出願代理人に認可査定の報告時にPTA期間の報告を含めるように一般指示をしておくことで、手続き漏れを防ぐようにすることが望ましい。
(2)PTA期間の確定(第2.2節)
 特許法実施細則の規定によると、不合理な遅延の実際の日数は、特許出願日から4年を経過し、実体審査請求日から3年が経過した日から特許権の登録公告日までの間の日数をいい、合理的な遅延日数と出願人による不合理な遅延日数を減じるとしている。PCT出願は、国内移行日を出願日と見做し、分割出願は、分割出願日を出願日と見做し、PTA期間を計算する。
 専利局は、以下の補償期間の計算式を説明資料で示している。
 PTA期間=(D1−D2)−T1−T2
 D1は、登録日で、公告日である。
 D2は、満4年/満3年の日で、特許出願日より満4年の日、或いは、実体審査請求日より満3年の日を指し、遅い方の日を基準とする。なお、D2の実体審査請求日は、出願人が実体審査を請求した日ではなく、実体審査費用を全額納付した日をいうので注意が必要である。
 中国の実体審査は、対象特許出願が公開されることが条件となるため、出願と同時に実体審査を請求し、審査請求費用を納付しても公開になるまで審査は開始されないため、実体審査請求日から公開日までの期間をPTA期間に算入することは明らかに不合理であるため、実体審査請求日が公開日より早い場合、実体審査請求日満4年ではなく、満3年、つまり、公開日から起算する。
 T1は、合理的遅延で、権利帰属紛争や財産保全のために審査手続きが中止となったことなどにより生じた合理的遅延の日数をいう。
 T2は、出願人による不合理な遅延で、出願人が審査での応答など指定期間の延長を請求したり、審査遅延を請求したりした場合など、出願人による不合理な遅延の日数をいう。
 (a)特許出願審査手続きでの合理的遅延
 登録過程における合理的な遅延は、復審(拒絶査定や無効取消の審判)手続きで特許出願書類(請求項)の補正がされた場合、権利帰属紛争或いは裁判所の保全裁定執行や行政訴訟で関連手続が中止した場合である。つまり、これら以外は算定の対象になる。
(b)出願人による不合理な遅延期間
 特許法実施細則第79条は、出願人による不合理な遅延を次の通り規定している。
 ①手続き期間延長し応答しなかった場合、遅延期間は期限満了日より実際の回答提出日まで。
 ②延長申請した場合、延長期間は実際の延長審査期間。
 ③新制度の援用加入による遅延の場合、延長期間は申請書類の補充期間。
 ④権利回復請求による遅延の場合、延長期間は原期限満了日から回復に同意する権利回復請求承認通知書の発行日まで、但し当該遅延が専利局によるものを証明できる場合を除く。
 ⑤PCT出願で30か月以内の中国国内移行出願で早期審査を請求せずに生じた遅延の期間。これは、専利局は最先の優先日から30か月経過するまで審査を開始しないために、早期審査請求がなければ、その間の遅延は専利局に非はないためである。
 ここで、④~⑤は特許法実施細則第79条第1項第(4)号の「その他の出願人による不合理な遅延」に属する。
(3)PTA期間の決定と救済(第2.3節、第2.4節)
 PTA請求が関連する請求要件に適合する場合、専利局は関連事項を特許登録簿に登記し、特許公報で公告する。なお、関連要件適合しない場合、請求人は1回のみ意見陳述或いは補正の機会が与えられる。
(4)PTA期間の算定例
 簡単な確認方法としては、出願日から公告日までの期間が4年未満、実体審査日(公開日より実体審査請求が前の場合は公開日)から3年未満の場合、PTA期間が無いため補償対象ではなく、対象日数がある場合はその短い方が対象となると理解する。
 (a)パリルートの場合
 出願日:2019年1月10日
 公開日:2020年7月10日
 審査請求日:2019年1月10日(同日納付)
 審査:OA1回 期限内に対応
 登録公告日:2024年1月20日
 >算定方法
 2024年1月20日-(2019年1月10日+4年)=375日
 2024年1月20日-(2020年7月10日+3年)=194日
 >判定 補償日数194日
 (b)PCTルートの場合
 国際出願日:2018年4月1日
 国内移行日:2019年11月10日
 公開日:2019年12月31日
 実体審査請求日:2020年4月1日(同日納付)
 審査:OA2回目の期限2023年6月10日を2か月延長し2023年8月9日応答
 登録公告日:2024年1月20日
 >算定方法
 2024年1月20日-(2019年11月10日+4年)-(2023年8月9日-2023年6月10日)=11日
 2024年1月20日-(2020年4月1日+3年)- (2023年8月9日-2023年6月10日)=134日
 >判定 補償償日数11日
 (c)分割出願の場合
 出願日:2015年10月10日
 分割出願日:2019年8月20日
 公開日:2019年11月20日
 実体審査請求日:2019年8月20日(同日納付)
 審査:拒絶査定、不服審判
 再審決定日:2023年6月20日
 審決日:2023年10月10日
 登録公告日:2024年1月20日
 >算定方法
 2024年1月20日-(2019年8月20日+4年)-(2023年10月10日-2023年6月20日)=31日
 2024年1月20日-(2019年11月20日+3年)-(2023年10月10日-2023年6月20日)=304日
 >判定 補償日数31日
 以上のいずれの場合も短い方の日数となるが、最終的補償期間は専利局により確認、決定された通知書に記載の日数となる。

(二)医薬品上市審査(特許法第42条第3項)に基づく特許権利期間延長補償(PTE)

(背景)
 医薬品などの特許の場合、新薬などの研究開発コストに加えて臨床試験などでのリスクも高い上に、その効果や安全性などを各国の行政監督部門が厳格に評価、審査を行うことから医薬品などの発明が特許登録されても、その特許保護期間内に上場許認可されるまで長期間を要するため、特許権者は十分な保護や投資の回収ができない情況ある。こうした状況に対し、アメリカが最初に医薬品特許期間延長制度(PTE:Patent Term Extension)を導入し、その後、日本、韓国、欧州各国でも同様の制度を導入している。
 中国では、2017年に「審査承認制度改革の深化と医薬品医療機器イノベーションの推奨に関する意見(关于深化审评审批制度改革鼓励药品医疗器械创新的意见)」、2019年に「知的財産権の保護強化に関する意見(关于强化知识产权保护的意见)」などが発表され、医薬分野のイノベーションに対する保護の強化に加え、薬価の値下げや公共の利益や健康の促進、後発薬の奨励が強調された。アメリカとの二国間協定もあり、2020年の特許法改正で特許法第42条第3項を追加し、新薬の上場審査承認に要する期間を補償するため、PTE期間と最長の残存保護期間を定めた。
 注意点は、2021年6月1日以降に販売承認された新薬と改良薬(制限あり)が対象であること、外国で先に上市販売された医薬品は認められない可能性が高いこと、PTE期間は最長5年で、新薬の上場承認後の特許権存続保護期間は最長14年である。

 (改正法)
特許法第42条第3項
 新薬の上市審査承認に占める期間を補償するため、中国で上市許可を獲得した新薬に関連する発明特許に対して、国務院特許行政部門は特許権者の請求に応じてこれに特許権利期間の補償を与える。補償期間は5年を超えず、新薬上市認可後の総有効特許期間は14年を超えない。

特許法実施細則 第80条から第84条
第80条 特許法第42条第3項にいう新薬関連発明特許とは、規定に適合する新薬製品特許、製法特許、医薬用途特許をいう。
第81条 特許法第42条第3項の規定に基づき新薬に関する特許権期間補償を請求する場合、当該新薬が中国で上場許可を獲得した日から3か月以内に国務院特許行政部門に提出しなければならない:
 (1)当該新薬に同時に複数の特許が存在する場合、特許権者はその内1つの特許に対してのみ特許権期間補償を請求することができる;
 (2)1つの特許が同時に複数の新薬に関連する場合、1つの新薬に対してのみ当該特許に特許権期間補償請求を提出することができる;
 (3)当該特許は有効期間内であり、かつ新薬に関する特許権期間補償を受けていない。
第82条 特許法第42条第3項の規定に従い特許権期間補償を与える場合、補償期間は、当該特許出願日より当該新薬が中国で上場許可を獲得した日までの日数から5年を減じ、特許法第42条第3項の規定に適合する条件で確定する。
第83条 新薬関連発明特許の特許権期間補償期間中、当該特許の保護範囲は、当該新薬及びその承認された適応症関連技術案に限定される。保護の範囲内で、特許権者が享受する権利と負担する義務は、特許権期間補償前と同じである。
第84条 国務院特許行政部門は特許法第42条第2項、第3項の規定に基づき提出された特許権期間補償請求を審査後、補償条件に適合すると判断した場合、期間補償を与える決定を下すとともに、これを登録と公告する。補償条件に適合しない場合、期間補償しない決定を下すとともに、請求を提出した特許権者に通知する。

対応する審査指南の規定は以下の通り。
1,第五部第9章第3節 特許法第42条第3項に基づく特許権利期間の補償
 補償条件、請求の提出、証明資料、適用範囲、請求項の審査、補償期間の確定、補償請求期間の審査、登録と公告

(PTE認定の説明)

(1)PTEの請求条件(第3.1節)
 医薬品PTE請求の条件は以下の通り。
 ①特許の公告日は、医薬品上場申請承認日より早い。
 ②当該特許権は、PTE請求時に有効である。
 ③クレームは、対象上場承認新薬技術を含む。
 ④当該特許権は、他にPTEを受けていない(1つの特許で1つの医薬品の原則)
(2)請求主体、請求の提出と証明資料(第3.2、3.3節)
 ①請求主体と請求タイミング
 PTE請求は特許権者が提出する。医薬品上市被許諾者と異なる場合は同意書が必要である。請求時期は、医薬品上場承認日(条件付き含む)より3か月以内に専利局に請求し、相応の費用を納付する。
 ②提出する証明資料
 特許権者は、PTE請求書と必要な証明書類を提出する。
 (a)請求書(様式あり)には、医薬品の名称、医薬品の登録分類及び適応症などを含む。
 (b)PTE対象発明特許情報及び上場許可を得た新薬関連クレームを指定する。
 (c)証明資料と補償理由を説明する。
 証明資料の例、同意書、医薬品登録証明書及びその添付ファイル。薬品監督管理部門が承認した薬品生産技術資料。その他の技術説明書や専利局に提出した証明書など。
(3)医薬品の適用範囲(第3.4節)
 一般的な医薬品、生物製剤と漢方薬で、中国で上司承認された創薬・新薬或いは改良新薬(以下、まとめて新薬という)で、製品特許、方法特許または用途特許で条件に適合する関連特許権があり、かつ、国務院薬品監督管理部門が中国で初めて上市承認した新薬にかかる特許権がPTEの対象となる。
 医薬品PTEを受けることができる新薬の適用範囲は、化学薬品と生物製品に対する、「国務院薬品監督管理部門が初めて上場を承認した新薬活性成分に関する特許」、すなわちその活性成分を判断基準とすることに限られる。正式に公布、施行された相応の特許法実施細則第80条に上述の具体的な要件は削除されているが、意見募集時に記載された関連の基本的な要件が特許審査指南に継承され、残っている。
 ①医薬品の概念と分類
 特許法と特許法実施細則に対象新薬の規定がないため、新薬の定義と分類は国家薬品監督管理局の「薬品登録管理弁法(2020)(药品注册管理办法(2020)」とそ2015年の「医薬品医療機器審査認可制度の改革に関する意見(关于改革药品医疗器械审评审批制度的意见》)」などの通達に基づき分類される。具体的には、医薬品はイノベーション薬(1類)、改良型新薬(2類)、後発薬(3、4類)、海外ですでに発売されているが中国で未発売の医薬品(5類)となる。生物製剤は予防用と治療用に分類され、イノベーション型(1類)、改良型(2類)、すでに上市ずみの製剤(3類)となる。漢方薬は新薬(1類)と改良型(2類)が対象となる。
 ②補償適用範囲
 (a)PTE可能な医薬品
  医薬品(1類)、予防用と治療用の生物製剤(1類)、漢方薬(1類)のいずれもイノベーション新薬や生物製剤は補償の対象となる。
  次にイノベーションレベルが比較的に高い一部の改良型新薬を5つのカテゴリーに分けて補償する。
  1)医薬品第(2.1類) 既知知活性成分にエステル、または既知活性成分塩を形成した医薬品
  2)医薬品第(2.4類)、既知の活性成分を含む新適応症の医薬品
  3)予防用生物製剤(第2.2類) ワクチン菌ウィルス種を改良したワクチン
  4)治療用生物製剤(第2.2類) 新たな適応症が追加された生物製剤
  5)漢方薬(第2.3類) 効能効果を追加した漢方薬。
 上記以外の改良型新薬はPTE対象にならない。新薬の種類は国家薬品監督管理局が発行した薬品登録証明書の記載に準じる。
  (b)新薬活性物質に関する特許
  PTE導入前の意見募集では新薬活性物質について言及があったが、特許法実施細則第80条の規定からは削除されたものの、「国務院薬品監督管理部門が初めて上場を承認した新薬活性成分に関する特許」のと活性成分を判断基準とする限定がある。
  新薬活性物質または活性成分とは、通常、新薬において、疾病の予防、治療または診断に実質的な役割を果たす薬物活性物質または成分をいう。一般に、特許権者は、新薬活性物質(成分)に関する特許に基づきPTEを請求することになる。関連特許の種別は限定されていないため、指定請求項が上場承認された新薬活物質を含むか関連すればよいことになる。
(4)請求項が新薬関連技術を「含む」かどうか否かの審査(第3.5節)
 通常の「含むか否か」の審査は、以下の手順に従って行う。
 ①新薬の種類が「規定に適合した新薬」であることを確定する、
 ②新薬関連技術を確定する、
  承認された新薬の構造、組成及びその含有量、承認された生産プロセスと適応症などに基づき、指定請求項が「新薬関連技術」であることを確定する。主題(物質、方法、用途)と活性物質や活性成分の確認になる。
 ③指定請求項が新薬関連技術を「含む」か否かを決定する。
(5)PTE期間の算定と期間の特許範囲(第3.6、3.7節)
 特許法第42条第3項と特許法実施細則第82条の規定によると、医薬品特許権PTEの計算式は、
 PTE=D1−D2−5年(≦5年)
 残存特許権期間=(D3−D1)+PTA+PTE(≦14年)
 D1は、医薬品上市承認日である。
 D2は、特許出願日である。
 D3は、特許権満了日である。
 PTAは、特許権補償期間である。
 PTE期間は、最長5年を超えず、さらに新薬上場承認後の残存特許権期間が14年を超えない。なお、PTAとPTEは補償の対象が異なるので加算できるが、新薬上市承認後の残存特許権利期間が14年を超えない制限があるため、まずPTA期間を加算し、PTE期間を加算し、最終的に14年未満の延長期間を確定する。なお、特許権者がPTA請求をしていない場合、登録日から3か月すでに経過していれば不算入となり、未だ経過していなければ、審査官はPTA請求があればPTA審査、PTE審査の順に行い、PTA請求がなければ、3か月経過後にPTEの審査を行う。

中国発明特許権の保護期間補償の概念図

(6)PTE請求の審査、登録及び公告(第3.8節)
 医薬品特許権PTE請求が関連要求に合致する場合、関連事項を特許登録簿に登記し、特許公報で公告する。なお、関連手続きが不適合の場合、専利局は請求人に意見陳述や補正の機会を与える。また、決定に不服の場合は、国家知識産権局に行政再審を申請することができる。その決定に不服の場合は行政訴訟を起こすことができる。

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