見出し画像

中国 中国法院の2023年知的財産権司法保護状況、前年比5%増!

2019-2023年民事訴訟第一審受理件数推移
最高人民法院は、4月22日付、記者会見を行い、「中国法院知的財産権司法保護状況(2023年)」などを発表した。
 昨年、全国の人民法院は一審、二審、再審で54万件以上の知的財産事件を受理し、前年比+3.4%増となった。

(1)民事訴訟事件
 2023年の地方の各クラス人民法院は民事一審事件を462,176件受理し、前年比べ2.3万件増、+5.4%増加した。内訳は下記の通りであるが、著作権侵害事件が4千件減、▲1.6%減、その他が0.5%減となった。特許侵害事件が5.7千件増、+14.7%、商標侵害事件が1.9万元増、+16.8%増、技術契約が2.2千件増、+53.2%増、不正競争事件も842件増、+9%増加した。審決は、第一審460,306件と前年比+0.5%増加した。第二審の受理は、37,214件と▲24.8%減、処理も38,713件と▲20.4%と大きく減少した。

2019-2023年 民事第一審受理件数推移


(3)行政訴訟事件
 2023年の地方各クラスの人民法院は行政一審事件を20,583件(前年20,634件)受理し、前年比▲0.3%減少した。この内、特許事件は1,990件(前年1,876件、前年比+5.8%)、商標事件は18,558件(前年18,738件、前年比▲1%)、著作権事件は11件(前年12件、前年比1件減)である。処理も22,340件と前年比+26.7%増加した。第二審の受理は10,053件(前年5,897件、前年比+54.6%)、処理は結審9,259件(前年7,285件、前年比+18%)である。原審維持率は7,477件(前年5,518件、前年比+35.5%)と増加した、全体の構成比でも80.7%と増加した。

(4)刑事訴訟事件
 2023年の地方各クラスの人民法院は刑事一審事件を7,335件(前年5,336 件)受理し、審決6,967件(前年5,456 件)処理し、それぞれ前年比+37.5%、+27.7増加した。その内、登録商標類侵害事件は6,634件(前年4,971 件、前年比+33.4%)、著作権侵害事件は627件(前年304件、前年比+106.2%)とそれぞれ増加し、行政での処理が増えている。第二審の受理は956件(前年979件、▲2.4%)、処理は審決965件(前年977件、▲1.2%)とそれぞれ減少した。

 会見や報告書では、①公平性と効率性を確保した知的財産権司法保護レベルの向上、②改革とイノベーションを深化させた知的財産権司法保護メカニズムの改善、③法の統一した適用による知的財産権での司法の信頼性の向上、④国家威信に基づく新レベルの生産力の発展に貢献、⑤連携と協力の強化による知的財産事件の訴訟源の管理の推進、⑥ 国際交流の強化による知的財産権司法保護の国際的影響力の拡大について説明しているが、主な注目点は、以下の通り。
 知的財産民事侵害訴訟で319件に懲罰的損害賠償を適用し、賠償額は11.6億元に達した。最高人民法院は、「盼盼」商標権侵害と不正競争事件で4倍の懲罰的損害賠償を適用し1億元を超えた。「ゴム酸化防止剤」の秘密侵害訴訟の賠償額は2億200万元で、同様の訴訟での最高額を更新した。一方、「メラミン」発明特許と営業秘密侵害事件では6.58億元以上の賠償とともにライセンス供与関係での全面和解で解決するなど和解による解決を進めている。
 また、知財訴訟制度では、専門性や集中化を進める上での知財訴訟特別手続法の起草、技術調査官の人材バンク、「三合一」裁判の推進を行っており、現在、25の高級人民法院、242の中級人民法院、287の基層人民法院が知的財産権民事、行政、刑事事件の集中管轄している。今後は、新技術やコア技術の判断の難しい事件の対応、悪意訴訟や不誠実な事業に対する対応に独占禁止や不正競争事件を含めた事件処理の対応などにAIの活用やデジタル対応の新たな保護モデルの開発に向かうとしている。
 報告書のデータであるが、2022年度は商標と著作権の事件が大きく減少したが、2023年は著作権侵害事件が微減で、今後はあまり大きく増加していかないように思われる。商標事件と特許事件は過去最高と増加傾向を示している。商標事件では、2023年に商標行政一審事件20,090件を審査し、その中で、商標取消再審行政事件で「類似商品とサービス区分表」の項目変更のために商標権者の権利範囲を縮小や不利な解釈をしないことを明確にしている。なお、法院と国家知識産権局の商標行政事件の意思疎通と協調を強化することで6月から12月の行政訴訟の月平均受理数を1月から5月に比べ23%減少させている。今後は悪意のある商標先取りなどの違法行為に積極的に取り組むとしている。

■著作権表示 Copyright (2024) Y.Aizawa 禁転載・使用、要許諾


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?