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【KY14】上場ゴールの見分け方

上場ゴールになる理由

スモールIPOが多いから?

私はスタートアップ企業を経営しているので、このような界隈のことについて、人並み以上にお話しできます。ちなみに私の会社は、エンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)から投資してもらっていません。その理由については、どこかで語ろうかと思います。

さてよく聞く理由として、VCがベンチャー企業に早期上場を求めるため、上場後に事業が大きく育たないということがあります。
ちょっと分かりにくいですね。
VCはベンチャー企業が小さい時期に、リスクを取って投資します。スタートアップ投資は10中8,9外れるので、資金の回収効率がとても悪いです。したがって、1発ドカンと大きく当てないと儲からないです。

そして上場させると、VCは一般投資家に株を売買することで、リターンを得ます。投資した時点と売買する時点で、大きいと金額は100倍以上も変わります。
なおIRR(内部収益率)で計算したりするのですが、その辺はまたどこかで語ろうと思います。

ポイントはベンチャー企業は上場するときに、新規に株式を発行して資金調達を行います。実はこの時点でベンチャー企業が育っていないと、企業の評価が小さく見積もられ、十分な資金を調達できなくなります。
公募で調達した資金が少ないと、今後の事業の発展が望みにくくなります。
これがスモールIPOが多いと言われている一つの理由であり、上場ゴールと揶揄される所以です。

ispace(9348)を邪推する

ispaceは言わずもがな、宇宙ベンチャーとしてロケットで月面着陸を目指した企業です。内容についてはご自身でお調べください。
以下はあくまで私の想像です。根拠はありません。

Yahoo!ファイナンス(ispace)

さてispaceですが、IPO時の公募価格(254円)、初値(1,000円)で上場しました。月面着率を目指す2週間前ぐらいでしたっけ?あやふやですが、その直前に最高値(2,373円)を付けました。

ちょっと考えてもらうと良いのですが、Ispaceからしたら上場の時期は、月面着陸後の方がいいです。資金調達額は割当枚数×公募価格で決まるので、公募価格が高ければ高いほど良いからです。
ちなみに割当枚数は4,166,700株で、資金調達額は約10億5千万円ですから、もし公募価格が最高値に近ければ約10倍の資金を調達できました。
月面着陸は失敗したわけですが、資金調達額が多ければ2発目、3発目は容易といえます。

ところで、VCから見たらどうでしょうか?
別に254円が公募価格であっても、2,000円が公募価格であっても、リターンには影響しません。なぜなら上場後の株価の方が高いわけですから、月面着陸失敗どころか宇宙で迷子になるなどして、むしろ無用なリスクを取ったことで上場できない方が、大損する可能性が高いからです。
つまりリターンを考えると、VCにとってベンチャー企業がスケールすることは2次的なものなのです。

とにかく小さくても良いから、確実に早く上場させて資金を回収したい、VCはそう考えるのです。そしてVCはベンチャー企業に、そうするよう投資契約で迫ることができます。
スモールIPOはVCの都合によるところが、大きいのです。

スモールIPOの前にスモールビジネスになる

もう一つ理由があります。VCというのは上場が一つのゴールですが、M&Aも選択肢になります。上場見込みがないと判断すれば、株式を他人に売却して、資金を回収する方法です。
そしてM&Aを成功させるには、投資したベンチャー企業が収益を上げていることが、一つの条件になります。

つまりベンチャー企業がシード期(モノやサービスをリリースできていない段階)に投資を受けるためには、すぐにでも売り上げが立つビジネスでないといけないということです。
分かりやすく言うと、ベンチャー企業が投資を受けるには大きなビジネスでなくスモールビジネスでないと難しいということです。

これは日本には、欧米と比べてVCの数が少ないというのもありますが、VCで投資を判断している人が資本家ではなくサラリーマンであることが多いことも要因です。
担当者がベンチャー企業を応援するよりも、上司や投資家の評価を優先しがちで、スモールビジネスの方が説明が楽だからです。

上場ゴールとそうでないものの2つの見分け方

企業や社長に野望があること

ヴィジョンと言ったら、きれいですがちょっと違います。貪欲さがものすごく大事だからです。
上場は入口、そこからがスタートです。そういう意味で、定性的というか感覚的というか、投資家目線で野望みたいなものを感じ取ることができるか、それが一つの見分け方になります。

そして上場後も第三者増資割当やワラント債の発行などで、さらに資金調達を行います。そのために上場時の枠組み以上のビジネスを描いていないと、なかなかそのステージには届かないと言えます。

大雑把な経営目標を持つこと

売上高10億円の東証グロース企業で、経営計画が売上高の毎期1億円アップといった目標の会社があります。このような企業が上場ゴールと思ってよいです。
どういうことでしょうか?
企業や社長が、着実に成長するといった考え方を持っている場合、公募で広く資金を調達する意義は少ないですし、投資する価値は低いです。クローズドで会社を経営すれば十分だからです。
自分たちで世界を変えたい、世の中を良くしたい、そういう考えがあるから、たくさんの投資家に応援してもらうわけです。
グロースに着実さよりも、投資家はチャレンジ精神に期待します。

投資は自己判断でお願いいたします。
以上、今回はここまで。次回もよろしくお願いいたします。



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