褒める屋さん #4 みこちゃん。さん
な、なんと4回目の褒める屋さんです。
そうです、驚きは続いて行くんです。
この驚きを味わいたくて、わたしは、『褒める屋さん』という変な事を始めたんですね、きっと。
そして、初の女性!
初の、芸人でも、絵を描く人でもない、一般の、じょ、せ、い!
女性です!
どきどき。。大丈夫なのか、わたし!
と、自分に突っ込みを入れずにはいられません。。
喫茶店に到着。
『待ち合わせです』と店員さんに伝えて、店内を見廻し、一番手前に背中を向けた女性しか、該当者がいないことに気が付きます。
恐る恐る、『みこちゃん。ですか?』と女性の前に立ち、聞きます。
にっこりと笑顔で、『はいっ』と女性は答えてくれました。
か、かわいい。と、一安心して着席する。今回のお客さん、みこちゃん。さん。以下、みこちゃんとさせて頂く。
彼女の友達が『星の王子さま』というおしゃべりアプリで、わたしのつぶやきを見つけてツイッターをフォローしてくれたのがきっかけだ。みこちゃんともツイッターを相互フォローした。
30歳前後、若々しい。かわいらしい女性だった。気遣いができる、明るい女性。こんな女性がわざわざ褒める屋を利用する意味って。。
さぁ、ここから5分間お話をします。
「今日は、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
緊張感が走る。
みこちゃんも、実は緊張しているようだ。笑顔の前後が、よく見ると強張っているように見える。
それと、大事な事実。みこちゃんとわたしは、誕生日が一緒なのだった!もちろん年齢はわたしの方が10歳は上なのだが。(きゃおりん年齢非公表の為ぼやかす)
みこちゃんとわたしは、7月30日に誕生日を迎えた。
軽く世間話をしても、中々みこちゃんの実体は見えてこず。。(当たり前!)
5分はさくっと過ぎてしまった。
さぁ、ここで褒める屋として、みこちゃんへの褒め言葉を出さなくてはならない。
なんとか、抽出した褒め言葉は、こちら!
◯ なかなか秘密を教えてくれない、意地悪っ子
(小悪魔的な。。褒めてます!)
◯可愛らしい小動物なんだけど、隠れて生き血を飲んでいる
(生き血を飲むような努力をして小動物を保っているというか…褒めてます!努力家です!)
◯石原さとみの皮をかぶった、小型版・菜々緒
(あざと可愛さと、悪女的な魅力があり…どちらも人気あります!褒めてます!顔は石原さとみ似!)
この褒め言葉には、さすがのわたしも焦りを感じました。
しかし、みこちゃんは、アハハハハと、屈託なく笑ってくれたのでした。いや、やっぱり笑いは、全てを救ってくれるんだよ。だから、芸人になったの。ふぅー。
よし、ここから20分間話してなんとか、みこちゃんの閉ざされた扉を開けなくてはなりません。
しかし、実のところ、みこちゃんは、わたしの質問に拒絶する様子などは全く見せず、出来るだけ素直にわたしの質問に答えてくれようとしているのでした。
それなのに、みこちゃんに閉ざされた印象を持ってしまう理由って。。。
答えはここからわかっていきます。
みこちゃんは、10歳の頃から過食を始めます。最初は駄菓子屋で500円分のお菓子を買う位のことでした。
しかし、ここで止まることはありません。11歳の時にはコンビニやスーパーで大きい袋2袋分の食料を買い、毎日食べていたそうです。そうです、普通の域は超えています。心では食べたくない、やめたい、そう思っていても、頭から「食べろ、食べろ、食べろ」という指令が聞こえて来るのです。
親に隠れて食べることの快感もあったでしょう。でも、本当は見つけて欲しかったんじゃないでしょうか。
どうして、そんなに食べずにはいられないの? あなたには何が足りてないの?と。
みこちゃんのお父さんは建設会社を経営し妻と3人の子供を養い、みこちゃんが4歳の頃まで家政婦さんを雇っていたくらい、経済力のある人でした。しかし、家族への暴言、暴力が絶えない人で、中学生の時には、みこちゃんの顔を血だらけにするほど暴力を抑えられなかったそうです。
けれど、決して彼女はやられっぱなしの人ではなかったと感じます。
やられて終わる人ではなく、自分で考え、悩み、反抗した証が、10歳での過食だったのではないでしょうか。
私が欲しいのはお菓子や食べ物なんかじゃない。普通にお父さんに優しくして欲しかった。褒めて欲しかった。10歳のみこちゃんは、そう訴えていたのではないでしょうか。
笑っているのに、同時に泣き顔にも見える瞬間があることに、納得しました。
お母さんは、そんなお父さんのことを『頭のおかしい人。あんな風にだけは、子どもたちをさせてはいけない』と考えていたようです。想像すると、苦しくなります。
子どもにとって家庭は全てです。その家庭が南北朝鮮のように分断されているのです。子どもは混乱します。普通なら、お父さんとお母さんは、仲良しです。でも家で二人は仲良しじゃないのに、同じ家に住んでいます。仲良くして、楽しいね、って笑うはずの瞬間に怒鳴られたり、恐怖を与えられます。繊細な子どもなら、食事や精神のバランスを崩すことも容易に想像できます。
わたしは子育ての経験はありませんが、保育士を仕事とし、10年位子どもに関わってきました。子どもは、いい事も悪い事もその何倍もにする、想像力と純粋さを持つのです。
その後、みこちゃんは10歳から17歳まで過食状態が続き、17歳から18歳までは拒食、その後は過食拒食を繰り返す摂食障害が31歳の現在まで続いています。
今はとてもスリムですが、健康的な印象です。
笑っているのに、泣いているような笑顔。
食べたいと食べたくないが、満ち潮、引き潮のように、交互にやってくる感覚。そういうことだったのか。
お父さんには普通の愛情を求められない。それを悟った4歳の女の子は、お母さんが全てです。そんなお母さんとケンカしてしまった時、4歳のみこちゃんは何をしたと思いますか?
お母さんと仲直りしたくて、でもごめんなさいは言いたくなくて。お母さんに隠れて、こっそり布団を敷くお手伝いをしました。お手伝いをすると、お母さんは優しい笑顔で「ありがとう」と言ってくれるから。
そうすると、ケンカして悲しくてイライラした気持ちがすっと癒されたからです。たった4歳の女の子が、「ヤダヤダー!!」と駄々をこねて泣いたりせずに、お母さんと円満に仲直りできるように、大人に気を遣ってたんです。ずーーっと。そんな小さな頃から。
抱きしめたくなりました。
あなたは、もうそんなに気を遣わなくて、いいんだよ。考えなくていいんだよ、と。
そして今、みこちゃんは、みこちゃん自身を育て直してる最中です。食べ物の美味しさ、食事を取るバランスをもう一度覚え直す。専門学校で栄養学を学んだ彼女には、難しいことではありません。
小さな頃から周りに気を遣い、子どもらしく甘えるのが実は不得意だった彼女にとって、自分の感情をきちんと消化させてあげることの方が、大事な課題かもしれません。
食べ物をちゃんと消化させてあげることも、大事なのですが。
食べ物も感情も、きちんと消化させてあげないと、人間は具合が悪くなる生き物みたいです。いや、生き物って、みんなそうな気がします。
そんなみこちゃんに送る褒め言葉は。。。
『みこちゃん。さんへの褒め言葉』
反抗期優等生やりながら、母もやってます。
優等生なんだけど、反抗期でもあるのです。みこちゃんは。彼女は優等生に振る舞える賢さを持っているのに、内蔵なのか、細胞なのかはわかりませんが、何かが、反抗しているのです。そして、食べ物を食べたくない、と言ったり、もっと食べさせて、と言ってきます。
みこちゃんは、5歳の男の子のお母さんでもあります。反抗しながら、こうありたいという優等生もしながら、お母さんもやっている。すごーーくえらいです。立派です。三足の草鞋(わらじ)です。たまに履く草鞋を間違えて、コケることも、捻挫することもあるかもしれません。
そんな時も、男の子と一緒に「エヘヘ、コケちゃった」と言って手を握って歩いて行って欲しいです。
みこちゃん。さん、ありがとうございました!
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