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【 公園通りのクロエ 】

この本を、いまの ”彼女” に贈りたい。そう思った。


だけど、それはそれでお節介だろうか
却って不快にさせるだけだろうか
それとも不安にさせるだろうか
そもそも小説なんて読んでる暇もないだろうか


さいしょの閃きを追い掛けるように、ぐだぐだと考えを巡らせながらも、
やっぱり彼女に贈りたい。そう思ってしまう。

住所も知らない彼女に

怪獣みたい、という猫と暮らす彼女に

大事な人の ”帰り” を、信じて待っている彼女に

とても強く、儚く、どうしようもなく魅力的な彼女に



どうしているだろうか。


そろそろ 声が聴きたいな 顔が見たいな


そう思いながらも、連絡できずにいるのは、
わたしがまだまだ未熟だから?
わたしが自分のことで精いっぱいだから?
彼女はわたしの力なんかなくても大丈夫そうと思うから?
ちょっと謝りたいことがあって気まずいから?


ううん。きっと、そうじゃなくて。


知っている、からだ。


彼女のつよさとやさしさを。

わたしたち二人のあいだに流れている時間の尊さを。

わたしたち二人を引きあわせた出逢いの意味を。



どうかどうか、届きますように。

彼女のもとに

彼女の「大事な人」のもとに




* * * * *


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『 公園通りのクロエ 』 野中柊 2013.11
黒猫のクロエ、
ゴールデンレトリバーのジュディ、
ドールハウス製作に打ちこむ栞、
イラストレーターの優喜。

Cat Meets Dog そして Girl Meets Boy



それ以来、犬って嫌いって思っていたけれど、このカフェに来て、考えが変わったの。ここに遊びにくる犬たちって、だって、ものすごく気がいいんだもの。きっと生まれたときから、ずっと、だれかに愛されるのが当たり前の生活をしてきたのね。のほほん、として長閑で呑気屋さん。あたしが近づいていくと、元気?って目で挨拶をしてくれる子もいる。軽いパンチで挨拶を返すと、にいいって耳まで裂けそうな口で笑うのよ。 
あんなの、クロエにはぜったい似合わないよなあ。猫は自由で気ままで、我儘でなくっちゃ
ついしょっちゅう手を休めて、クロエの姿を眺めてしまう。猫ってやつは形状が美しいな、と、あらためて感心しつつ。


ふいに、すぐ隣にいる彼と手を繋ぎたくなった。こわくなったのかもしれない。と同時に、途方もなく豊かだと感じたのだ。なにが起こるか予測もつかない、生きる、ということについて。その残酷さや理不尽さも含めて、だれかと分かち合いたい、伝え合いたい、でも、それは言葉では無理だ。だからー。


あたし、いつかの日か、きっと睡蓮を見たい!って思っていた。ずっと、ずっと夢見てた。でも、こんな風に叶うとは予想もしていなかったわ。イマージュはかならず線を結ぶものなのね。







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