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何かを手放すと、より大きなものが手に入る。IIBC Cafe Globe #5 大岩根 尚さん

3月10日は第五回目のIIBC Cafe Globeでした。

Cafe Globeを開店することに至った背景はこちら。

今回のゲスト

今回のゲストは大岩根 尚さん。

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1982年宮崎生まれ、環境活動家。
「いろんなところに行きたい」という動機で地質学の研究室を選択し、面白くなったのでそのまま大学院に進学、環境学の博士号を取得。卒業後は運良く南極観測隊に参加。南極内陸の調査に参加し、気候変動の研究を行う。アメリカ、ニュージーランド、韓国、地中海、南極海など、世界各地での調査航海、学会発表を行う。
しかし一念発起し、鹿児島県で一番小さな村である三島村の役場職員に転職。「地球と遊ぶ、地球を学ぶ、地球で稼ぐ」をコンセプトにした村の活性化を行うも、同村の硫黄島が好きになりすぎて役場職員を辞めて硫黄島に移住。「合同会社むすひ」を起業し現在に至る。牡羊座のA型。動物占いはなごみ系キャラだけど実は努力家のたぬき。

ひさしさんとわたし

実はまだ去年の10月に初めてお会いしたばかりの大岩根さん。その時は、屋久島の方たちに向けて、オンラインで、環境問題にどう取り組んだらよいか、お話しをしたりワークショップのファシリテーションをされていて、たまたまその場にいて暇だった自分も飛び込み参加。笑

その時のお話しが面白く、鹿児島でこんな素敵な人がいるんだ!と、ずっとひさしさんとやり取りをさせていただいていたのですが、ある日、第2回のカフェの参加者の方から、「南極に行っていた方のお話しを聞きたい」というお声をいただき、「そりゃひさしさんじゃん!」とひらめき、お声がけ。すぐにYESをいただきました!

環境活動家としてのひさしさんは何となく知っている自分。でも、南極観測隊として何をしていたのか、ひさしさんが何で今こうした活動をしているのか、なんで硫黄島なのか、などなど、実は知らない私。カフェを機に知りたい、ととてもワクワクしておりました。(ちなみに私は動物占いは気取らない黒ヒョウです。)

今回のお茶…ではなくコーヒー☕

Cafe Globeでは、ゲストのゆかりのある「お茶」と、ナビゲーターの私がその時おすすめしたいと思った「お茶」を交換して、飲みながらお話をしています。

今回は私もひさしさんも「鹿児島県」ということで(笑)、私がひさしさんに送ったのは、鹿児島のものではないのですが、今回はコーヒーで、フェアトレードのオーガニックコーヒー。フードロス・食品ロス削減に取り組むオンラインショッピングサイト「KURADASHI」で購入したものです。優しい味で飲みやすく、コーヒーが実はちょっと苦手な自分でも飲みやすく。

一方ひさしさんが私に送ってくれたのは、鹿児島市内、西郷隆盛像の横にあるカフェ「DINIZ CAFE」(ジニスカフェ)のドリップコーヒー。

鹿児島で出会うコーヒー好きの皆さんに結構な確率で最初におすすめされるコーヒーです。なかなかコロナのことなどで鹿児島市・本島にいけないひさしさん、今回は私が直接買いに行きました!笑

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この写真で、右を見ると西郷隆盛像があります。笑

今回のカフェ。

ということで今回のカフェです。

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先に感想をまとめると、写真充実でなかなか聞くことができない南極現地でのお話しを聞くことができて、YouTubeでぜひ写真付きで大岩根さんのお話しを聞いていただきたい、という。笑 可能な限り文章化していきます。

まず、なぜ「南極?!」という話。2011年の53自隊の南極観測隊に選ばれた背景は、なんと「たまたま」。博士課程を修了するタイミングで研究室の先輩に誘われたことがきっかけだそうです。先輩が南極観測隊(5人)のリーダーだったそうで、気候変動についての調査をするにあたり、南極にいる間の生活が基本テントだったりといったところから、気心知れた人と一緒に行きたいということで声をかけてもらったそう。気候変動の調査は重要度が高いこともあり、人選において多少自由度があったのでは、とのことでした。

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ちなみに基本観測隊は日本は7~80人ほどいて、半分くらいが研究者、半分くらいが昭和基地の大工や電気工事などのメンテナンス等を担当する技術職の方々だそうで、企業から希望を出していけることもあるそうです。新聞記者とか学校の先生とかも枠があるんだとか。私たちにもチャンスがある…?!

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お話しをいただいて、これを逃したら行ける機会はない、とYESのお返事をしたひさしさん。しかし、もともと大学・大学院では気候変動とは関係なく地質学を勉強していたそう。研究室に籠って研究するのではなく、実際に地層や海岸を観に行ったり、海に出たり、とフィールドワークの多い研究職の地質学が「頭使う系なんだけど体力もあるほうがかっこいい」と思っていたようで(コナン・ドイルの「ロストワールド」のチャレンジャー教授に対してのあこがれがあったかも!?笑)、その研究スタイルが合っていたようです。しかし(笑)大学に入る前はそういったことが好きだったわけではなく(笑)動物が好きだったので獣医さんになろうとしていたらセンター試験で失敗、とりあえず生き物が学べる生物学で受験し直してそちらも失敗、適当に第二希望に書いていた地質学が学べるところに通り、浪人したくないしということで大学に入ったそう。高校までの学びが好きでやっているものではなかったから、とそのまま大学でも志望した学部ではなかったことに関して特に何か感じることもなく、高校時代の勉強の反動で大学では遊んでいたひさしさん。大学3年でピースボートの船旅に乗船。そして、「何となく」大学院に進学します。

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沢山の写真とともに南極での活動の話に戻ります。なんと、ひさしさんたちの調査隊は昭和基地を拠点に活動するのではなく、ベルギー隊の基地の近くで調査をしていたことからそちらにお世話になっていたそうです。

ベルギー基地はソーラーパネルがあったりとハイテクでした(ぜひ写真を動画で見てください!)日本隊が昔リサーチしていた場所でもあったそうで、ベルギー基地を作るにあたり場所探しをサポートしたことがあったそうで、便宜を分かってくれているところがあるそうです。南極はどこの国の領土でもなく、「南極条約」というルールがあり、純粋に科学目的で全ての国が協力しようと決まっているところから、どの国がベルギー基地に行ってもOKという感じではあるそう。もちろん使用言語は英語ですが、ベルギーの文化を感じるわけではなく、色々な国からいろいろな研究者が集まるので、フラットな雰囲気だったそうです。Wifiも通ってるし、中でTシャツ姿で漫画を読んでいる人も見かけたとか(笑)他にもひさしさんはロシア基地にも行ったことがありますが、そっちはベルギー基地のような建物ではなくテントタイプ。ハブのような場所で、世界中から物資が送られてきたり、他の各国の隊員が集まる場所だそうです。

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そして、そのベルギー基地からひさしさんたちはスノーモービルに乗って研究基地に移動していきます。100日間の滞在の間、40日間は基地にメインでいて、あとは調査場所でのテント生活や往復生活。ちなみにひさしさんは博士課程を取り立てで自分自身のテーマがしっかりとあったわけではなかったこともあり、「全体の中の一部のお手伝い」というポジションでチームに入っていたそう(自身の研究もあったけれど優先順位的に下…)。

南極と言えば、寒さ。どのような対策をしていたか聞いてみると、「沢山着る」(笑)。ヒートテック、タイツ、インナーのダウンジャケット、ジャケット、と、4枚程度着るみたいです。自分たちで設営するテントの中も保温効果がないから外温と同じ。日が出ていると暖かいですが…。悪天候の日は台風が雪で来るような形で真っ白の世界。基本的にテントで寝て待機。そんなテントの中には最大で4,5人は入れるみたいですが、自分自身が寝泊まりをする時は1人1つのテントがもらえるそう。個室!ちなみにお風呂はもちろんなく(昭和基地にはお風呂があるはずとのこと)、ベルギー基地にはシャワーがあり、1プッシュで1分お湯が出るものを使っていたそうです。トイレは基地には普通のトイレ、遠征中はよくある簡易トイレを使用します。もちろん持ち帰りです(笑)ちなみにロシアの基地にはサウナがあり、「世界最南端のサウナ」と呼ばれているそうです笑

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印象に残っている出来事を聞いてみると「音」。風がなく晴れた日に、生き物もいない動くものがない世界=音がない世界を初めて経験したそうです。寝ていて自分の心臓が動いて服が動く音が聞こえることも。動画も見せていただきましたが、地吹雪が吹いた時に積雪と風に乗ってくる雪の結晶がぶつかり合い、割れて、「チラチラ」という音が聞こえたときにそのきれいな音に「こんな音があるんだ」感動したそうです。

今回のカフェのほとんどが南極の話ですが、なかなか私たちが聞くことができない世界、ただひたすら感動すると同時に「あるもので何とかしないといけない」サバイバル能力が本当に上がる経験をひさしさんはされてきたのだな、と思いました!

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そして、終盤にかけて、一気にそこから今のひさしさんのお話しへ。

南極観測隊から戻り、2013年に鹿児島へ。そこでひさしさんは三島村という村役場に入ります。「役場のおじさんになりました。」とひさしさん。笑
三島村がジオパークという、国立公園などの自然を生かした村おこしをするプロジェクトを立ち上げるにあたり専門スタッフを探しているということでお声がけをいただいたそうです。声をかけてくだったのは、大学時代に甑島で研究をしていた時の先生で、その先生がその時は硫黄島に関わっていた、とのこと、本当にご縁繋がりのひさしさんの人生です。

硫黄島の三島村の役場は鹿児島市内にあり、鹿児島市内(九州本島)と硫黄島を行き来する日々。硫黄島と言われるほどなので温泉・硫黄がたくさんあるので、それを活かした花火作りをしたり、シーカヤックをしたり(遊ぶ)、研究者と共同研究をしたり、学校に教えに行ったり、学生実習を受け入れたり(学ぶ)、観光資源としてビジネスを作り出していく(稼ぐ)、といった活動をしていたそうです。そうした仕事をしていると、南極観測隊で現地で自分の手を動かしていたひさしさん、鹿児島と硫黄島の往復の日々が「ぬるすぎる!」と思い、さらに通っている場合ではないくらいに硫黄島が好きになり、2017年に35歳で公務員を辞めて会社を立ち上げて移住をします。独立しようとしたら知り合いが一緒に会社を作ろうと声をかけてくださり合同会社を設立。やっていることは役場でのお仕事の延長で、役場時代につながった1000人くらいのお客様たちに1人1万円くらい払ってもらって硫黄島で遊んだりでもすれば暮らしていけるな、と思い、ガイドや教育、研究、研修、講演、執筆などの活動をしていきます。この決断について、悩んだか、という質問をしてみると、ここでライフシフトをすることに関して、「なんかそっちのほうがよさそう」と思ったとのこと。

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考えたらいくらでもどっちも理由が作れるけれど、どっちに自分の気持ちが乗るかはまた別の話で、感覚の話なのではないか。人にどうアドバイスされても意味がなく、自分の心・魂が喜ぶ選択をするしかないんじゃないか。

一歩踏み出すのが難しいと悩んでいる方には、難しいから踏みとどまってるなら辞めればいし本当はやりたくないのではないか、とひさしさん。自分の心にしっかり聞いている?というひさしさんからの問いかけが聞こえてきます

とにかくご縁がつながるひさしさんのライフスタイル。ひさしさんは「主体性のないやつだな~」と自身に突っ込んでいますが、誘われてやっているけれど「なんかそっちのほうがいい気がする」とえいやと踏み込んでいる。その選択の時に自分自身と向き合っている(外に出たいから村役場じゃない!とか)時点で、自分自身の中にしっかりと軸があるなと感じます。

やりたいことが見つからないという相談には、「好きじゃなくてもやってみればいいのでは」とひさしさん。今の時代、考えなくても検索してこんな感じか、とわかった気になるけど、「やってみて自分がどう思うかは別の話」「自分がどうしたいか、自分が幸せかどうかの話だから、やってみないとわからないよね。やってみて、違ったら違った、で次に行けばいい。やんなかったら時間だけ過ぎていく、それがもったいない。」ひさしさんの行動力の源の考え方に、今すぐ動き出したくなります。


今はコロナでお客さんを呼べなくなっているので、どうしようと考えていた時に、自分が大学時代に研究していた気候変動が世間で話題になっていることに気づきます。研究していたころから「ヤバイ」と思っていたけれど(なのでなんで今更騒いでるのと思ったみたいです笑)、10年の間にやっぱり変わっていること目の当たりにして「本当にヤバイ」と思うようになり、ご自身でもアクションを取り始めるようになります。

そこで、紹介くださったのがDRAWDOWNという気候変動をとめるための100の方法を紹介している英語の本。これを自分の言葉で訳し、イラスト込みで、SNSなどで発信していたら日本語の翻訳プロジェクトにお声がけをいただいたそうです。その日本語の本がこちら↓

翻訳家が翻訳するときに、専門的な知識でサポートをしたそうですよ!(しかもお金もらってないそうです!!)

ということで、最近はそうした気候変動の活動をしており、SDGsのカードゲームのファシリテーターの資格を取り企業に気候変動に向けたアクションについて提案をすることをしているそう。

DRAWDOWNのイラストも紹介していただきました。結構分厚い本なので、気軽に知ってもらうためにイラストにしているといったところもあるそうで、最近はclubhouseで内容を紹介したりもしているそうです!ぜひSNSフォローしてみてくださいね。

ひさしさんが作った会社の名前は合同会社むすひ。結ぶことが本当に好きだし、得意なんだなということが伝わってくるコミュニケーション能力の高さに、らても感動していました。

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最後に記念撮影。実際に行動しないとわからないことがたくさんある。動いて感じなきゃ。元気になる時間でした。

そしてひさしさんからのメッセージ。「気候変動は本当にヤバイとマジで思っている(でも希望でもある)、ということで、ぜひ一緒にやりましょう」。気候変動とか環境問題の話は、重い話が多いと思っていた私ですが、ひさしさんのお話しは聞きやすくて「入ってきて」、個人的にも自分のアクションを考えるにあたりとっても参考にさせていただいています。ぜひ今日のカフェに限らず、繋がっていただいて、ひさしさんから情報をいただきながら、気候変動に向けたアクションを一緒に取っていきたいです^^


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アフタートークではさらに南極のお話しが盛り上がります。

南極観測隊として出発する前にトレーニングや研修はあったのですか?という質問で長野まで行って寒いところでキャンプしたり、救命救急のような講習の本格的なものを受けたり、としていたそうです。

南極にまた行きたいですか?という質問には、行きたいけれど子どもが~と。硫黄島に移住した後にパートナーと出会ったそう。素敵…!

そして、「硫黄島に会いに行きたい!」という方をお呼びし、3人でカフェトーク。その方は気候変動や地質学を勉強されている大学生さん。ひさしさんは今は研究者ではないので、アポを取ってくれたら案内をしたり、フィールドワークのコーディネートをしたり、お手伝いはしていますよ、とのことでした。ひさしさんは、研究者の立場もわかるので、研究者の人たちが話す難しい話を一般の人たちにわかりやすく説明することができるのかな、と話していました。遊びと学びの中間、知的×体感覚的経験ができる場を作ることを今はしている、と。そうした「橋」のようなひさしさんの在り方、本当に素敵です。私も学生さんについていこうかな…!笑

気候変動トークが盛り上がり、政治がらみが…という学生さんの疑問に対してのひさしさんのコメントで私が印象に残ったのは、そうした脳的に意識を変えていったり仕組みを変えていくということも方法の1つだけど、ひさしさんは感情だったり心から、自分の気持ちから「よくしていきたい」と考える人を作っていく方法をやっていきたい、と話していたこと。それが本当に自分の心地よさにつながるよなあ、と思います。

「物質社会」に対して子どもたちに何を伝えたいか、という質問があって、ひさしさんは体験が大事、と話していました。「本当に自分が何を感じたか、というところからじゃないと自分自身の大事な事って作れない」ということで自然と触れる体験をたくさんして欲しい、と。南極での経験(極度に物がない経験ではありますが…)から余計なことに惑わされない豊かさに気持ちよさを味わっていて、物がないという経験もありなのでは、と話していました。

そして最後に話してくださったのが、「積み上げたものを捨てる、何かを手放すと、より大きなものが手に入る」ということ。手放すと何かデカイ物が手に入る、と最近感じているということ。それくらいゼロベースで考えるとやれることがあるかもしれない。今、コロナをきっかけに自分のキャリアをリセット中の私に、とても響く言葉でした…!


そんなカフェの様子は

当日のカフェの様子は、こちらから!写真もぜひお楽しみください^^


もっとひさしさん

今後、ひさしさんを応援していきたい!ひさしさんから勉強したい!という方にリンク先などをご紹介します。

2015年 TEDxKagoshima

2019年 テレビ宮崎

ひさしさんのブログ。カフェ中に紹介くださったブログ記事がこちら。

そして、SNS。TwitterとFacebookを教えてくださいました。

そして、ひさしさんの大好きな硫黄島の三島村のリンクを。笑

ひさしさんはpeatixで色々とイベントも企画されている印象を個人的に勝手に抱いているので、こちらをフォローしてもよいのかもしれません。


次回のカフェ。

ということで、次回のカフェ。4月10日20時からです。辻村靖子さんをお呼びします!

私の大学の先輩で、大学で出会った人の中で一番「出会ってよかった」と思っている人です。中学校で英語の先生をされていますが、教員になってから数年で一度お休みをし、カンボジアにJICAの海外青年協力隊に教育の事業で行かれています。帰国後、また日本で学校現場に戻っているのですが、次の10日は日曜日!ということで、早めに相談してみたところOKとの返事。カンボジアでの経験をゆっくり聞ける機会がなかったので、皆さんと一緒にお伺いできることが、とても楽しみです!

お申込みや詳細はこちらから。

来月も楽しみです^^





こんな私ですが、ぜひサポートお願いします。 いただいたサポートは、自分に沢山の学びと気付きの機会を与えてくれた人や団体、そして社会に還元していきたいです。