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健康・医療心理学Ⅰ第2課題S評価レポート

小児科の心理臨床の特徴

小児科における心理臨床の特徴は、対応する範囲の広さ、関わる対象の広さ、特有の雰囲気の3つにまとめられる。

小児科では、0歳からおよそ17歳までの子どもを対象とし、身体疾患や発達障害、不登校、自殺未遂など、多彩な悩みを抱えた子どもとその親に対して心理的な支援を行う。子どもたちは、乳児期から青年期までそれぞれの発達段階ごとに全く異なる問題群をはらんでいるため、その複雑多岐にわたる対応範囲の広さは、小児科領域における特徴のひとつである。その中で心理臨床の役割はまず、多様な問題をめぐる心の相談窓口となり、「その時・その場」でできることをとりあえず行うこと、そして、他科や学校、地域等と連携をとるための橋渡しをすること、子どもの病気に不安になっている家族等に対するサポートなどが求められる。

二つ目の特徴として、子どもを取り巻く家族や学校、地域とも関わりを持ち、心理臨床の対象は子どもだけでなく親も含まれる、ということが挙げられる。子どもの心理査定のために必要な情報は、子ども本人のほか、主に母親、ときに父親や養育者に面接を行って集めることになるため、通常よりも多くの労力と時間がかかることになる。また、母子関係において、子どもあるいは母親の愛着形成に問題がみられる場合には、子どもの精神障害の発生リスクが高まる。そのような場合には、母子治療などによる養育環境の改善を図ることが必要であり、子どもへの関わり方に困っている母親の相談に応じることも、心理臨床の重要な役割となる。

最後に、小児科独特の雰囲気があるということが挙げられる。例えば、感冒の流行期などでは患者が殺到し多忙を極める。待合室はごった返し、赤ちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえ、順番を待ちきれない母親が文句を言う、といった状況の中で、一人ひとり時間をかけて話を聴く、という心理士のやり方は小児科医に違和感を持たれやすく、そして不十分な情報だけで心理臨床を依頼されるということになりがちである。そのような状況の中で周囲と連携し、心理士としての立ち位置を確立していかなければならないという困難さがある。


内科・心療内科の心理臨床の特徴

内科・心療内科では、身体疾患と心理社会的因子が密接に関係する心身症が主な対象となる。心身症とは、「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態」と定義される(日本心身医学会,1991)。そのため、心理臨床の特徴として心身両面からのサポートが必要であり、心理面だけでなく、身体疾患や身体生理機能についての知識や理解をもって、患者を全体像から把握することが求められる。

その治癒過程においても因果論的に説明できるものではなく、共時性の観点からの理解が必要である。河合(1995)によれば、治療には、患者の心でもなく身体でもない第三の領域へとつながるための、「非個人的な心理療法」が必要である。「非個人的な心理療法」を簡単にまとめると、患者の主体性と自立性を尊重し、因果論的な病態理解を重視しない、何もしないことに全力を尽くす、矛盾や二律背反をそのまま抱えて待つ、イメージや物語を重視する、事象の非因果的連関を読み取る、治療者の主観的体験と患者の体験を相互変容の治療過程とみなす、といった治療態度を表している。

心身症患者の特徴のひとつとして、治療導入期の治療関係の確立が困難であることがいえる。患者は、失感情傾向や回復恐怖などをもっていることから、治療の動機付けが低く、導入期の抵抗やトラブルが多発する。この混乱に対処しつつ、治療関係を確立させることが必須となるため、特に重症な心身症には長期を要する。

また、治療過程において、患者が医師や看護師に向けた不満や攻撃を述べた場合には、その感情をただ受け止め、決して医師や看護師に直接伝えたり、鵜呑みにするということがないように注意しなくてはならない。

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