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健康・医療心理学Ⅱ第1課題②S評価レポート

『運動(スポーツ)をすることの意義を、精神的効果・身体的効果・社会的効果の3点について、プラス面とマイナス面についてそれぞれ述べよ。』


社会の発展に伴い、生活における運動量が低下する一方で、安価な食べ物が容易に手に入るために、偏った栄養を過剰摂取するなどの要因から生活習慣病を患う危険性が高まっている。日常的な運動習慣は、病気の罹患率を下げ、心の健康や生活の質を改善させることが分かっており、適切な方法で行うことによって得られる効果は、精神的・身体的・社会的な3つの側面に分類される。

精神的効果

まず、精神的効果としては、適度な有酸素運動によって分泌されるセロトニン、βエンドルフィン、カテコラミンなどの神経伝達物質の働きが挙げられる。セロトニンは、精神や体の生理機能を安定させる作用があり、抑うつ、不安の軽減に効果がある。βエンドルフィンは脳内麻薬の一種とも呼ばれており、苦痛軽減や鎮痛作用に加え多幸感をもたらすことから、ストレス解消やポジティブ感情の生起、自己肯定感や自信を高める効果などが期待できる。カテコラミンは、うつ病患者において低下が見られるという特徴があるため、運動習慣によってカテコラミンを上昇させることで、抗うつ効果が期待できる。また、運動は交感神経を活性化させ、覚醒効果による集中力増加や気分高揚をもたらし、運動後には副交感神経が優位になることによるリラックス効果から眠りに入りやすく、睡眠の質向上が期待できる。

身体的効果

次に、身体的効果としては、運動によって体が丈夫になることで病から身を守り、長寿で健康な状態を維持できる可能性が高まる。柔軟性や持久力、筋力が向上することにより動きやすくなり、怪我をしにくく疲れにくい体になる。心肺機能が向上することにより風邪をひきにくくなり、骨に刺激が与えられて骨自体が丈夫になり、骨粗しょう症の予防になる。また、エネルギーの消費量が増えることにより体脂肪が燃焼され、血行が促進し、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防・改善が期待できる。

社会的効果

そして、社会的効果としては、運動やスポーツを通して心身の自己管理や協調性、ルールやマナーの尊重、目標達成への努力といった社会生活に必要な能力や態度を身に付けることができる。また、施設を整備しイベントを開催することは、地域住民や国民全体、他国や異文化の人々との交流の機会となり、地域社会の再生や活性化、コミュニティの形成、連帯感や平和の精神が育まれることなどにつながるし、日本における経済効果や観光振興、国際的な地位や影響力の向上にも貢献できる。

運動することのマイナス面

しかし、運動にはマイナス面も考えられる。精神面では、βエンドルフィンの作用により運動依存に陥る可能性があり得る。習慣になっている運動が、怪我や病気などで急に出来なくなった際に不安や不快感に襲われるなど、運動が唯一のストレス解消の手段となっていた場合などに起こりやすく、無理に運動をして怪我や病気を悪化させてしまう恐れがある。身体面においても、負担のかけ過ぎや不適切なやり方は怪我や痛みの原因となるし、水分やミネラルを消費して脱水症状や熱中症を引き起こす危険性があるため、こまめな水分補給が必要である。また、食欲が増えるため、食べ過ぎて栄養バランスを崩し、健康を損なうことも考えられる。最後に社会的な面として、スポーツが盛り上がり、他者との比較や競争が激化してしまうと、プレイヤーだけでなく観客においても執着心や劣等感などのネガティブ感情が生まれ、他者攻撃へと発展してしまう可能性も考えられる。ルールやマナー、モラルを尊重し、バランスや節度を持って楽しむことがウェルビーイングを高めることにつながるのである。

参考文献

身体活動・運動|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
フィットネス施設に関する調査を実施(2020年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所 (yano.co.jp)
Pate RR, et al: Physical activity and public health: a recommendation from the Center for Disease Control and Prevention and the American College of Sports Medicine. JAMA 1995;273:402-407
スポーツ・運動の心理的効果について―精神医学の立場から―
運動・身体活動の心理的効果

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