NoLimit 感想

2023/5/8 ふせったーに書いたものの再掲


Asterism「NoLimit」感想 めちゃめちゃよかった。当日券買って2回見た。わたしは坂下陽春が好きです。
一悟へのクソデカ感情とネタバレがめっちゃあるよ

〜これまでのあらすじ〜
カリステでまんまと坂下陽春に落ちた倉野は「推し(ふみや)役だったから好きだったのか本人が好きなのか」を見極めるべく、彼の直近出演舞台である「NoLimit」のチケットを購入したのであった

 というわけでAsterism vol,07「NoLimit」観劇してきました。どちらも現地、5/4夜と5/7夕方の回。2回目は当日券で見ました。当日券チャレンジしたことからもわかる通りめちゃめちゃよかったです。坂下さん目当てで行ったのもあり、彼が演じる一悟が出ているシーンはほぼ一悟ばっかり見ていたので今回も内容偏りまくってるけど感想を書きました。一悟へのクソデカ感情、マジで止まらない。一悟〜!!!!
 70分と短めの上演時間に内容がぎゅっとまとまっていたためにネタバレを避けての言及が不可能に近く、また公式のあらすじのみだと正直「???」となるのでストーリーの根幹にもガンガン触れます。よろしくね

・「NoLimit」という作品について
 そもそもAsterism自体を今回初めて知ったので、もちろんNoLimitも完全初見。あまり詳しくわかってないけど、Asterism原作の台本を舞台化してるって感じなのかな?何度かキャストを変えて上演されており今回は3回目の舞台化だそうです。(どうでもいいけど過去キャストに以前の推しがいてウケました。そこ繋がるんかい)
 内容としては交通事故に遭って死にかけ、元の身体そっくりのアンドロイドに脳を移植されて生命を維持している6人の男たちと彼らを見守る「先生」の話。事故から50年が経ち、最後のひとりである主人公・圭吾が目覚めたところから物語が始まる。彼は記憶喪失なんだけど会社の同僚だったという5人の仲間達と過ごすことで記憶を取り戻し、そこで自分含むみんなの身体がアンドロイドになっていることを知って…みたいなストーリーということだけざっくり理解してもらえればこの感想を読む前提情報としては問題ないと思う。人物名は、フィーリングで読んで(身内向けの補足なのでめっちゃ雑)

・ストーリー全体について
 伏線の張り方がめちゃめちゃ上手い。突然どうした!?みたいな急展開が全くなくて、そこがすごく入ってきやすくてよかったな〜と思う。話運びに無理がないというか、なんか全体的に「こうなんだろうな」ってふんわり思ってたことが正解で〜す!!!ってお出しされたりあとから振り返って「あれってそういうことか!」ってなることがすごく多くて、よかった(突然語彙力が終わっちゃった)。
 一番わかりやすかったのは冒頭にちょこちょこ挟まれる一悟のニュース読み上げ。交通事故、臓器移植、人工知能といったキーワードによってなんとなく察しがつく…とまでいかなくても「みんなアンドロイドです!脳だけ移植してるよ!」て言われたときの「急に!?」感があんまりないのはあのニュースがあるからだろうなと思った。あとは先生がやたら接触多いのとかUNOのときカード逆に持っちゃうのとか、後から「実は先生は視力がだいぶダメになってる」と明かされてから振り返るとだからか〜!!ってなる。意図的に気付かせようとする伏線とさりげない伏線があちこちにあって、これはリピートすればするほど色々気付けて楽しいだろうなと思ったしリピートチケット売ってるのも納得。あと冒頭のダンスパートが事故当時の様子示してるの天才すぎない!?2回目見たとき気づいてウワ〜!てなっちゃった。
 伏線が上手いぶん展開が割と読めるというか「こうなるんだろうな」って思ってたらやっぱりそう、という部分ももちろんあるんだけどそれを逆手にとって没入感を出してるのもすごいと思った。「本名が非常ボタンになっており呼ばれると完全停止する」「圭吾はみんなの本名を呼びたいと願い、思い出そうとしている」このふたつを同時に知り得ているのは我々観客だけで、それ故に私たちは「圭吾が名前を呼んでしまうんだろうな」と予想がつく。でもそれって「あ〜やっぱ呼ぶよね」っていう"読めた"感覚より先に「だめだめだめ呼ぶな呼ぶな呼ぶな!!!」が来るから「展開が読めているのに俯瞰的になれない=物語により入り込む」形になるんだよな。正直ここが一番"入ってる"感じがした場面だった。観客なんだけど部外者じゃないみたいな感覚って言えばいいのかな、上手く言えないけど……

・一悟について
 強くて優しくて、でも頑丈ではいられなかった男。圭吾が目覚めるまでの一悟を思うとマジでしんどすぎてめちゃめちゃになってしまう。自分が運転していた車で事故に遭って、相手も悪いけど自分にも非があって、同乗していた友達もみんな瀕死の重体で全員アンドロイドに脳移植されて人間じゃなくなって、たぶん誰も一悟を責めなかったと思うけど彼自身が一悟を許せてなかったんじゃないかなと思う。一番後に目覚めた圭吾はアンドロイドの身体を得てまで生かされている自分の現状に納得いってなくても仕方ないけど、圭吾の次に現状を良しとしていなかったのは一悟だった気がする。これはわたしがそう思ったってだけだけど。
 一悟、最初に出てきてニュース読み上げて途中で「もういい」って先生に止められて「はい」って中断してそのまま捌けて、圭吾が目覚めてからの初登場はUNOしてる博士の元に新着ニュースを知らせに来たとき。事故に遭った6人(圭吾を除くと5人)のうち、ひとりだけ目覚めてすぐの圭吾の様子を見にきてないんだよね。だから初見のときは一悟だけ博士のお付きのアンドロイドか何かなのかな?って思ってたんだけど、記憶を取り戻した圭吾と対面してからの一悟はめちゃめちゃ人間味あってそこの変化にびっくりした。それまで淡々とニュース読み上げて止められたら中断してその場にじっと待機してたから……
 圭吾に深く頭を下げて謝罪して、「でもみんな生きてるしいいじゃん」って言われたら「良くないよ!だだってこんな…」って取り乱して、圭吾がエッ?てなったところで電池切れでダウン。ここの静かに崩れ落ちるところ、一気に力抜けてく感じがめちゃめちゃ伝わってきたしガクッて膝ついてゆっくり倒れるとこ儚すぎた。脱力が上手すぎ どんな角度の褒め?いやでもここまでのシーンで薄々見てる側も「この人たち本当の人間じゃないのでは?」て思い始めたところで一悟が電池切れで倒れて「ああやっぱり」ってなるし、圭吾が現状に疑問持ち始める決定的な出来事だったと思うのですごい重要な場面だったと思う。他のキャラクターに比べると一悟って比較的登場シーンが少なくて、でも出てくると物語が動くというか圭吾にめちゃめちゃ影響を与えてたと思うのでかなり重要な人物だったんじゃないか。
 「圭吾が目覚めてごめんって言えたら電源切ってもらおうと思ってた」って話すところの一悟、マジでめっちゃ好き。しんどいんだけどなんか、一悟の想いとか覚悟がぎゅっと詰まってるシーンだなと思ってて……ずっとにこにこしてるんだよ一悟。すごく穏やかに微笑んでて、動揺する圭吾の問いかけに「うん」「そうだね」って返す声がさ〜〜〜〜寄り添うような優しさとあたたかさで、でも電源切ってもらうっていう自分の意志は絶対に曲げない。「涙も出ない」「痛みも感じない」「恐怖もない」「そういうシステムだから仕方ない」「そうでないと生きていけないから」これを……すごく穏やかで優しい声で微笑みながら言う一悟……「生きていけないじゃないか、維持できない」ここの言い直すとこがさ〜〜〜〜〜やっぱ気にしてんだよな一悟は。「最初は戸惑ったけど50年も経ったたから麻痺しちゃった」「今は今で楽しんでる」って言う人もいる中で、一悟はたぶん麻痺しきれないままここまで来たんだろうなって思った。これを「現状を受け入れられない弱さ」ととるか「問題から目を逸らさない強さ」ととるかは人によると思うけど、「(周りがどう思っているかにかかわらず)自分のせいでこうなった」という前提の上でこのまま50年生きるってすごいことだと思う。圭吾が目覚めるまでの50年間ずっと苦しんでるの見てきたって言われてたけど、罪悪感をずっと抱えたまま50年とかしんどすぎるじゃん。謝りたい相手はずっと目の前にいて、でも謝れる状態になくて、いつ謝れるかもわからなくてでも時間だけは過ぎていって。身体はアンドロイドだから充電さえしてれば実質不老不死(実際は本体の劣化とかでそうもならなかったけど)、ずっと同じ施設で変わらない毎日、もうさ〜〜〜〜〜そんなん気が狂わないか?別にみんな一悟のこと責めてないだろうしさ、なんなら気にしてなさそうなのに一悟だけはずっと圭吾に謝りたいという気持ちと自分のせいだという罪悪感を抱え続けてて、そんなしんどい感情を50年間持ち続けて圭吾の目覚めを待ってて、謝ることが出来たらもう終わりにしようってそこまで考えてて……ウワーーーーー!!!!マジでしんどいし強すぎるよ一悟。好きだ。
 正直電源を切るタイミングなんていくらでもあったと思うし、なんなら罪悪感に押し潰されてもっと早い段階で死(=電源切る)を選択することだってあり得たはずなのに彼はそうしなかった。その前に圭吾に謝りたかった。誠実すぎるだろ……………!!!!!なんでそんなに真っ直ぐな強さを持ち続けられるんだ。開き直ることも逃げることもせずに向き合い続けた一悟はマジで強いと思う。でも誠実だからこそ圭吾に対して現状を誤魔化すことはできなかっただろうし、だから圭吾が目覚めてすぐのとき会いに来なかったのかな……先生含めてUNOしてるときに「新着ニュースです」って乱入してきたときも、「今はいい」って言われたら「はい」って中断してそのまま動かず待機してたんだけど下手に圭吾と絡むと混乱させそうであえてそうしてたのかなとか思った。これは2回目見てての感想になるけど。優しくて誠実で、それゆえに麻痺しきれなくて自分ごと消しちゃってのあの振る舞いだったのかな〜とか思った。実際はわからない。でも意図的に感情を出さないようにはしてたんじゃないかな……たぶんだけどだいぶ前に一悟は壊れてしまってたのかもしれない。これは故障という意味でなく本人の精神として。それでも芯の部分はちゃんと人間らしくあり続けたし最期までそれを貫き通したんだからやっぱりわたしは一悟のこと強いと思うよ。
 電源を切ると脳への供給が徐々にストップするので長い間苦しむ、非常ボタンなら一瞬だけどその一瞬とてつもない痛みを伴う、この2択を提示されて「最期は人間らしく終われるんですね」と嬉しそうに非常ボタンを選んだのめちゃめちゃよかったししんどかった。生まれ変わりを信じている彼にとっては電源を切る=生命維持の終わり=死は希望なんだよな。彼にとっては苦痛であるはずの痛みすらも希望になり得て、ここでOPの「もうひとりの自分が囁く、痛みを与えてほしいと」が効いてくるの、上手〜〜〜〜い!になった。非常ボタンは彼らの本当の名前。だから彼らは名前に関する記憶を封じられてて、型番を元にした名前を与えられている。一悟は型番1-5。本当の名前は、和優。いやめっちゃ名前通りに育ってますよ親御さん!!!!あなたたちの息子!!!!!マジで和を重んじる優しい子になりましたよ!!!!!!!!!!似合いすぎ、和優。「本当の名前、和優」って噛み締めるように呟く声が本当に嬉しそうで、大切なものを抱きしめるような言い方で、その後電源が落ちて一瞬脱力した後に頭抱えて絶叫して、そのままぶっ倒れて終わり。運転停止、内部クリーニング開始。ひとりの人間の終わりとしてはあまりにも呆気なくて、でも彼は人間の和優として終われたんだなって思うとそれはある種の救いなのかもしれないと思いました。あと倒れ伏した姿マジで儚すぎる。中身入ってる?充電切れのときもそうだったけど本当に無機物っぽくてビビってしまう。身体が薄すぎる。ご飯いっぱい食べてください……(誰?)
 一悟については早い段階で退場したのもあり、後から他者によって明かされる事実が多かった。だから2回目見れてよかったな〜と思う。上述の型番の話も一悟退場後に出てきた情報で、ああだから本当の名前をあんなに嬉しそうに呟いてたんだ。ってなった。そりゃ型番で呼ばれている自覚がある上で現状を良しとしていなかった彼は本当の名前を大事に抱きしめるよなって思った。和優。マジでいい名前だ。彼がニュースを読み上げていたのは目が見えなくなってきている先生のため、その先生は実は圭吾の父親というふたつの情報も終盤で明かされるんだけど、それ絶対罪滅ぼしの意味もあるじゃん!!!てしんどくなった。電源切られる前に「本当にすみませんでした、長い間ありがとうございました」って深々と頭下げてたんだけどさ、初見時は死を選んだことに対する謝罪だと思ってたけどこれ絶対にそれだけじゃないよね。というか事故を起こしたことに対する謝罪がメインだと思う。だって50年も目覚めなくてずっと苦しんでた友達の父親なんだよ。彼の立場からしたら謝っても謝りきれないだろうし、圭吾が目覚めない以上先生に尽くすしか一悟には献身のしようがないわけ。う〜〜〜〜しんどすぎる……一悟って本当に優しくて誠実で強いな。好きだ…………
 マジで一悟、こんなにいい子が自ら死を選ぶなんて……という気持ちとと彼にとっては悔いのない最期だったんだろうな……という気持ちが入り混じってめちゃめちゃになってしまう。やりきれなさはあるんだけど彼にとっては希望であり救いだったんだなと思えるから、最後にはよかったねという気持ちになる。え〜ん一悟、好きだ……回想シーンのでっかい蛾にまとわりつかれてじたばた逃げ回る和優めちゃ可愛かったし、OPで示唆されている事故当時のシーンも運転しながらずっと笑っててさ、「酒が飲めないのをいいことに運転任せきりで後部座席で騒いでたから寂しかったんじゃないか」って言われてたけどたぶん彼はそれ以上にみんなが楽しそうで嬉しかったんじゃないかな……とあのシーンを見ながら思っていた。だってそうじゃないとあんなにニコニコ笑いながら運転しないよ……バックミラーに目向けてるときの穏やかな視線とかさ……マジで和を重んじる優しい男だよ和優。ううう…………

 時系列ぐちゃぐちゃで思ったまま色々書いてたらめっちゃ長くなっちゃった!こんなに書くことあったんだ。今回もファンレターを書きます。
 正直70分の舞台で中盤に退場したキャラクターについてこんなに書けると思わなかったんだけど、ほんとに短い中にぎゅっと詰まってたんだなと改めて感じました。「こうだったんだろうな」と考えさせられる脚本・演出はもちろんそれを表現しきった坂下さんも本当にすごいよ。完全初見の舞台でこんなにめちゃめちゃにされるなんて思わなかった。感受性がぶち壊れてしまってクソデカ感情が無限湧きしている。怖い。坂下陽春って天才なのかも。わたしは坂下陽春が好きです。

 は〜〜〜〜というわけでね、舞台「NoLimit」お疲れ様でした!すごいものを見た。素晴らしい作品でした。映像化しないの残念すぎるけどあれは現地で見るからこそという気持ちもあるので2公演の観劇の記憶を噛み締めて生きていきます……この感想も備忘録としての機能は果たしてくれるはず。ファンレター、書きます。よろしくお願いします。

この記事が参加している募集

#舞台感想

5,924件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?