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Whole lotta shakin' goin' on/Jerry Lee Lewis ギターソロタブ譜、解説

昨年2022年に逝去した、ロック第一世代最後の生き残りだったロッカー、
”キラー″ジェリーリールイスの名前を一躍有名にした1957年のヒット曲は彼のメイン楽器であるピアノが映えるのは勿論、短いながらも非常にツボを押さえたローランドジェーンズによるギターソロも見逃せない。

ジェリーリールイスについては少し前に自分とkennys氏がコラボ制作した一周忌追悼ポッドキャストがあり、ギタープレイについても詳細に語るパートもあるので是非併せて参照してもらえれば幸いである。

この当時の楽曲の多くがそうであるようにこの曲のコード進行も12小節のスリーコードでキーはC。そしてリズムが3連である事を意識する事もとても重要である。

Cのブルーノートペンタトニックのスケールポジションから各コードに適した音を抜き出したフレーズが展開され、テクニック的に特に難しい事はやっていないので、細かい部分にまでこだわらなければ初心者にもうってつけのサンプルである。

そして最も注目すべきポイントは、このソロがブルーノート(マイナー)ペンタトニックのほぼ基本音のみで構成されている、という事だ。50年代の他のロックンロールのギターソロを聞いてみると、その多くがマイナーペンタトニックに含まれないメジャーサードや♭5や13thの音が追加されているが、これは当時のギタリストたちが「ペンタトニック一発」のようなスケール的な発想が希薄で「コードトーンと付加音」というアプローチが主だった事が理由だと思われる。

Cブルーノート(マイナー)ペンタトニック、赤がルート音、数字はブルーノート。3つのブルーノートの内の2つを自動的に含んでいるためブルースで多用される。
実際に多用されるペンタのポジション。勿論曲が明らかに短調の時はメジャー3度や13thは基本的にご法度。


「ブルーノートペンタ(マイナーペンタ)のスケールポジションを念頭にアドリブを展開する」というロック・ブルース系のプレイヤーにとって今では当たり前のやり方が一般的になるのは、60年代中期ぐらいに黒人ブルースとロックの結びつきがより明確に示され、シーン自体がプログレッシヴになり、ロックバンドがこぞってフリーフォームで長尺の即興演奏を展開し、「コード進行の事等細かいことに気を取られないで済む即興リードプレイに適した裏技的飛び道具」が必要とされた60年代後半を経た70年代ぐらいからから急速に広まったものだと思われる。ジャズ方面で50年代後半にはモードジャズが確立されていた事とも無関係ではないだろう。

故にローランドジェーンズが、57年に既にこのような時代を10年先取りするアプローチをとっていた事は注目に値する史実であるし、この曲以外にも彼の残した先鋭的な演奏を聞く限りでは色々とアンテナの高いプレイヤーであった事が伺える。

プレイヤーを煩雑な音楽理論から解放する「飛び道具」だったペンタ一発はその手軽さや自由度や汎用性の高さも相まってプロアマ問わず皆がこぞって使用した結果「そればかり」になり、元々あった「コード進行を意識したプレイ」という意識は一定世代以降のロック系プレイヤーの概念から消えていき「曲キーのペンタ一発であまり細かいことを考えずに何となく弾く」か「複雑なスケールに通じて正確無比で技巧的だがコード進行への意識は希薄」かのどちらか一方のベクトルに二極化していき、気づけばギター自体がロック/ポピュラー音楽の花形でなくなってから久しい。

ロック/ブルース系ギタープレイヤーにとって馴染み深い「ペンタ一発」の好サンプルが聞けるロック登場期のスタンダード曲に触れ、当時はとてつもなくヒップなアプローチだったであろう事に思いを馳せつつこのソロを倣うと又違った景色が見えてくる事だろう。


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