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ニールセダカとDrop deadコード

数年前のパンデミックの折、ニールセダカが突如YTで、ピアノ弾き語りとちょっとしたトークの10分程度の動画を日々挙げはじめた。レジェンドを身近に感じられるこの「ミニコンサート」は頻度が減りつつも現在も続いており、自らが語るエピソードは個人的に今まで知らなかったような事も多い。とりわけ印象的だったのが、彼が自らの作曲哲学を語った回だ。

動画の冒頭では彼の第2黄金期の足掛かりとなった全米ナンバーワンヒット 「雨に微笑みを/Laughter in the rain」が、エルトンジョンの「グッドバイイエローブリックロード」に登場するコードに大きな感銘を受け触発された事により生まれたエピソードが語られている。

曰く曲中の「Drop deadコード」・・・耳を奪われるコード、トリッキーなコード・・・とでも訳せばいいのだろうか、を聞きどうしてもそれを自らの作品にも反映させたくて試行錯誤した様子が実演を交えエモーショナルに語られている。又彼は「Every song should have a"drop dead" chord」とも言っており、どの曲にも聞く人を突き動かすようなトリッキーなコードがあるべきだ・・・という彼の曲作りの哲学を語っている。

60年代から数々のアメリカンポップスを世に送り出した彼のような大作曲家でも「良い曲」に出会えば普通に感動し、真似したい衝動を抑えられない一音楽ファンであり、何よりもそのミーハーな曲作りへの衝動に大きく親近感を感じたエピソードだった。

自分も20歳過ぎぐらいにニールセダカの「恋の日記The Diary」「すてきな16歳Happy birthday sweet sixteen」や「悲しき慕情Breaking up is hard to do」等のコード進行を知り、複雑さの欠片も感じない明るく楽し気なそれら楽曲の構造がかなり練られたものである事に衝撃を受け、見よう見まねで半ば強引にそれら覚えたてのコード進行の一部だけでも何とか自分のハードロックな曲に反映させたくて無理やり突っ込んだりした、なんていう黒歴史・・・とまでは言わないが今思い返すと「若かったなあ(苦笑)」みたいな経験がある。

「すてきな16歳」のディミニッシュも「悲しき慕情」の部分転調を重ね何事もなかったかのように元に戻る華麗な展開も、自分にとってまさに「Drop dead」なコードだった。動画内で彼が言うように「感情と精神が高揚し、背筋も凍るぐらいの衝撃」を感じたものだ。当時の自分の曲作りといえば、雑な音楽知識と感覚頼み・・・で元来クラシックのピアニストとしての道もあったレベルのピアノの達人でもあるニールセダカによる多分楽典の事や作曲のノウハウをほぼ完全に理解した上でやっているであろうスマートかつインテリジェンスな曲作りに憧れたものだった。

そこから長年かけて、独学で色々と身に付け少しづつ自分なりの課題を克服し、今ならそういう凝った進行やトリック、drop deadなコードについても自分が考える及第点レベルで理解・説明できるようになり、楽典や理論へのコンプレックスが無くなったことでかなりヘルシーに自分のやりたいようにやりたい音楽に向き合えるようになった。

そんな自分の感覚や経験を生かし、ワイルドでラフなロックンロールスピリットを忘れない事を心掛けつつギターの奏法動画や先日始めた名曲コード解説・・・なんかを展開していますよ…という宣伝オチで今回の記事を締めくくりたい。



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