20240813/小説(5)

小説(5)

コンセントー充電器ースマホー有線イヤホンー私のルートで給電されているはずの電力を、この体はスピードに変換してくれない。その点電車になりたい。好きな色は赤だから丸の内線がいい。昼間の東西線に乗ると地上に出たあたりで昔のことを思い出すから、青が嫌いだ。
一般的に、家の布団よりも地下鉄のシートの方がよく眠れるものです。私が電車になったなら、車内をいい感じに揺らして、良質な睡眠を提供してみせます。私が電車になったなら、誰も利用しない駅を終点にして、誰もいない街を目指して走ることになるのだから、人間など、眠ったまま誰もいない街に運ばれてしまえばいい。
地下鉄として、はやくこの街から出してあげます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?