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【読感】『「40歳の壁」をスルッと超える人生戦略』

作品:『「40歳の壁」をスルッと超える人生戦略』 著:尾石晴 氏 私にとっては少し先の話しかな?と思いつつ、人材業界に仕える社会人として、40代の方々が抱く感情の理解につながればと思い、拝読しました。 ■本作を読み、気になったワード: #「40歳の壁」の正体はミッドライフクライシス #大事なことは、どうやって/主体的に/人生の後半戦を生きるか。 #幸せな人生に必要な3つの要素 #人生の目的とは、幸せに感じる状態を指す。 #「目的」を叶えるために「目標」がある。 本書を

    • 【読感】『傲慢と善良』

      作品:『傲慢と善良』 著:辻村深月 氏 本投稿は、上記作品を読んだ読書感想文(通称:読感-ヨミカン-)の内容となります。 本作では婚活をテーマに、人が何かを決断する際に感じる葛藤や迷い、判断のものさしとなる指標が見事に言語化されており、深い共感を得られる素敵な一冊でした。 私は職業柄、他人様の決断の瞬間に立ち会う機会が多いがゆえに、本作の主要人物らが抱える問題には、共感をはじめ、新たな発想・着眼点にハッとさせられる気づきの多い内容でした。取り扱っているテーマは「婚活」と

      • 朝の身支度

        瞼より先に鼓膜が起き、視界が定まらない中、部屋に鳴り響く目覚ましを止めに布団から出る。 就寝前にセットした暖房によって温められた部屋の温度は、ぬくもりを感じないうすら寒さに保たれていた。 寝ぼけ眼の状態で朝の身支度を卒なくこなしていく自分に、いつの間にか全自動身支度機能がアップデートされていることに気が付いた。普段自分が使っているスマートフォンでも、知らないうちにアップデートされているように、私自身の体でも「習慣」という名のアップデートが日常的に発生しているのだ。 それ

        • バイト先

          「はーい、おつかれー。」 何気ない一言で友達と別れ、そのままアルバイト先へと向かう。 モクモクと焼肉の匂いを充満させている店先には、すでにお客さんが列をつくって待っている。「今日も忙しそうだなぁ」そう思いながら、店の裏口の扉を開ける。 「はざまーす(おはようございます)。」 忙しなく動くキッチンスタッフに挨拶をし、厨房を抜けて更衣室へ向かう。LINEの通知を確認しながら制服に着替え、少し早めに出勤した。バタバタと動き回るスタッフの流れに合わせて、的確に自分のやるべきこ

        【読感】『「40歳の壁」をスルッと超える人生戦略』

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        • 日記
          9本

        記事

          漸強音

          青々と茂る木々の隙間から突き刺さるような日差しが肌を刺す。ジリジリと焼ける肌に共鳴するかのように、そこかしこから蝉の音が聞こえてくる。 「う~あぢぃ…。」 木陰にかかるベンチに腰を掛け、わずかでも涼を感じようと目を瞑る。が、無情にも聞こえてくるのは、蝉の音ばかり。 暑い、うるさい、汗が鬱陶しい。行き場のない怒りが込み上げてきて、余計に体温が上がる。せっかく、鬱々とした梅雨の時期が過ぎたと思ったのに、今度は望んでいたはずの晴天にイライラしてしまうとは。つくづく自分は貪欲で

          信頼と無関心

          『「好意」の反対は「嫌悪」ではなく、「無関心」である。』日常的に耳にする言葉ではないはずなのに、一度聞いただけでもスッと体に馴染むのは、人間が本能的に理解していることだからなのか。 私の父は家族のために稼ぎ、母は家庭のために働いている。どちらも尊敬している大切な人である。しかし、私は彼らのことをあまり知らない。私の記憶にあるのは、私が見てきた彼らの姿だけである。 小学校の頃、宿題のために私は自分の名前の由来を母親に訪ねたことがある。母が私の名前を説明している音をしっかりと

          信頼と無関心

          チャイム

          午前9時、始業のチャイムが校舎に鳴り響き、鐘の音と入れ替わるように人が教室に戻ってくる。日直による本日1回目の号令により、授業が始まる。 日直は日替わりの当番制で、始業ごとの号令や日誌の記入、黒板消しなど”いつもの日常”とは少し違う明確な役割を任された日である。私は彼の号令の声を聞きながら、卒業までにあと何回日直の当番が回ってくるのだろうかと頭の片隅で思いながら、教科書をぼんやりと眺めていた。 「そこ、何してる!」 教壇から一点を見つめ、先生が注意する。どうやら、授業中

          記生

          「今日はどんな感じにしますか?」 目の前にある鏡越しに目線を合わせて尋ねる。 私はあらかじめ用意したイメージを伝えると、ハサミがシャカシャカと音を立て、髪の毛が肩からスルリと床に落ちていく。 2ヶ月ぶりに座ったその椅子は相変わらず心地よく、その気になれば数秒で寝てしまいそうなほどである。目を閉じて、ハサミが交わる音を聞きながら、私は数時間後の私を想像する。 「人は見た目が大事」「印象は最初の数秒で決まる」など、さまざまな意見があるが、”視えること”を前提につくられてい

          押し付け愛

          私はわたしが好きだ。 言葉を選ばずに言ってしまえば、他人にほとんど興味がない。 私のことは私が一番知っていたい。 そんな束縛っ気のある彼氏彼女のような愛情表現を、自分に抱くようになったのはいつからだろう。世の中では本質的には「善し」とされることが、受け手の曲解から、その存在全てが「悪」と認識されてしまうことがある。 家から車で1時間、母方の実家に行く度に私は"わたし"の事を少し嫌いになった。そこには年の近い2人のいとこも住んでいて、年に数回集まることがあった。家族間の

          母の目

          「鬼が来るよ」「サンタさん来ないよ」。スーパーで買物をしていると、時たま母親と子供の攻防戦を見かけることがある。お菓子コーナーで駄々をこねる子供と、それをあやす母親の姿は日常生活の一部として溶け込んでいる。 子供の育て方は家庭によってさまざまあり、そこに口を挟むつもりもない。が、大人は時折、子供にしかまかり通らない98%の嘘めいた文言で子供をいなすことがある。 子育てのマニュアル本に書いてあるのかは知らないが、多くの大人がヒートアップした子供を凍りつかせる”対子供の必殺キ

          鉛筆と私

          小学校の謎のルール、シャーペン禁止。絶滅に向かう野生動物の保護活動のごとく鉛筆を使うことを強要された小学生時代、私は文字を書くのが嫌いだった。何回書いても、お手本のようなきれいな字を書くことができず、それなのに毎日毎日新しい形の文字が増えていく漢字ドリルが嫌いだった。ただ線を書くだけと割り切ってしまえば、力技で終わらせることができる数少ない簡単な宿題であるのだけど、ぐちゃぐちゃな直筆で書かれたマスのてっぺんにある機械で書かれた精巧な文字に嘲笑われているかのようで、少し嫌な気持