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「募ってはいるが募集はしていない」の危うさ

Twetterで「#募ってはいるが募集はしていない」がトレンド入りしたとか。

1月28日の衆議院予算委員会で首相が答弁した一幕からだという。
「そんなものを言葉尻まで追いながら見ていられるような大いに時間を持て余しているひとが日本にはたくさんいるのだな」と思ったくらいであった。

とんでもない様子であると知ったのが、承前のネットニュースである。

詳しくはWikipediaでも調べて頂ければと思うが、一部を抜粋すれば“予算委員会では国政のあらゆる重要事項についての審議が行われる”とある。
そんなところで「募る」と「募集」の違いについて、など重箱の隅をつつくような話をしていたことが話題になっていたというのである。

億の、兆の、と国政について語る場で数千万を小突きまわしている。
公費のイベントでムダ遣いなどと叩くより、もっと他に叩くべきモグラなど幾らでもいるだろうに。

言葉の機微から問題にしていては、決まるものも決まらないだろう。
他所でやれ、としか思わない。
が、そんなこととは別に言葉尻を面白がって話題にする世相がある。

いっそ「募る」と「募集」では主体が異なる、と咄嗟に頭をまわした総理を褒めこそすれ、50年近く同じ語感だと言ってのけられる尻馬に乗っかるだけ乗っかって騒ぎ立てるというのもどうだろうと思うが。

「太る」にしても、「肥える」とは違う。
肥える、のは脂肪だけである。
太ってはいるが肥えてはいない、で説明されるのは筋肉がついた事実だ。
「答弁」も質問に対する説明なので、「答え」ていないはあり得ない。
答え、は働きかけに対するふるまいだ。
=回答であれば、「答弁しているが回答していない」となるわけで、まさに政治家の面目躍如。むしろ政治家でなくとも、むかしからどこにでもいる。

つらつらと書いている間にも、次々と同じような記事がニュースサイトでは拡散されているらしい。元がデイリースポーツの記事も、YahooにauWEBにmsnにと広まっているが拡散ではない、ということなのだろうか。

もちろん「広まる」と「拡散」が異なるのは字面から想像がつくだろう。
が、「募る」と「募集」は同じだという。
少なくとも私は「広める」と「散る」が異なる意味と知っているし、それは「募る」と「集める」も同じで、どうして異なる要素を含んでも、なお同じだと思えるのかという点に誰も言及しないことのほうに違和感を感じる。

今のところ根拠は宮本氏(または議員となっているものばかりでフルネームすら出ているものは少ない。ちなみに宮本徹氏だそうである)の、48年もの間ずっと、同じ意味だと疑わず使っているという発言だけである。

「Recruit」と「Recruitment」は同じだと仰るのである。

拡散を目にした単なる追随は、「動詞」を「名詞」にしているだけである。もう何がたのしいのかすらわからないが、トレンドになり果てる。

このレベルが大喜利であれば、さぞ噺家も舐められたものだ。
政治家も噺家も、言葉を操るプロフェッショナルである。

むしろ危うさは、こちらの側にこそあるのだ。
意味を考えず意を介さず、同調圧力で右へ倣えする。
なんともくみし易い相手である。

おそらくは総理も、ほくそ笑んでいる事だろう。