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【模型】中華ハンビーとドライブレコーダを作る ~トランぺッター 1/35 猛士~

香港の展示会用のために模型を作った時のことを書こうと思う。
当時私は深圳の電子メーカーに勤務していて企画営業をやっており、年に何回か行われる香港の展示会にも毎回出展者として参加していた。
扱っていた製品は主にICレコーダとドライブレコーダで、2013年春のエレショーのためにICレコーダのモックアップのカラーサンプルを自前で作った話は前回書いた通りだが、バカが始まると止まらなくなる残念な性格は当時も今も同じで、ドライブレコーダにも何か模型の技術を活かせないかと考えた結果、ブースに車の模型を飾ろうと思い立った。
ドライブレコーダのサンプルを単独で陳列しておくよりも隣に車の模型があったほうが直感的にわかりやすい。
また、こういう展示会はこういっては何だが同じようなものを扱うブースが多い上にお客さんは会場の硬いコンクリートの床の上を背広に革靴といういでたちで終日足を棒にして歩き回ってヘトヘトになっているので、特に目に留まるものがなければそのまま素通りしてしまう。
そこに、おやこれはなんだろうというようなもの、色は派手であるほうがのぞましい、そんなものがあったら数秒は足を止めて眺めるであろう。
そうするとブースの中の私は直ちに目標をロックオン、目が合うや否やWould you like our drive recorder?と声をかける。
展示会はともかくもお客さんをブースに招き入れ、話をしてナンボなので、こういうことも意外に有効だった。

さてどんな車を飾ったもんかと考えた結果、あまり普通の車では面白くない。
かといってDefence showではないので機関銃が付いた軍用車をかざるわけにはいかない。
人気があるがちょっと変わっていて目を止めそうなものはないかと思った結果、中国軍の汎用軍用車両「猛士」を民生版にしてみようと思った。
この種の車両はもともとはアメリカのHMMWV(ハンヴィー)というジープの後継車両が有名で、これの民生版は「ハマー」として知られるれっきとした高級車だ。
こういう車は今や世界中でよく似たものが作られて採用されているが、中国では昔懐かしい北京ジープの後継として「猛子」という車両があり、これのキットがトランぺッターから出ていた。
これをラグジャリーなカラーに仕上げて展示会で目を引いてやろうとたくらんだわけである。
※以下2013年4月7日のmixiの記事より転載加筆を行ったもの

公安のSWATチームと猛士

ハンビーという車はどうやらジープとは違うらしいということを中学生の頃に知った次第だが、どのくらいでかいかということになるとちょっとよくわからなかった。
映画Black HawkDownを見て、なるほど車高も車幅もかなり余裕があるクルマなのだなということが印象深かったが、今回模型を作ってみてその大きさというか巨大さがよくわかった。

さて、今回作ったのはアメリカのハンビーそのものではなく、それを模倣したクルマは世界中にあるのだが、その中のひとつといえる中国の東風自動車が人民解放軍に供給している「猛士」というクルマだ。
ハンビーそのものの模型が手元にないのでよくわからないが、日本の高機動車よりはかなりハンビーに近いフォルムをしている。
もっともヘッドライトがハンビーや高機動車がかわいらしい大きな丸目であるのに対し、こいつはなんだかヤブにらみのような角ライトで、バンパーというかライトガードもトニー谷のメガネのように吊り上って、なんだかハンビーが不良になったような顔をしているあたりが結構ちがう。

トランペッター 1/35 猛士

最近はトランペッターのキットも出来がよくなったもんだと思う。
箱絵は国連軍仕様の物で、はじめはこの仕上げにしてやろうと思ったのだが、ちと思い立ってアメリカの民生用ハンビー(ハマーというらしい)のように黄色くしてやろうと決めた。

会社の昼休みなんかにシコシコ整形を進めていたパーツ
こういうのは会社の休み時間なんかにやると妙にはかどる
塗装前の状態
ここまでやって家に持って帰って塗装する
黒サフで下地処理
ボデーはまずグレーサフで下地を作る

鮮やかな黄色塗装にしてやろうと思うのだが1/24のカーモデルと違って1/35なのである程度塗装にメリハリをつけないと単なるミニカーにしか見えなくなってしまう。
幸いこいつは面や凹凸のメリハリがはっきりしているので、ハイライトとシャドーでは思い切って明度を変えてやろうと思った。
そこで、まずはシャドーの部分をグレーサフで吹いてやる。

今度はハイライトの面を白サフで吹く。
イメージとしては、水平な面はハイライト、垂直な面はシャドーとなる感じだ。

そうしてシャドーの部分はガイアノーツの黄橙色を吹く。
こいつは黄色というよりもはっきりオレンジといった色だ。

つぎにハイライトはエアブラシのカップにそのままサンシャインイエローをぶち込んで明るくした色を吹く。
画像では側面はボンネットよりも濃い色に見えるが、これは見かけの違いでなく本当にこういう色を吹いているのである。

足回りはあっさりと仕上げる。
とにかく1/35では黒はかなり明度をあげないといかん。
ニュートラルグレーあたりを常用してもいいくらいだ。

屋根もすこし立体感を引き立たせるために、出っ張っているモールドの明度をあげてやる。

方向指示灯はこうやって別パーツになっているのがありがたい。
まずは銀を吹いてクリアーオレンジにしてからマスキングしてジャーマングレーを吹く。

車内はあまり見えないので軽くグラデーションだけかけてあっさりと塗り分けてやる。

窓枠をマスキングして塗装。
タミヤエナメルをこういう用途に使うと、吹きもれが出ても簡単に修正できる。

エンブレムは先に全部スターブライトシルバーで吹いておき、タミヤエナメルのジャーマングレーを吹いてから字体の部分をふき取る。
漢字のエンブレムが新鮮だ。

つり上がったメガネのようなバンパーは銀塗装とした。
実際にショーなんかで展示されている黄色の民生用実写ではバンパーは黒だったりするのだが、そうするとこいつは単に黄色と黒いだけのクルマになってしまうので、あえて銀とした次第。

窓ガラスは透明パーツではなく、打ち抜きPVCを貼り付けるようになっている。
なかなか接着に神経を使うが、薄さと透明度はすばらしい。

ここからバカが始まる

さて、今回急にこいつを作ったのはわけがあり、来週香港展示会で出品するドライブレコーダといっしょに展示してやろうと思ったわけだ。
なのでドライブレコーダも1/35で取り付けてやるのである。
まずはランナーを削って大まかな形にする。

伸ばしランナーを切り貼りしてレンズフードやヒンジをそれらしくしてやる。
3ミリ角くらいのサイズなので、ディティールにこだわろうと思っても無理なので、割り切ってイメージ重視である。

フロントガラスに貼り付ける取り付けアームをプラ板で作る。
これで形はできた。

実物と一緒に並べる。
右側に小さなゴミみたいにみえるのが1/35のドライブレコーダ。

塗装は実物より明るめに調色したガンメタル、LCDとレンズはスカイブルー、レンズフードはタミヤエナメルのクロームシルバー、アームの両面テープはエナメルの赤で塗装。

取り付けてみたところ。
ハンビーはフロントガラスが直角なイメージなのでアームのヒンジの角度も思い切って立ててみたが、ちと立てすぎたせいか、本体がやや下向きに見える。

ついでに運転席周りもレバー類を取り付けて完成
屋根は接着せず中を見れるようにするのが最近の私の傾向

というわけで完成。
中国車ならではの漢字のエンブレムがしぶい。
だが、やっぱこのライトの形とバンパー形状は何とかならんかと思う。

フロントガラス中央上に見える赤いのはドライブレコーダの両面テープ
PVCを2枚重ねにするガラス表現はなかなかリアルだが、接着に失敗すると厳しい
今回ガラス窓周りなど黒の塗りわけはエナメルを多用したが、エナメルをエアブラシで使うと意外に乾燥も早く使いやすいことがわかった
顔さえ見なければハマーの黄色いやつそのものだ
ドライブレコーダはこのように見える
せっかくなので同スケールの陸自パジェロと比較
大きさが全然違うぞ

というわけで完成した。
来週はこいつを展示会のブースで飾ってやろうとたくらんでいるのである。

2023年2月28日加筆

当時は今ほどにはドライブレコーダが一般的ではなく、売ってはいるが大体の車に着いているというほどではなかった。
なので会社としても特に力を入れて開発を行っていたが、これがのちに大変なことになるというのはまた別のお話。
さてトランぺッターのこのキットは作りやすくて面白いキットだったが、日本市場では流通しているのだろうか。
ファインモールドの陸自の高機動車と作り比べてみると面白いかもしれない。

なお、今気が付いたが模型に取り付けたドライブレコーダを窓ガラス越しに見ると、貼り付けた部分を赤く塗っているのだけれども、実はこれは取付用両面テープの保護シートの色で、当然ながら剝離した内側の両面テープ自体は黒いので、実際にはこう見えるはずはない。
これも、普段製品ばかり見ていて実際に車に取り付けるという経験をしていなかった中国勤務時代ならではの間違いだな。

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