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MRJ(国産航空機)の失敗は残念だが、悲観する必要はないと思う
三菱重工業は、戦後、技術継承の途絶えた国産航空機の開発を、2003年ごろからずっと行ってきた。その名が、三菱リージョナルジェット、通称MRJである。
2015年には試験飛行も成功させ、あとは米国での型式証明を取るのみであった。しかし、遅延に遅延をかさね、このたび三菱重工業からプロジェクトの凍結が発表された。
これにより、純国産航空機の夢は、いったん途絶えたこととなった。
これは税金の無駄だったのか、否!
三菱重工業が中心とはいえ、経済産業省やJAXAも協力する、実質的には国家プロジェクトだった。そのため、多額の国費も投入されたわけで、これに対する批判の声が上がるのも理解できる。
けれども、これは「税金をドブに捨てた」無意味なプロジェクトだったのかといえば、「否」と考える。
ビジネスまで持っていければもちろん極上であったが、航空業界も過当競争・・・正直なところ、採算性はあまり期待していなかったのではないかと思う。国費を投入してでも守りたかったのは、その技術とノウハウ・・・ではなかろうか。
失敗を恐れて投資を恐れることが、いまの日本の低迷にも繋がっている。一つのイノベーションは百の失敗の上に成り立つというのが、科学技術開発の基本だ。だから、税金をドブに捨てた無意味なプロジェクトだったわけではない・・・と思いたい。
コスト感覚のみで投資を萎縮すれば、未来に待つのは更なる縮小である。失敗を恐れないことこそ、いまの日本に必要なのだと思っている。
このプロジェクトは完全に失敗だったのか、否!
一方で、ビジネスという側面のみから見れば、このプロジェクトは大失敗だったわけであるが、プロジェクト全体としてはどうだろうか。これに関しても、「否」と考える。
次世代戦闘機が日英伊で開発されることが決定している。
米国で認可はされなかったものの、”MRJを実際に飛ばした”という経験は、この戦闘機の開発に必ずものをいう。MRJの技術やスタッフは、この次世代戦闘機に受け継がれる。
ということで、MRJのプロジェクト凍結をもって、MRJが何の成果もなかったように判断するのは早計と思う。
そればかりか、むしろ次期戦闘機の開発プロジェクトに目途がたったので、採算性の希望の薄いMRJをあきらめる踏ん切りがついたのではないかとすら思える。
ゼロ戦を始めとする戦前戦中の名機にみるように、日本の航空産業はもともと軍事中心であった。日英伊で最新鋭戦闘機を築き上げるなかで、きっと次のチャンスは来る・・・と信じてエンジニアの皆様は頑張ってほしい。
とはいえ、MRJプロジェクトの総括と反省は必要
ということで、個人的にはMRJは完全に失敗だったとは思わないし、これを教訓として科学技術への投資を萎縮させることは良くないと思っているが、一方で問題点を洗い出し、反省を次に生かすということも大切である。
失敗は、その経験を次に生かしてこそ、無駄ではなくなる。
特に、経産省主導のプロジェクトで大成功となった例をあまり知らないので、何がいけなかったのか?という点は良く検討して欲しい。
最初に引用した記事をあらためて見てみる。
日本においても、経産省がプロジェクトを立ち上げる際、JCABの型式証明能力や、FAAの証明取得プロセスをどうするかといった問題が、十分に検討されたとは思えない。経産省とNEDOが実施したMRJに向けての技術研究は、高い付加価値を持つ製品実現のために必要な努力だが、日本の旅客機開発に困難をもたらす最重要課題は、こうした先端技術ではなく、
「国による認証制度」
の問題なのだ。
しかし、専門分野の研究や設計を担う現場技術者や、マーケットだけを見ている投資家や経営者では、こうした認識を持つのは難しい。特に日本では専門人材の流動性が低く、開発現場の実情から行政の制度までを、網羅的に知る機会は得にくい。
その結果、経産省/NEDOは市場や基礎研究だけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業に取り組んだが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は蚊帳の外という、驚くべき体制ができあがった。
これは「誰が悪い」という問題ではなく、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針など、日本という国の力が改めて問われるべき事例ではないだろうか。
この記事では、経産省と国交省が連携を取れていなかったことを主因と断じている。さもありなん、役人の縦割り行政の問題点は、いつも指摘されることであるし、横の連携が苦手ということは、戦前の陸軍と海軍にも言えるなど、むしろ日本のお家芸ともいえる。
ここは本当に猛省して欲しい。
特に、経産省としては次の主戦場である「半導体」において、同様の過ちは繰り返さないで欲しいと思う。
(画像は写真ACから引用しています)
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