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2023年中国「会社法」改正の要点

【著者】
King&Wood Mallesons法律事務所・外国法共同事業
中国法弁護士 崔文英

中国改正会社法が2023年12月29日、第14期全国人民代表大会常務委員会第7回会議において可決され、2024年7月1日から施行されることとなった。

1993年に制定された中国現行会社法は、1999年と2004年の小改正の後に2005年の全面改正が行われ、その後も2013年と2018年に会社の基本制度に関する2回の重要な改正が施された。今回の2023年改正では、実務で明らかになった諸問題を踏まえ、日本を含む先進諸国の会社法制度も参考に、企業統治をめぐる多くの制度が再構築されることとなった。

新会社法は全15章266条からなるが、ここで重要な改正点を挙げると次のようになる。

1.資本充実の原則に則った株主出資払込責任の整備

有限責任会社の株主は、5年以内が出資金払込みの期限とされ、会社は、出資金を未払わない株主の権利を喪失させることができ、董事会(董事)は、株主に対する出資金払込みの催告義務と催告義務を怠った場合の賠償責任を負うものとされた。

日本の株式会社に相当する股份有限公司については、授権資本制度が導入されるとともに、会社設立後に期間を定めて引受出資額の払込みを行えばよいとする従来の制度から、会社設立時における全額払込みを要求する制度への変更がなされた。

2.コーポレートガバナンスの最適化、株式種類の多様化

会社(株式会社を含む)は、監事会の権限を行使する監査委員会を董事会に設けることができるものとし、この場合に監事会又は監事の設置はしなくてもよいとされた。

また、股份有限公司に種類株式発行制度と種類株式株主会制度が導入された。

3.支配株主、董事・監事・高級管理職及び法定代表者の責任制度の整備

会社の支配株主・実質的支配者も勤勉義務を負い、董事・監事・高級管理職と連帯して責任を負うものとされた。

 董事・監事・高級管理職については、その忠実義務の明確化と関連取引の規制強化がなされた。

会社の法定代表者は、会社を代表して会社の事務を遂行する董事又は経理がこれを担うものとされ、法定代表者「自動辞任」の制度の導入と法定代表者に対する責任追及制度の明確化がなされた。

4.出資持分譲渡制度の合理化

有限責任公司の出資持分の譲渡において、株主優先買取権を行使する前提となる「同等条件」の要素が明確化されたほか、株主が外部に出資持分を譲渡する要件について、別の株主による同意を不要とし、通知のみで足りるとする緩和がなされた。

5.財務制度の整備と減資・合併・抹消等の簡易手続の導入

会社は、登録資本の減少のほか、資本準備金により赤字の補填を行いうるものとされ、また、会社の合併・減資・抹消に係る簡易手続制度が導入された。

 以上のように、今回の改正では、コーポレートガバナンスの最適化、株式種類の多様化、株主権益の強化、経営陣の責任の明確化、諸手続の簡素化等が行われ、現代企業制度のあるべき姿を実現した会社法になったと評価しうると思われる。なお、今回の改正後最大の難題は既存の会社の体制調整である。その具体的調整方法については今年前半で関連解釈が公布されると予想される。


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