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アマチュア運動部指導者(スタッフ)をやる意義

私は会社員をする傍ら、週末にはある大学の運動部を監督として指導しています。

自分が引退したのが大学4年生であった2005年。その後、学生の頃から後輩たちのコーチとなり、2009年頃には監督になりました。結果、かれこれ16年ほど現場の指導にあたってきました。

もちろん私の活動はある種のボランティアです。いくらかの謝礼を大学からいただいてはいますが、どちらかというと後輩にご馳走したり、寄付をしたり、指導しに通ったりなどの交通費の方が全然大きいので、金銭を目的にしているというよりは、もはや自分のライフワークになっています。

世の中には運動部の監督やコーチとして生計を立てている方もいらっしゃるようです。実業団から出向として来られるケースや、そもそも大学に教授として就職をしてしまうようなケースですね。こういった競技団体では、おそらく力のある選手を推薦で確保するなどといったことをされているのではないでしょうか。

ですが、そのような運動部は本当に一握りかと思います。多くの団体は、普通に入学してくる新入生を勧誘して育成する、その指導体制はOB有志で担うといったことがほとんど、つまりこれが「普通の学生運動部団体」ではないでしょうか。

「令和2年度学校基本調査」によると、日本には全部で795大学あるそうです。それぞれの大学にどれくらいの運動部があるかまでは、少し調べたくらいではわかりませんでしたが、私の母校には50団体ありましたので、単純に掛け算をすると約4万、大学といってもいろいろですから、仮にこの半分くらいとして約20,000団体と思っておけば良いでしょうか。

なお、「令和3年度(公財)全国高等学校体育連盟 加盟・登録状況【全日制+定通制】」によると、高校だと男子は43,133校、女子で36,893校が何らかの専門部で加盟登録しているそうです。男女に重なりがあるから単純に足してはいけませんが、女子校もありますので、ざっくり約5万団体などですかね?

高校・大学とあわせるだけでもおそらく6~7万団体程度は存在していて、その分だけ監督やコーチといったスタッフの方々も存在しているものと思います。各競技、強豪と言われる団体はあるかと思いますが、そういった人たちはいわゆるエリートで、おそらくそれ以外の団体は先にあげた「普通の学生運動部団体」なのではないでしょうか。

そんな「普通の学生運動部団体」に所属している人ですが、もし各団体に平均2名程度のスタッフがいたとしても、その数ざっと10万人くらいにはおよぶことになりそうですね。


おおよそ、監督やコーチといったスタッフはOB会からの指名によって任命されて、任期4年などで従事されることが多いように思います。任期は団体によりけりかと思いますが、ボランティアでやる以上、ずっとやるというよりは期間を区切って回していく形ですね。

結構この役、回ってくると「結構大変…」と感じる方も多いように思います。実際結構大変です。例えば平日は会社員として仕事をする傍ら、その業務前後に部員からの相談を受けたり、週末は家族との時間も必要なのに、それはいったんさておいて現地にいって直接みてあげたり、話をきいたりなど。

相談もトレーニングメニューや試合に向けた作戦会議など前向きなものであれば良いですが、中には「誰々が辞めそう」、「誰々が練習にこない」といったネガティブな課題解決に向けたものも少なくなく、深刻な相談になったりなどして、それなりにエネルギーを持っていかれることもあります。ただでさえ、本業や家庭のことで疲れているのに、それ以外の時間でもそんな悩みを抱えることになるわけなので、まぁまぁストレスです。中身もそうだし、時間のやりくりが結構大変。


ただ、私は、それでも「若い人にほど、少し無理してもやってほしい」と思っています。その理由のひとつが「運動部にスタッフとして関わることは人としての成長になる、社会に役立つ力がつく」と感じるためです。

学生の頃に何らかの団体に所属をしていると、学年があがるにつれて、役職が与えられたり、仮に役職が与えられなくても先輩として後輩の面倒を見る役割になりますよね。入部して、ものの1年、2年でそのような役割になります。この時、「チームをどうやって強くしよう」であったり、「どうやったらみんなうまく動いてくれるだろうか」などたくさん悩むと思います。

ところが、社会に出るとこれがなかなかすぐ経験できません。会社員として入社した場合、普通は1年目は仕事を覚えるところから始まります。シニアな先輩についてまわって、見聞きして覚える、上司の指示で何かをやる、、などです。2年目、3年目でようやく会社や社会の仕組みがわかってきて、自分でいろいろと動かせるようになってくる、でもまだこの時の時点では自分のチームに後輩などは入って来ないことも多く、ましてやチームを持つなどということは稀です。そうしているうちに、学生の頃に身に付けたチームマネジメントの力であったり、大局を見る視座が失われていきます。

逆に、私は会社員になったあとも(厳密にはなる前から)ずっと運動部にコーチとして関わり、チームマネジメントや人を動機付けする力を養い続けることができました。これは特に狙ったわけでもなく、たまたまです。実際に、自分自身は社会人の9年目に自分でチームを持つことになりましたが、部下の動機付けやチームの動かし方などでは周囲と比較して悩むことは少なかったと思います。むしろ得意、好きな領域になっていました。履歴書の備考欄に書く程度の経歴ですが、運動部にスタッフの立場で関わることは人材としてのアピールの1材料にもできるでしょう。若い人と関わり続けて、そのトレンドも追っかけられるのも大きいですね。


また、「若い人にほど、少し無理してもやってほしい」の2つ目が、学生スポーツが盛り上がることは、日本の競技力をあげること、日本を元気にすること、身近な人に勇気を与えることにつながる、社会貢献になるためです。

去る2021年にはTOKYO2020がありました。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、その開催是非は賛否両論がありましたが、その議論はさておくとして、実際に開催されると、その勇姿に感動を覚えたり、パワーをもらった人も多いのではないでしょうか。

あの場で活躍する10代、20代の人たちも何らかの団体に所属し、それぞれの指導体制の中で育ってきたはずです。結果、日本に多くの感動を与えたと思います。TOKYO2020を見て、将来スポーツ選手になろうと志した子供もいるかもしれませんし、感化されてもっと頑張ろうと思った大人も少なからずいるでしょう。五輪ほどの大きな大会でなくても、ゼロから少しずつ積み重ねた選手が何らかの大会で活躍する姿を見ると、感動する人も多いと思います。

そのように、スポーツに関わることは、結果他人の人生に間接的に影響を与えることになるのです。これは社会への貢献だと思います。こういった活動をしていると人に感謝されることも多く、人生が充実します。こういったところに喜びを感じれる大人になりたいとしたら、やってみる他ありません。


さて、ここまで「普通の学生運動部団体」のこと、指導の簡単な実態、スタッフをやる意義について簡単に書いてみました。

ですが、実際スタッフを楽しくなってくるのは結構先です。任期が4年などのところもありますが、私自身の経験では、7〜8年はやらないとなかなか楽しくはなってこなかったです。私も始めてしばらくは、全然うまいこといかないことだらけでした。正直、全然楽しくなくて、できることなら早く辞めて誰かに引き継ぎたいと思っていました。

振り返ると、これは当然かなと思います。なぜなら、そもそも大学生を指導する場合、初めて受け持った1年生はその後3年で引退を迎えることから、1年生の頃からどのような指導をしたことで最終的にどうなったか、、といった検証にそれだけの時間がかかるためです。その反省を踏まえて次の新入生をどうしよう、、といったことに進める場合、またさらにそれだけの時間がかかりますよね。

私が途中で辞めなかったのは、たまたま任期がないチームだったからです。(笑)自動的に辞めるシステムがなく、そして引き継ぐ目処もなかなかたたないし、引き継ぎ先を探してくれるOB会の役員なども存在しなかったので、結果成り行きで続けてきてしまったというのが本音です。(笑)まぁでも、今だから「やってきてよかったな」と感じます。


私は運動部団体にスタッフとして関わる方に、是非「楽しんで」欲しいと思っています。スタッフが楽しんで適切な指導ができることこそ、スタッフ自身に学びも多く、そして学生がイキイキと活動ができて、競技力に繋がって、多くの人に感動を与えられると信じているからです。

私自身は長年やってきましたので、「普通の学生運動部団体」を指導する皆さんが、少しでも楽しんで取り組まれるよう、これまで学んできたことをできるだけ今後も書き綴っていこうと思います。

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