声帯ポリープとクッキー

お盆明け4日目。

数日前に声帯にポリープができてしまい、つい昨日までまったくと言っていいほど声が出なかった私は、職場で1ミリも役に立たない存在だった。

電話に出られない、電話をかけることができない、レジにも入れない。ただひたすらPCに向かって文字入力をしていたのだが、仕事柄、文字入力作業ってそんなに多くないからすぐに手持ち無沙汰になってしまう。
そのあいだ、同僚や上司が私の代わりに電話応対をしてくれたり、本来私が入るはずだった時間帯のレジシフトを代わってくれたりしたのだ。
いくらなんでも申し訳なさすぎて...さすがに職場のみんなに差し入れを...と思い、シャトレーゼでクッキーが沢山入ったいわゆる菓子折りというやつを買った。

あんまりかしこまった感じや申し訳なさを全面に出すのも嫌だったので、「よければお召し上がりください」とメモをつけて事務所にさりげなく置いてみる。
結果、24枚あったクッキーは瞬く間に無くなった。自分の差し入れたお菓子がすぐに無くなるってこんなにうれしいんだな、となんだかほくほくした気持ち。

さて、なぜ声帯にポリープができてしまったのかというと、簡単に言えば「歌いすぎ」が原因である。
難しく言うのが難しいくらい、理由はただの「歌いすぎ」でしかない。

お盆休みに家族で那須へ旅行したのだけど、その行き帰りの車の中で長男とめちゃくちゃに歌いまくった。ほんとうにたのしくて夏休み最高!って感じで。
旅行から帰った翌日、家で保育園の友達家族と共にご飯を食べながら喋っていた時だった。みるみるうちに声が出なくなってしまったのだ。
さらにその翌日、お盆休みが明けたので耳鼻科に行ってみたところ、声帯ポリープが発覚。
飲み薬と吸入で治る程度のポリープというのが不幸中の幸いだった。

職場では、「大丈夫!?どうしてポリープができちゃったの?」ともういろんな人に聞かれたのだが、もちろん「歌いすぎちゃって。」とは口が裂けても言えない。
「なんか原因不明で。こんなことってあるんですねぇ。」と神妙な顔を添え、声にならない声で返してみた。
なんだか嘘をついてるみたいで、余計に申し訳なさがふくらむ。そういう経緯があり、シャトレーゼに駆け込んだというのが本当の理由だ。

声帯ポリープ発症から6日が経った今日は、かすれてはいるけれど低い声がかすかに出るようにまで回復していた。

寝る前に、長男にせがまれてポケモン図鑑を読み上げる。低く轟くような声で読むテツノワダチについての解説。図鑑の中に佇むテツノワダチは、なんだかいつもより強そうにさえ見えた。
ああ。明日起きたら声が治っていますように。

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