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きみえの読書#19

『獅子座の女 シャネル』 ポール・モラン

~いいなと思った箇所の書き抜き~

P22
 あたしは、なんにでもノンと言った。それは、ひたすら、愛されたいという、新しい生命の欲求からほとばしり出る結果だったのである。

P23
 あたしは本をむさぼり読んだ。ロマンティックな材料にはことかかず、あたしの心の奥を豊かに色づけてくれた。

P46
 あのころのあたしはいまよりずっと利口だった。体つきも、ものの考え方も、誰にも似ていなかった。孤独を愛し、真の美や直感を愛した。
ちょっとしたきれいなものなどには目もくれなかった。いつも本当のことを言い、はっきりした自分の判断を持っていた。偽物はあたしにとって悪そのものだった。

P75
 雪は無邪気で気害な人を隠すようにすべてを包み隠してしまう。

P81
 忠告されるのもきらい。それは頑固だからではなく影響される性格だからである。
第一、他人が与えてくれるものにはしょせん、おもちゃや医者、忠告のたぐいでご当人にはぴったりかもしれないが、こっちにとっては必ずしもそうではない。

P106
 美というものはわざとらしさがあってはいけない。たしかに、美は一夜漬けでならえるものではない。けれどもそれがなんであるかを体験でわかったときには、その人の肉体の美はもうとっくにどこかへ行ってしまって ない。

P109
 大切なのはそれがいいかどうか見分ける力をつけることだ。
女たちが失うのは美しさを学ぼうとして自然の美しさを失ってしまうことなのだ。
女は体を美しくする方法については話すことがあっても精神上の美しさについては全く忘れてしまう。
美容とはまず心の美しさから始めなければ化粧品なんてなんの役にもたたぬものだ。

ちゃんとした精神のあり方、魅力的な押し出しのよさ、趣味、直感、人生のあり方、内在的感覚、こういうものはみな、自分の体験によって学ぶことなのだ。
それは質の問題であり、教育でかえることはできない。

P158
 シンプルということは、裸足で歩いたり、木靴をはくことではない。精神からくるもの、心から生まれてくるものをいう。

P176
 富は蓄積ではない。全く反対である。あたしたちを解放するためにあるものなのだ。

P177
 受け取るよりは、あたえることのほうが、はるかに、うれしいものだ。
それは仕事にかぎらず、恋愛においても友情においても同じことだ。

 ものを買うのは大好き。ただ、買ったあとで、所有し、執着するのは醜い。

 とにかく、あたしのきらいなことは、所有すること。本でも置物でも、そこに置いてあるとせっかく使った金をもう一度みるようなものだ。

P202
 もしこの若い女たちが、自分たちの真珠を母なる海の波に返すことができたら、どんなにもっと美しくなるだろう。

 欠点は魅力のひとつになるのに、隠すことばかり腐心している。欠点をうまく使いこなせばいいのだ。これさえうまくゆけばなんだって可能になる。

P250
 神さまがあたしにくださったいちばんすばらしい才能はあたしを愛さない人間はあたしも愛さなくていいということを許してくださったこと。
そしてまた、愛の共通の感情のひとつである嫉妬心というものを知らずに放っておいてくださったことかしら。

P256
あたしはきめたんです。
近頃さかんにいわれ、つくり出された“幸福”なんていう日常的な毒薬なんか必要としないで、しあわせであろうと。

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