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世界の水産業

日本食と言ってすぐに思い浮かべるのは寿司です。
今でこそ肉の摂取量の方が多くなっていますが、日本は海洋国家なので、かつては動物性たんぱく質のメインは魚でした。
世界の魚介類の消費や取引はどのようになっているのか、データからみていきましょう。

世界の漁獲量

世界の漁獲量を種類別にグラフ化しました。元データはこちらです。

海面漁業:海で行われる漁業
内水面漁業:川や湖など淡水で行われる漁業

年々、漁獲量は右肩上がりですが、その増加は養殖業の収穫量によるものであることが分かります。漁業の漁獲量自体は1980年代後半から横ばいになっています。

国別漁獲量

では、国別の漁獲量をみてみましょう。

1990年までは日本の漁獲量が最も多くなっていました。それ以降は入れ替わるように中国の漁獲量が増えています。ちなみにペルーの漁獲量が安定しないのは定期的にエルニーニョ現象の影響を受けているからです。

国別養殖魚の収穫量

養殖業の収穫量を国別にみてみます。

中国とインドネシアの伸びがすごいです。中国は世界の収穫量の60%近くを占めています。実はこの養殖魚の多くは、コイやフナなどの淡水魚です。中華料理では淡水魚が多く用いられるので淡水魚を中心とした養殖がさかんになっています。

そういえば昔、ふらっと入ったアメリカの中華料理店で、メニューがよくわからず注文した魚料理が、でっかいコイの煮つけでした。あまりの大きさにびっくりしました。またアメリカの中華系スーパーには、大きな水槽にコイやフナが泳いでいました。淡水魚は日本では普段食べないので、食文化の違いを感じる経験でした。

インドネシアでは主にエビの養殖が行われています。これがマングローブ林の破壊につながっているというニュースはよく聞きますね。エビの養殖は淡水と海水が混ざり合う汽水で行われるため、マングローブを伐採して養殖池を作ったのが原因です。日本も主な輸入国なので他人ごとではありません。

魚介類の消費量

魚介類の一人当たり年間消費量を国別にみてみます。データはこちらからもらいました。

海洋国である日本、ノルウェー、韓国が高いですね。世界的には増加傾向にあるのですが、日本は2000年以降減少しており、2006年に韓国に抜かれています。日本が肉食に移行していることを示すデータです。
そして中国の一人当たり消費量が1990年以降激増しています。中国の人口から考えると、総消費量の伸びは相当なものとなっています。

魚介類の取引

魚介類の輸出入はどのようになっているのでしょうか。データはこちらからもらいました。

まずは輸入から。

世界の輸入量はここ10年で倍増しています。
また1国としては、中国の輸入量が一番多くなっています。しかも年々増加傾向にあります。

輸出はどうでしょう。

輸出も同様に世界的に急増しています。そして1国としては中国が1位ですね。中国は輸出入ともにトップです。

これらのデータを、各国の2019年での輸入額から輸出額を引いた金額でお示しします。赤の国が輸入超過で、青は輸出超過です。

日本は大量の魚介類を輸入していることがわかります。一方で中国は差し引きで見るとわずかに純輸出国です。

日本の漁業従事者数

日本の漁業従事者の推移を見てみます。データはこちらからもらいました。

当然のことながら右肩下がりで、1961年には170万人いた漁業就業者は、2021年には10分の1の17万人になっています。

年代別・性別の就業者数をみると高齢化が一目瞭然ですね。

まとめ

水産資源がどんどん減ってきている現代は、とる漁業から育てる漁業にシフトしています。育てる漁業には、養殖業と栽培漁業があります。

養殖業:卵や稚魚から成魚まで一貫して人間が育てる
栽培漁業:卵から育てた稚魚を放流し、育ったものを捕獲

経済成長に伴い、漁獲量、輸出入のどれをとっても中国が急増しています。一方で日本は魚介類の消費は減っています。しかし、世界的にみると、単一国としては大量の魚介類を輸入しています。

水産業は、環境破壊や水産資源の枯渇・それに伴う生態系の異常など、確実に自然環境に影響を与える産業なので、サステナビリティが重要なテーマになります。養殖業や栽培漁業が増加しているのもその表れです。

日本の漁業従事者は伝統的に子が親の仕事を継承してきました。しかし、近年は産業の多角化で子供が後を継ぐということが少なくなり、漁業就業者は減少し高齢化が進んでいます。それを埋めるように外国人労働者が入ってきています。

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