1月24日(巣ごもり17日目) あれから一年と一日

とにかく忙しいです。この時期は大学人が一番忙しい時期だ。年度末と学期末、卒論研究と修論研究の最終段階、入学試験(共通テスト、本試、学部編入学試験、博士課程入試など)、学務とは関係がないけれども論文の査読、論文の執筆、各種イベントなどなど。

そういう本務にかまけているうちに、肝心なあの日を見落としていました。というか、あの日は明日だと思っていたら、昨晩、テレビをつけたら「武漢封鎖から一年」というニュースでした。一年前の出来事が嘘のように町は平穏を取り戻し、人々は旧正月の準備を始めているようです。そういえば、一年前は旧正月前の大きな饗宴が感染爆発の一因だったと言われていましたね。街は活気を取り戻し、最近、人気だという台湾初のドリンクショップには長い列ができていた。ある小母さんはインタビュアーに向って「今では、マスクをしなくても出歩けるようになりました」と嬉しそうに語っていた。本当かな?他の人はみんなマスクしているよ。それはともかく、東京や日本のどこよりも安心して過している様子はわかりました。まずは武漢のみなさん、おめでとうございます。

肝心のあの日とは一年前、正確には一年と一日前の1月23日。そう武漢封鎖の日のことです。ぼくがこの感染症のことを耳にしたのは大晦日だったと思います。紅白歌合戦が始まる前のニュースで報道があったんじゃないかな。なにやら中国で未知の感染症が問題になっているとかいう内容だったような気がします。武漢という名前を記憶していたのも、かつて在籍していた中国人の研究員が武漢の出身だったからです。とはいえ、年が明けるとすこしずつ詳しい情報がはいってくるようになり、徐々に揃え、アルコールを買いました。

どうして、この日のことを1月25日と勘違いしていたかというと、武漢日記が1月25日から始まるからなのです。一年前の出来事、日本での出来事、そして今の自分の身の回りを見比べながら日記を書いていこうと思っていたんです。それで一年前といえば、あの武漢封鎖。その封鎖を文筆家が主にネットを通して見聞きして記した作品が武漢日記です。

それにしても武漢の封鎖と、その後の中国全土にわたるウイルスの制御は見事なものでした。翻って、日本も欧米諸国も情けない対応となってしまいました。政治体制、人権意識の違いも重要ですけれど、それだけで片付けてはいけないように思います。

ユヴァル・ノア・ハラリは「サピエンス全史」の最終章でまもなく人類はウイルスに勝利するようなことを書いていたと思います。m-RNA ワクチンのワープスピード開発が達成できたのですから、その見方は一面で正しいでしょう。でも、一方で今世紀にはいって SARS (2002-2003), MERS (2012-)、そして昨年以来の COVID19 (2020-) と人類は次々に新型感染症に教われています。COVID19 の対応が済めばそのあと安心ということはないでしょう。これまで、ぼくらは中国を源泉とした新型感染症に襲われていますが、中国のかつてない経済発展の勢いと無縁ではないでしょう。やがて、経済発展の中心が南アジア、南アメリカ、アフリカへと移れば、その都度、地球は南アジア、南アメリカ、そしてアフリカからやってくる強力なウイルスとの戦いが始まるのでしょう。経済発展のうねりが地球全体を一巡して始めて、人類とウイルスとの共生が訪れるのでしょう。

つまり、ぼくには COVID19 との戦いではすまないように思われるのです。これをわれわれは貴重な学びの機会とし、今後、訪れるより強力なウイルスとの遭遇に備えるべきだと思うのです。今のところ西欧諸国がすがっているのは、ワープスピードで開発したワクチンを数年単位で接種して集団免疫を実現することなんですが、もっと「賢い方法」を探せないものかと思ってます。その意味で、中国での感染拡大制御を学びたいのです。

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