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後期高齢者の窓口負担2割増加を考える

政府は22年後半から年収200万円以上ある75歳以上の後期高齢者の窓口負担を1割から2割に引き上げる。今後、少子高齢化が一気に進む中、現行の社会保障制度を維持することは難しく、負担増に踏み切るもの。

高齢者からの反発はあるが、当該決定で今後の社会保障制度が維持できるとは考えづらい。健康保険組合存続の観点から考えてみたい。

大企業の従業員が加入する健康保険組合の財政悪化が進み、ここ10年間で約半数の健保組合が従業員負担割合を引き上げ、企業分の割合を下げていることに加え、高齢者医療費を支える拠出金の増加で保険料率も増加している。保険料料率と負担割合の上昇により、家計には二重のしわ寄せがいき、賃上げ効果をそいでいるのが現状である。

コロナ禍の影響を受け、企業収益が悪化する中、健保組合の財政悪化は止まりそうにない。高齢者医療費負担増加を補うための保険料率の引き上げも限界に近づきつつあり、行きつく先として解散に踏み切らざるを得ないケースが出てくる。

保険料から支出する高齢者医療費の金額が膨らみすぎて健保組合の持続性が低下している。後期高齢者への窓口負担引き上げだけでは効果が薄く、後期高齢者の過剰受診を減らしたり、窓口負担のもう一段階の引上げ等を進める施策を行うことに加え、前期高齢者への拠出金も現状の60~70歳から70~75歳に見直すことも検討せざるおえないだろう。

健保組合が解散となると加入者は協会けんぽ、国民健康保険に入ることになる。同協会には一部税金が投入されており国民負担の増加につながる。又、従業員にとっては保険料の増加を抑えられるメリットはあるが、健康保険や付加給付などの健保組合独自のサービスを受けれなくなるデメリットも生じる。

どちらにしても、社会保障制度が現行のまま進むとは考えにくく、高齢者、若年層とも更なる痛みを分かち合う必要がある。