見出し画像

半導体不足にみる自動者業界

新型コロナウィルス感染拡大で2020年春先に大きく冷え込んだ自動車業界だったが夏以降米中2大市場を中心に新車販売の需要が大きく回復したため、各自動車メーカーは一斉に増産へと舵を切った。

それに伴い、半導体需要も大きく増加するが、半導体は生産に約3ケ月を要するため、供給の正常化には約半年近くかかる可能性があるといわれている。半導体の需要に供給が追い付かない事象は今後も続きそうだ。

半導体不足の要因がもう一つある。スマートフォンやパソコン需要の増加、IT化の流れによるデータセンター等でのニーズ拡大により幅広い業界から半導体の発注が増加している。

従来、自動車産業は産業ピラミッドの頂点に位置する存在で、部品や素材の供給会社に対して優位な立場にあり、価格や納期などの交渉でも主導権を握ってきた。しかしながら、車向けの半導体は単価が安いわりに、安全確保の観点から品質などの要求水準が高く、半導体メーカーにとっては利幅が薄く、優先順位が低くなってきているという指摘もある。

EV化や自動運転等、自動車業界もソフト分野のウェイトが高まりつつあり業界を超えた半導体生産能力の奪い合いは熾烈さを増す。完成車メーカーを頂点とする日本の「ケイレツ」というサプライチェーンがIT化の流れの中、崩れつつある。自動車業界は技術革新に加え、安定調達という課題の解決も進めていかなければならない。