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イラストレーターの知的資産(インタンジブルズ)である作風・画風・絵柄の人格権と価値

機械学習の飛躍的な進化


AI (DeepMindのAlphaGo) が世界の囲碁チャンピオン(柯潔九段(中国))に勝利したのは2017年。まだ人ごとだった。

2023年のChatGPT 4は人間と会話しているような知性や受け答えで、文脈を指定しての翻訳能力も高かった。プログラムや表計算の関数も書いてくれる。文章の要約も上手い。キャラクターに応じた書き換えもしてくれる。

言語やコードを使う単純な知的労働はコンピュータにお願いできるようになった。2023年現在、金融や会計でコンピュータを使わずに伝票と電卓で仕事をすることはもはやできないような、そういう変化が、言語やコードで発生していく。

比較的、ChatGPTは歓迎していた。ChatGPT 4が出現するまで生きのびて良かったとすら思う。しかし、追い切れていない分野で、非道いことが起きていた。生成AIによる人格権の侵害だ。

生成AIによる人格権の侵害

特に、一人のイラストレーターの作品群を学習することで、そのイラストレーター風の画像を機械的に大量に生成できてしまう事象が生じている。

もちろん、構図の模倣は古くから存在している。模倣者(弟子)は、その模倣による作品を弟子の名前で公表するのであって、師匠の名前を勝手に許諾無しに使って師匠であれば得られる対価を得たりはしない。

生成AIの非道い事例を知りたいなと、つぶやいてみたら、沢山の事例を教わることができた。ありがとうございます。

イラストレーターの人格権を損ない、経済的利益を奪う非道い事例集

リプをいただいた情報や、そこから探した情報や、リプでは無く見つけた情報がある。
https://twitter.com/ookamiriru/status/165666880537510298


https://twitter.com/ookamiriru/status/1656668805375102980

https://twitter.com/Moseley2333/status/1679917893675540480

LoRAについて

知名度のある絵柄

細川成美さんの「知名度のある絵柄」という言葉が、私の中の閉塞を破り、次にしていくべきことをイメージさせてくれた。知的財産法は、「有名であること(周知・著名)」に価値を認めてきている。その歴史に、この新しい生成AIの絵柄複製を位置づけていけば、共感者が増えるかもしれない。
過去の裁判例と結びつけるきっかけを得ることができた。

この絵柄、作風や画風という、イラストレーターが自らの指と手と目と頭と心で創り出してきた本人が本人であることを示す知的な資産を、機械的に複製できてはいけない。作風や絵柄を機械的に複製し、その絵柄の(不完全な)イラストを、本人の許諾なく生成できるようにしては、いけない。

ある作品が完成したかどうか判断する権利は、人格権であり、著作権法では公表権の一部であり、その作者だけが持つ。文化を育むために必要な社会のルールである。

ちなみに、他者が、その指と手と目と頭と心で模倣・追従して学ぶと、それは異なる知的資産を生み出す。生成AIは、新たな知的資産を生み出す人間の文化的な活動ではない。機会学習のための模倣が許されるべき理由はない。

https://twitter.com/mikan_spi/status/1612197073545474050

「絵柄に権利はありませんよ」リプ問題

まず前提として、実名や、匿名でも特定のアカウントから、声を上げづらい現状を確認しておきたい。

報道対応などすると、誹謗中傷が集まってしまう様子。

きつそうである。

さて、「絵柄に権利はありませんよw」リプは、最初に見かけたとき、衝撃的だった。

2330万9千回も表示されている。なぜわざわざ、金額や絵柄複製のAI生成物を本人にリプしなければならないのか、その歪んだ精神を想像するのさえ非日常的な汚さに巻き込まれる。

このjcom氏の非実在や、金額部分の画像修正の可能性が指摘された。

https://twitter.com/cat_detect_ai/status/1682901257760149504

jcom氏が虚偽の情報で悪態をつくのは、戦史では偽旗(ファルス・フラッグ)作戦のようなもので、そのような仕掛けをすることを想定できなくはない。もちろん、そのような回りくどく実害も発生させるやりかたは推奨しない。

いずれにせよ、荻poteさんに嫌がらせのリプが届いたことは事実だ。

未完成品を勝手に公開されてしまった事例


 数ヶ月前、そのような事例を見かけた記憶があるが、その記憶のものは再発見できなかった。

 違う事例に気づき、追いかけて整理した。

直訳すると「泥棒は未完成の原神インパクトのファンアートを盗み、AIを使用して完成させ、その後、元のアーティストのクレジットを要求しました。」

Genel Jumalon氏のツイートに、泥棒で、アカウント削除されているmusaish氏のスクショがある。

根源は悪質な企業

味方を探す

著作権法30条の4、47条の5は存在するが、そこから見直そうという議論になったとき、味方になりそうな主体が増えている。海外の動向も追い風である。

https://twitter.com/MAHhaesanhyeong/status/1658773136345817089

今回、一番力強い意見は、読売新聞社だった。生成AIで作風・画風や絵柄自体の機械的な複製が容易になった現在、著作権法の解釈や改正だけで、イラストレーターの人格権を保護することはできない。
読売新聞が、社説で、AIの過度の活用について、基本的人権や個人の尊重という憲法的価値観に言及してくれている。
もちろん、新聞記事や写真の保護の意図はあるだろうが、AIの過度の利用という、広めの問題提起をしてくれている。

理解のない矛盾した人たち

https://twitter.com/webdesigner_mr/status/1682360832699809792

東京都教育委員会は、ChatGPTを中心とした生成AIについて、小中学生や高校生に使い方を注意し、著作権侵害に留意すべき旨を指導している。

https://www.ita.ed.jp/weblog/files/1320134/doc/80579/506524.pdf

しかし、パンフレットに、生成AIによるイラストを使っている。無邪気のような、無意識のような、このような人たちが、生成AIによるイラストを広めてしまう。

https://twitter.com/webdesigner_mr/status/1683351766270873601

要望と今後

色々と情報収集や観察・洞察をして、次のように考えを整理できた。さらに深めつつ、働きかけや、普及活動をしていきたい。

[1] 国や地方公共団体の公表物へ生成AIの使用禁止。
 公的な機関は、生成AIであることの表示義務等が法定されるまで、生成AIイラストの使用を避けるべきである。
 何らかの理由で使用をする際には、公表物に、生成AI使用と、民事上・刑事上の責任者を明示するとともに、事前に議会の承認を得る手続を義務化すべきである。議会の承認を手続とすることで、幅広い議論を導くことができる。

[2] 著作権法に過度に依存しない法体系の整備。
 今後の法体系の整備では、著作権法のみで人格権や経済的利益の保護と利用を図ろうとするのでは無く、不正競争防止法の活用や、AI新法など、多様な法制度とすべきである。その際、憲法的理念に沿った人格権の保護に重点をおかなければならない。
 不正競争防止法等の活用では、絵柄に化体している信用や個性を他人が許諾なく使用する事実に着目すると良い。知名度のある絵柄へのフリーライドを防止しなければならない。

[3] ホットラインを導入すべき
 絵柄の模倣により人格権がおびやかされたり、経済的な損失が発生した場合のホットラインを公的に準備すべきと考える。人格権を脅かすデータを公開するサイトやWebサービスに、削除の対応を要求できる窓口を設置させるなど、国家や団体から働きかけることができると良い。
 LoRAのデータ削除要請に応じてくれた例が報告されており、すべての事業者にそのような対応(人格権を脅かすデータの削除対応)を求めたい。

生成AIによるディープ・フェイク・ポルノの被害や、声優の音声を学習されて発話を自動生成され、追加の依頼がなくなってしまうような、被害がわかりやすく、共感を直接的に集めやすい被害と比較して、生成AIによる絵柄や作風・画風の機械的な複製は、わかりにくいところがある。

だからこそ、私はここに焦点をあてている。


(2023年7月31日に、読み手の負担を増やさない程度に引用を追加し、誤解を招きやすい自分の表現を修正しました)
(9月6日に、削除されていたXポスト (旧tw) を削除し、必要な差し替えをしました)
(10月26日に、削除されたり非公開となったXポストの引用を削除しました。また、誤記を修正しました)

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