Post After MAD

割引あり

MADとは

米ソ冷戦下において、MAD (相互確証破壊、 Mutually Assured Destruction) という概念がありました。米ソのどちらからでも相手に対して大規模破壊を目的として攻撃をした場合、報復により結局どちらも大変な被害を被るというものです。あるいはそれをわかっていてでも攻撃をするという場合や、あるいはだからこそ抑止力が必要という考えも含んでいました。

After MAD

1985年にMITにて Tad Homer-Dixson と Kevin Liveau が、科学技術が発展しミサイルの精度が上がるなどの理由により、MADとはならなくなった場合を設定可能とした After MAD が考案あれ、実験が行なわれました。After MAD は、概ね囚人のジレンマに用いられるのと同様の利得表に基づいたものですが、その利得表が時間の経過などに対応し150枚ほどあったそうです。現在、After Madの資料をネット上で探しても見つからないようです。厳密には、ないわけでもないのですが。

このAfter MADに関する資料として現存するのは、A. K. デュードニー著, 山下秀記監訳の、日本では1989年に出版された "別冊サイエンス コンピューターレクリエーションII 遊びの探索" に含まれる "「アフターMAD」: 囚人のジレンマに陥る核戦略コンピューターゲーム" 、およびその原著と各国語翻訳版のみではないかと思います。そのような学術的な原著があるなら読み取ったものもあるのではと思われる方もいるかと思います。たしかにあります。ただし、OCRで読み取ったものをそのままネットに乗せているようで、正直文字への変換精度が悪く、はっきり言って読めません。読める断片から、おそらく上記の記事ないし論文を読み取ったものではないかと推測できるにすぎないという状況です。この状況はいずれ改めて改善される可能性はありますが、現状では事実上、その本や元となったScienceの号を持っている人以外には内容を伺うこともできません。いえ、持っていたとしても、150枚の利得表の詳細は不明で、その記事ないし論文とそこに例示されている5枚の利得表が、After MADがどのようなものであったかという雰囲気を知るための残された資料です。

では、After MADは失われていい知見なのかという疑問もあるかと思います。手元にある雑多な資料の中にも、同様に、これは失われていい知見なのかというものが多数あります。雑多な方はまだまだこれから考えることとしていますが、とりあえず After MADは、少なくともそれが存在したことは伝えなければと考えました。それは、冷戦下がどのような状況であったかを伝えるものであるとともに、そこからさらに新しい要素が世界に生まれているからでもあります。

Post After MAD

さて、このAfter MADからどのように発展させるかはいろいろな方向があるものと思います。私自身、After MADの方向に則り、かつ新しい要素を加えたものとしてPost After MADの利得表を数年間弄り倒してきました。しかし、新しい要素を加えたことと、制作方法により、はっきり言ってPost After MADの開発は順調ではありませんでした。制作方法は表計算ソフトを使って利得表を作っていましたが、これが一覧性が悪い。150枚に匹敵する枚数の利得表を作るのは最初から諦めており、できたとしても50枚が限界だろうと考えていましたが、正直無理でした。1985年の際には、私個人の想像ですが、利得表を壁に貼ってでもいたのではないかと思います。むしろその方が一覧性がいいですし、利得表間の関係もわかりやすいと思います。そして、それは修正が容易でもあったと思います。

そこでちょっと別のゲームを作ろうと思い、ヘクスカードを米アマゾンを探して見ていた時です。いっそのこと利得表はなくてもいいのではないかと考えました。ヘクス、つまり6角形… 辺が (あるいは角がでも構わないのですが) 6つあれば、状態の変化であったりあるいは得点を示すには十分ではないかと考えました。そこからは、After MADに追加していた要素の分のヘクスカードを使うとして、さっさと組み上がりました。振り返って考えてみれば、もともと囚人のジレンマをある面で発展させただけの After MAD に、要素を付け加えすぎていたのも、制作が難航していた理由でもありました。それにより個々の利得表の視認性も落ちていましたし、利得表の一覧性にも大きな影響を与えていました。

その試作を「カードショップサトPin」様主催のテストプレイ会に持っていたところ、概ね予想したとおりの進展となりました。ただ予想外だったのが、「交渉は自発的に始まるだろう」と考えていたのですが、それが起こらなかったことです。そこで、交渉を勧める文言を追加することを1番の変更点とし、交渉の要素となるだろう要素を追加し、最後には振り返りを行なうこととしました。

振り返りとはなんなのかと思われる方もいるかと思います。 Post After Mad は、ゲームであるとともにゲームではありません。結果としての勝敗はありますが、勝敗を決めるためのゲームではありません。ですので言い換えましょう。 Post After MAD はゲームであるとともに実験です。誰のどのような行動により、どのような影響があったかを振り返ることもゲームの重要な一部です。

このようにしてできた Post After MADは、以下のページよりダウンロードできるように公開します。

P.S.

その他雑多の、失われていいはずがない知見の中には、ゲームにはできないもの、ゲームにはしにくいもの、あるいはアナログゲームにはしにくいもの、そしてむしろアナログゲームにしやすいものなどがあります。これらについて今後どうするかは未定です。正直言ってしまえば、私にそれらを誰かに伝える責任があるわけでもありませんし。ただし、ゲームとは別に、若干UPPP@大月の方で拾っているものもあります。

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