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提示された季節

春は何処までも残酷な暖かさを殺していく。あなたもそれを実感しているでしょう、言葉にしないだけで。

意味不明な数字の羅列を飲み込んで、満足ですか?
耳をすませば、走り出した列車の汽笛が心を満たしていくだなんて、ロマンしか感じません。

日々揺れているのは滑稽なヒビで、その割れ目から吹き出す穏便な風景は、もはや芸術家も脱帽です。

病院の待合室ではぐれた記憶は、きっと何処かで泣いているでしょう。早く見つけてあげましょうね。

思い出したかのように、加湿器からの水蒸気をあおぐのは、もう止めようと思います。きっと見知らぬ誰かが笑うでしょうから。

印刷された紙に描かれた月日は、既に手遅れなのです。

おいで。

おいでなさい。

この悲しみはもう、あなただけの問題ではないから。



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