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水通しについて

葛布の帯のお手入れの方法について書いたページでは、水通しについて言及しています。

帯ですから、基本的にはそれほど頻繁に洗う必要はないと思いますが、ちょっとくたびれてきたな、とか、汗をたくさんかいた時に締めたな、というような時には、シーズンオフ前に、一度水を通してから仕舞うと、スッキリします。

気をつけていただきたいのは、制作者として責任を持って言えるのは「水通し」ができる、という点で、「洗剤を使って洗えます」とは言っていない点です。色や素材への影響の心配がありますので、市販の洗剤や石鹸などをお使いになりたい場合には、ご自身のご判断と責任において、まずは目立たないところでお試しください。


ところで、私の感覚では「水洗い」と言えば、「洗剤を使わずに水またはぬるま湯だけで洗う」ことですが、「水洗いができる=洗剤を使って水で洗える」と解釈されることが、どうも多いようです。

そこで調べてみました。

コトバンク

コトバンクでは、「洗剤などを使わずに水だけで洗うこと」と定義されています。

しかし、クリーニング界においては、「ドライクリーニング」に対する用語として「水洗い」を用いており、「洗剤や溶剤を使って水で洗う」こととされています。

ご家庭では、洗濯と言えば必ず何かしらの洗剤を使うことが当たり前となっている昨今です。「水洗いができる」と聞くと「(洗剤を使って)洗濯ができる」というイメージを持ちやすいのかもしれないと思いました。


そもそも、「洗う」行為に洗剤は必須でしょうか。
油系の汚れは水洗いだけでは落ちないと思いますが、こと、葛布の帯に限って言えば、皮脂による汚れは汚れではないような気がします。

例えば、蔓で編んだカゴやバッグなどは、人の手脂によって艶と味が出てきます。葛の繊維も同様で、人の手脂によって、艶や味が出てくるのではと、私は考えています。葛布の帯が経年によって艶が増す気が私はしているのですが、科学的な根拠は何もありませんが、葛と絹が元々持っている何かしらの油分やタンパク質と、人が使うことによって足される油分のようなものが、少しずつ混ざり合って、深みを増していくのではないかと、感じています。

水通しができますとはいえど、5年、10年、20年と、長期的に考えるならば、その頻度はなるべく少なく、そして洗剤はなるべくお使いにならないようにするか、お使いになる場合には、慎重にすることを、お勧めしたいと思います。

お手元で手入れをしながら末長くご愛用いただけますことを、心より願っております。葛布の帯をお持ちの皆様のお手入れ体験談も、よかったらお寄せください。今後皆様のご参考になるように、私の方でまとめていきたいと思います。


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