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染織αが染織大百科事典となって帰ってきた

札幌に芸術の森美術館というところがある。染織はじめ工芸とも縁が深く、工房なども敷地内に点在する。
そこに、随分昔だが『染織と生活』や『染織α』が並んでいて閲覧可能だったのを覚えていたので、葛布に関する資料を集めたく、宵衣堂 の小野健太さんの編纂した目録(写真右端)を持って行ってきた。

今は本の劣化防止とコロナウィルスの関係で棚には並べられておらず、奥に仕舞われていたのだが、お願いすれば見せてくれるとのこと。劣化が激しく廃棄してしまったものもあるとのことで、あいにく全巻は揃っていないが、それでもいくつかは集めることができた。

染織α、右端が目録


さて、本の発行年はそれなりに古くなってきているが、染織に関するものはテンポラリーなもの以外の技術的なことに関しては普遍的なもの、資料として貴重なものが多いので、内容はもちろん全く古びれない。
私はこの雑誌を2001年1月号から廃刊になるまで切れず購読していたのだが、雑多に埋もれる資料は後で見ることが困難で、初めの頃は付箋などつけていたけれども、その数も膨大になると、ただの飾りと化してしまい、いつしか全く開かなくなった。

それをまとめてくれたのが、この目録である。
今回、この目録を使って調べたのは初体験だったのだが、知りたい情報があっという間に見つかって、ああこれは事典なのだ。

雑多に情報の埋もれている雑誌が、一つのまとまりを持って、大百科事典となっている。染織大百科事典である。それも、見たい視点ごとに並べ替えて見ることができる。目録は紙ベースのデータベースなのである。すごい。

この目録があれば手放さなかったのにと少々悔やまれたが
しかし、私が手放したことがキッカケで、この目録が生まれたと言ってくださるので、
染織αが大百科事典となるのに微々力ながらも役に立てたと思えば全て良し。



それにしても、これを大百科事典だと思えるのには、それだけの記事の情報の確かさ、内容の濃厚さがあるからである。圧巻!久しぶりにゾクゾクして忘我。

「世に出すからには」という気概が記事ひとつひとつ、細部にまで感じられる。これは学術誌だと思った。全部論文なのである。

「世に出すからには」という気概と気合いの入ったものに触れるのは心地が良い。
翻って私はどうだろう。少し反省した。



平日の芸術の森は静かで気持ちよかった。
そこかしこに秋の気配も。
開催中の「北海道の建築展2022」も大変面白かった。

たまごボーロみたいなきのこ コメツブホコリタケっぽい
これ何?



【雪草乃記】vol.19 2022.10.1
〜だいたい毎週土曜朝配信〜

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