見出し画像

2020ウポポイ記

2022.8.6 在学している大学の授業の一環でウポポイを再訪。2年前に行った時「ここはテーマパークだ」という感想を持ったが、それが少し変わった
そのことを書くのはまたいつかに譲るとして、まずは以前書いたものを再掲 ここに残しておく


写真、写っているのは、染織家の吉田美保子さん、友禅染作家の鈴木和美さん、と、私

北海道、ウポポイ。2020年11月末

信じられないかもしれないが、合成ではない

たった一年半前なのに、随分時が経った気がするのは、恐らく時代が激変していて自分の中の諸々も激変しているからだと思うが、長く染織を生業としているお二人と、ウポポイと二風谷を訪ねるという、なんとも贅沢な旅。何をしていても、短い時間を惜しむように、話が尽きなかった。思えば、着物・帯の作り手同士で、着物や帯やそれにまつわる話を、打ち解けてアレコレした経験が、私にはなかったから、夢みたいだった

当時、GoToトラベルキャンペーン中ではあったものの自粛ムード蔓延中でもあったため、方々への影響を考え、この貴重で自慢したい旅の公開は控えたのだが、こんな素晴らしい出会いの旅を埋もれたままにしておくのは、日本の損失だ、とばかりに今、ここに記録として残しておこうと思った

1日目、信じられないくらい閑散とした新千歳空港で待ち合わせ。もちろん私はお二人とは初対面。上の写真の3人の微妙な距離感がそれを物語る

宿泊は、びらとり温泉ゆから。お二人といきなり同じ部屋で寝泊まりするのはかなり緊張したが、1枚目の写真より距離が縮んだようだ

この時期の北海道は天候が安定せず大雪が降ることもあるので、道外から来られる方への事前の服装のお知らせが大変難しい。何しろテイネのスキー場はオープンする時期なのである。寒い中 歩き回るのは辛いだろうと、出来れば暖かい格好をと、かなりお二人を脅す結果となった。しかし、おおむね天気は良く、良かった

平取町二風谷アイヌ文化博物館 併設の「工芸」のチセの前で吉田美保子さんと

美保子さんと並んで写真に写る日が来ようとは!

「チセ」はアイヌ語で「家」の意味

同じく平取。鈴木和美さんと

和美さんは手描き友禅作家

平取ではチセがいくつか点在していて、中で色々されている(説明省略)。10年以上前に一度来たことがあって、随分変わっただろうと思っていたが、施設やパンフレットが新しくなっていたり、全体的に何となく小綺麗になっていた以外は基本的にはそんなに変わっていなくてホッとした。自然も建物もひっそりとしてドッシリとして、人の気配はないのに確実に人の暮らしが「そこ」にある

話が前後した

平取は2日目。1日目に行ったのは白老のウポポイ。行くのは私も初めてだった。ウポポイについて、私はとても複雑な気持ちを抱いていて、だから、完成してからも、どうも行く気になれない、でも一度は行っておかねばならない、その気持ちが交錯して、ついつい後回しにしていた

ウポポイは「国立」なのだ。え?「その国」は、過去にアイヌ民族の文化を、命と暮らしと尊厳を、不当に奪ったのですが、一体どういうことでしょうか?と言いたくなりませんか。私はなります

アイヌ民族と国との関係は、未だ、良い接点が見つかっているとは言い難い。設立に納得できない人、反対する人もいた中で建ってしまった施設を、どう受け止める?子供の頃から薄っすら耳にしていた歴史と差別問題は、私に、(実際に自分が何かをしたという訳ではないので謝罪もできない)解消されない加害者意識を、または、知らずに何かをしてしまっているかもしれないという得体の知れない罪悪感を、植え付けるには十分だった

話が暗くなってしまった

そんな複雑な思いを抱えて、お二人と行ったウポポイは、かなり良かった。想像していたよりずっと良くて、面白かった。

ここは完全に「テーマパーク」なのである。「白老という土地でのアイヌ文化のテーマパーク化」については別の議論が必要だが、純粋に楽しみながら、アイヌ文化を、ちょっと非現実的な空間で体験し、知り、学ぶことは、悪いことではないと思った。それは例えば海外旅行に似ているのかもしれない。自分の現実とは違う世界・文化を、日常から離れて、知り、触れ、思考を巡らせ、そして再び日常に戻る。すると、今までとは違う日常が見えてくる

昨今話題の「ゴールデンカムイ」の作者が、「まずは楽しんで知ってもらいたい。辛い歴史を知るのはその後でいい」というような事を言っていたのを思い出す。暗雲たる気持ちで知るよりも、明るい気持ちで知る方が、きっと良いのだ。

この施設だって、見方によっては国の謝罪の意味に捉えることもできる。失ったものは取り戻せないけど、奇跡的にここまで繋がっているものを、守り、残し、知らせ、後世に繋げていって欲しい、そのための支援をしたい、という願いと謝罪(まぁ・・・かなり肯定的好意的に捉えて、ではあるが)

何にしてもこの施設を否定的に捉えず楽しむ事ができたのは、お二人と一緒だったからに他ならない。お二人それぞれ、当然だが私とは視点が違う。見えている世界も多分違う。同じものを違う視点・違う世界で見て、感想を言い合う。とても楽しかったし、お二人にお会いしていること自体が私にとっては夢のようで 

ウポポイをこんな形で初体験できるとは思っていなかったから嬉しかった

ウポポイ 振り返るお二人。

貴重な時間を割いて北海道まで、はるばるお越しくださって、お会いできて感無量でした。

(※写真は、お二人の了解を得て掲載しています。)

シノッチセ(シノッとは、アイヌ語で「遊び」を意味するのだそうだ)

鈴木和美さん
https://href.li/?https://lit.link/kazumikoubou

吉田美保子さん
https://href.li/?https://lit.link/someoriyoshida

最後に、アイヌの歴史を知るための参考文献を
 『アイヌ近現代史読本 増補改訂版』(小笠原信之著 緑風出版 2001-2019)
 『アイヌ民族の歴史』(関口明・田端宏・桑原真人・瀧澤正編 山川出版社 2015)
 『アイヌからみた北海道150年』(石原真衣編著 北海道大学出版会 2021)

(2022.5.21記)

いただいたサポートは制作費として大切に使わせていただきます。 https://kuzunonuno.com