マガジンのカバー画像

葛布の帯のこと

40
葛布の帯の特徴や取り扱いの具体的なことについてと、それに付随するいくつかの諸々についてまとめています。2019-2020あたりにFacebookページで連載していた記事を転載した… もっと読む
運営しているクリエイター

2020年8月の記事一覧

〈洗い張り そして六寸帯地について〉

先日お納めしたのは六寸帯地 上の写真では分かりにくいですが経緯とも中央より色を分けており 全部で4つの色テリトリーがあり 締めた時に締め方により色の差が色々に出るようにしています 織り上げてから少し時間が経っており その間 展示をしたりもしていたので、お納めする前に一度水通し お天気が良かったので天日干し あっという間にパリッと乾き気持ち良かった * 六寸帯地をお求め頂いたのは今回初めて 着物の決まり事は守れなくて自分流です、という方のお手元へ届きました そうした感覚を

〈札幌の葛布について〉

植物の南北の違いについて以前少し書きましたが 繊維の質も産地によって違うと思います 何しろ同じ札幌市内でも葛の生えている場所によって繊維の質が違うので 採取の手法や微生物の影響をも考えると全国的に見るともっと違いが出てもおかしくはないと思います 札幌産の葛布は 私の知る限り歴史は全くありません あるとすれば 私が織り始めてからの20年ぽっち ですので、私のところで織った葛布の帯をお使いの方は それは歴史的にみて前代未聞といいますか 人類初の体験 そう考えると 何だか壮大とい

〈染めた葛の糸について〉

葛の糸は質感も光沢も生成りがやはり一番綺麗だと思いますが 染めると光沢が失われるかというとそんな事はなく、元々の繊維の状態が良ければ染めても光沢美しい糸となり布となります とはいっても 染める時には特殊な場合を除いて大抵は媒染剤を使う その多くはアルカリか酸なので糸には必ず影響を与え風合いは少し変わります ですからやはり生成りが最も葛らしい、葛の糸の表情が良く出るのは生成り ということになる その堂々巡りの渦巻きの中で 私なりの理屈で、もしくはご依頼主さまのご意向をもとに、

〈北と南の植物の違い〉

関東方面で線路脇に蔓延る葛を見た時に  あれ?葛ってこんなだったっけ  と思ったことがあります 札幌のものよりグロテスクというか うわっと覆いかぶさってくるような迫力があった 札幌のはつるんとしていて小ぶりです 葉が大きくなっても迫力はあまりありません 蔓も細いです 九州出身で幼少の頃良く葛の根を叩かされた(葛粉を取るため)という方が、自宅の目の前に大量に生えている葛を何年も葛だと分からなかったと言っていたこともありました その方も「葛ってこんなだったっけ?」と言っていまし