#3_7 FreeKに共闘戦略というマーケティングスキルを見る
2021年8月、多くのフェスがコロナの感染拡大で中止となる中で、別の理由で中止になったフェスがある。
地下アイドル界隈で2020年から隆盛を誇るFreeKという事務所主催の「今夜はアナタの富士山フェス」である。
※イベンターとして大雨の注意や避難指示が出る直前までライブをすることの良しあしはありそうだが…
また、執筆している昨日にはこのようなツイートが話題となった。
これは、FreeK所属&近しいアイドル計20組のアイドルによるメジャーデビューが決まった。
(徳間ジャパンは地下アイドルではFES☆TIVEがここでデビューしています。)
ということで、本稿では、FreeKがとった「アイドルの共闘戦略」のメリットを、いつも通り経営戦略/マーケティングの観点から考察していきたいと考えている。
そもそもFreeKとは?
もともとFreeK(フリーク)はイベント系も手掛けるアイドル事務所であり、有名なアイドルとしては//ネコプラ//やchuLaなどが所属していた。
ただ、FreeKという名前が地下アイドル業界を騒がせ始めたのはコロナ禍である。
まずオンラインイベント(”OnlyFive”というメッセージ付き画像や”talkport”というオンライン通話)をほかのグループと比較してかなり早期から導入を始めた。
また主催対バンライブを積極的に、かつ安価な入場料で開催することで、とりあえずアイドルのライブに行きたい人のはけ口となった。
何より、グループの積極的な発足(2020年からで9組?新設)により、以前に増してFreeK所属、FreeKに近いアイドルが多くなった。
食前舌語からの個人的なイメージとして「数が多い」「(まねきケチャなどが所属する)コレット同様、同一所属事務所のアイドルにファンが囲われて、その中でいろんなところに行く」というものである。
とにかく所属グループ・関係性の近いアイドル含め、常に一緒にライブして、まとまってフェスが行われているという印象を受ける。
アイドルが人気になるためにまず重要なこと
これは否応がなしに「話題になり、認知を得る」ことである。
時々「あそこはパフォーマンスのレベルが高いのになぜ見つからないのか」という声を聴くが、この情報化社会において情報の取捨選択だけでも一苦労なのに、見つけてもらうなんてことはほぼ不可能である。
認知を得ればやっとファンになってもらうかの勝負が始まるのであり、ファンになってもらえるくらいいいグループでも知られなければ意味がないのである。
しかしアイドルは広告を打つような予算も、市場でもない。
コロナ前は対バンで見つけてもらうといったことも行われていたが、コロナで対バン減った今、SNSでの話題化も重要であるし、アイドルオタクになるべく選ばれる・足を運んでもらえるライブを作り続ける必要がある。
これがいわゆる話題になり認知を得る、ということである。
共闘戦略のメリット
マーケティング、というより経営戦略的にライバルを含めた共闘戦略のメリットには「重複するコストの削減」「ブランド化」の2点にある
①重複するコストの削減
同じものを使うならみんなで共有したほうがコストが削減されるという観点。近年では大手メーカーから小売店への流通網の共有などでもライバル企業の共闘はみられている。
例:集落営農
集落を単位として、農業生産過程の全部又は一部について共同で取り組む組織をいう。
特に山間部の人が少なく大規模農業ができないと地域では、集落単位で集まって人・機械の最適配分を行うことで効率的に農作業が行える。
②ブランド化
有象無象のブランドが一人で頑張るより、まとまったほうが同じ方向に大きなインパクトを残せるという観点。まだブランドとしてまだ大衆に定着していなかったり、売上をあげたいという方向は同じ際に使われることがある。
例:月島もんじゃ振興会協同組合
もんじゃといえば下町のソウルフードだが、その印象は平成に入ってからと言われている。月島では協同組合を設立し、もんじゃ焼きのテーマパークとして月島の一区画を位置づけ、もんじゃ焼き店を集中させることで、知識のなかった人へ「もんじゃ=月島」のイメージを植え付けた。また、変わり種など、今でも各店での争いも激しく質の高さを維持している。
FreeKがアイドルをたくさん抱えて共闘する理由
前章のメリットに従って考えていく。
①重複するコストの削減
地下アイドル運営において収入源の多くは「チェキ」と「主催ライブ」である。しかし、主催ライブに関してそのコストは大きいため、安易にライブを開催することは難しい。
またチェキについても、対バンの中にはチェキの売り上げの一部をイベンターにバックがあるところもあり、トップラインが下がってしまうことも懸念される。
しかし、FreeKは自社のイベント「今夜はアナタのフェス」を開催し、自社アイドルをそこに出演させることで、主催ライブを作るとともにリスクも少なく、また一つ一つのグループがワンマンを行うよりもコストを低く開催することができる。
②ブランド化
これはアイドル業界において前前章で述べた通り「認知をとる」という観点では、各アイドルの名前を知らなくても「FreeKのアイドル」として認知をとれている点で、確実にブランド化に成功していると考えられる。
また、本来はグループ単位であるためばらばらに認識されるものの、ブランドの接点として主催フェスがあり、そこに行けばブランド全体の輪郭に触れられるため、顧客がブランドを認知しやすくなっているとも考えられる。
今後のFreeKの課題
現在のFreeKの課題としては主に「アフターコロナでの人気の低迷の可能性」「ブランドイメージの悪さ」があげられる。
まず現在のFreeKの最大の魅力は「突飛なことをしでかすところ」にある。
ただ、その突飛さは多くのところで「コロナ禍なのに○○」といったものが多く感じられる(違っていたらごめんなさい…)
また、そもそもこのような突飛なことをするコンテンツ産業で永遠の課題が弾切れである。BiSHがあれだけ話題になっていた1年前ほどから、近年やはり話題性に乏しいのも、近年の話題の弾切れがみられているといえる。
そのため、今後も(低予算で)面白いコンテンツであり続けるための方針、もしくは方向転換が必要になる。
二つ目は、その突飛さから運営からアイドルへの扱いがひどいとみられ、ファンとアンチに二極化しているところである。
冒頭に紹介した豪雨の中のライブ動画も、「アイドルがかわいそう」という趣旨のコメントが多くなされた。
ただ、このコメントの多くはFreeKを応援していない人からの第3者目線での言葉であり、既存顧客のイメージダウンへはつながらなかったと見れる。
もちろん、ファンとアンチの二極化はファンの熱量を高めるためには非常に重要なのだが、FreeKのようなまだ小さな市場の中にいるブランドが、今後大きくファン層を獲得するうえでは、この悪いブランのイメージはなくしていく努力をしていかなければならない。
まとめ
アイドルが共闘することで、認知をとってバッターボックスに立たせてもらえる。この共闘の中にはコスト削減とブランド化の2つのメリットがあるが、FreeKに関しては後者の悪いイメージをどう改善していくかが今後の課題である。
閑話休題
FreeK、蒼井聖南かわええ…(ちょろいオタク)
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