糸雨


虚しさばっかり
思い出してしまうのは
それだけあなたを愛していたから
あなたは今どこで何をしているの

乱れた前髪ばっかり
指をかけるのは
それだけあなたを離したくなかった
いっそこのまま引っ張ったっていい

風呂上がりにまた話すなんて
あなたはそんなに怯えさせるのが得意だっけ
僕はこの30分を
どう息をすればいい

あなたの名前が目に浮かぶたび
段々と滲む記憶は
あなたの名前を耳にするたび
段々と霞む心地は

ここにあったから
ずっとここにあっていて

楽しさばっかり
思い出してしまうのは
それだけあなたを愛していたから
あなたは今誰と何をしているの

雨が止むまで
隣にいたって
あなたが爪先をその髪を
濡らし続けることに変わりはない
僕の傘はあまりに小さすぎる
そんでもってボロボロじゃないか

愛すべきものはなんだ
わざわざ立ち止まるな
愛すべきものはなんだ
明晰に触れている
鮮明に見えている
分かっている
手を伸ばすだけなのは分かっている

あなたの名前が鼻につくたび
段々と香る季節は
あなたの名前を口にするたび
段々と薄まる憂は

ここにあったから
ずっとここにあっていて


https://twitter.com/kuyokaso_07?s=09

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