見出し画像

スマホゲーム徴税強化? その2

前回こちらの記事を書きました。

ちょっと補足的に、実際のお金の動きがどうなるのか、というあたりを書いていこうかと思います。
前回も取り上げた税制調査会の資料のうち、こちらの消費課税①の資料を参考に説明していきます。

現状の消費税のルール

まず消費税に関しては前回や、こちらの過去記事でも書いていますが、一応簡単に説明します。

上記のように、2015年に改正があり、インターネットを利用した、音楽、動画、書籍、ゲーム等のコンテンツに関しては国外事業者が提供したサービスでも、日本国内のユーザーからの売上に関しては消費税を支払う必要があります。

「電気通信利用役務の提供」に係る内外判定基準より

ここでいう④の取引に該当する形で、国外事業者が配信したサービスを、日本国内のユーザーが購入して支払った場合には、「課税取引」に該当し日本に消費税を支払う必要があります。

ここではアプリストアでの配信によって利用されるサービスについて説明します。そして、アプリストアはApple社のApp storeとGoogle社のGoogle playを想定しています。理由は前回の最後の方に書いた通り、この2社の売上が大きいからです
それ以外のアプリストについては、規約内容によって取引形態が異なるので、注意してください。

アプリストアにおける取引概要

アプリストアでの規約等を元に取引概要図を作って説明していきます。

現状の取引形態

アプリ配信会社がアプリをアプリストアに掲載すると、ユーザーがそれを自由に利用することができます。アプリには無料のもの、有料のもの、通常利用は無料だが有料でアップグレードできるものなど、様々なものがあります。
日本のユーザーが有料のアプリを購入、あるいはアプリ内でのオプション・アイテム購入などをすると、日本で売上が発生し、アプリ配信会社に売上金が入ることになります。この場合の大まかな資金の動きは以下のようになります。

①ユーザーがアプリストア運営会社へ支払い
アプリ内で購入処理をした場合は、ユーザーが支払ったお金はアプリストアの運営会社が回収します。(回収代行機能)
本体価格100円のものを購入した場合、消費税10%分の10円を加えて、合計110円がユーザーからアプリストア運営会社に入ります。

②アプリストア運営会社からアプリ配信会社への支払い
ユーザーの購入代金を回収したアプリストア運営会社は、ストア手数料を差し引いて、アプリ配信会社へ売上金を支払います。(ストア手数料はApp storeとGoogle playの場合いずれも30%となっています。)
そのため、本体価格100円に対して、手数料が30円発生するので、アプリストア会社は110円から30円を差し引いて、80円をアプリ配信会社へ支払います。

(※アプリストア運営会社とアプリ配信会社の間で消費税やVAT(付加価値税)がある国・地域の取引の場合は手数料にもそれらがかかりますが、簡素化のため、一旦この事例ではそれらはなしとします)

③アプリ配信会社から日本への消費税納付
アプリ配信会社は年度決算を締めて、消費税の免税事業者でなければ、日本へ消費税を納税する必要があります。今回の例では、課税事業者であるとして話を進めます。
この取引の例では、アプリストア運営会社から受け取った80円のうち、10円が日本の消費税であるため、この10円を納付します。

上記をお金の流れだけに簡素化した表した図が下図です。

資金の流れにポイントを整理

ここで、このアプリ配信会社が、日本国内で売上から受け取った消費税をきちんと納付してくれれば何も問題はないわけです。

ところが現実はそうそううまくは回っていないというわけですね。つまり、この消費税を納めない会社もあり、本来日本が得るべき消費税を回収できていないことが税制調査会での課題になっているということだと思います。

もちろん、国内の会社でも消費税(だけでないですが)を納めていない会社はたくさんあると思います。ただ、日本国内であれば、税務当局が調査をしやすく、場合によって強制的権限をもって対応することができます。
ところが、日本国外の会社だと必要な情報を集めるのが難しかったり、強制的な権限を使用することができなかったりします。
そのため、本来納付されるべき消費税をしっかりと回収するための仕組みを作ろうというのが現在検討されている事柄となります。

改正によって目指すもの

それで税制調査会で検討されている改正というのが、アプリ配信会社から納付させるのではなく、売上金の回収代行を行なっているアプリストア運営会社から直接消費税を納めさえるようにすれば楽じゃないか、ということで、そういう形態の法令にすることを目指しているわけですね。
では実際に改正するとどのような取引形態になるでしょうか。

改正により、アプリストア運営会社が消費税を納付

①ユーザーがアプリストア運営会社へ支払い
ここは先ほどと同じで変わりはありません。ユーザーから消費税込みで110円がアプリストア運営会社へ支払われます。

②アプリストア運営会社からアプリ配信会社への支払い
現行は、アプリストア側の取り分の手数料30%分だけをアプリストア運営会社はとりますが、改正により、消費税もアプリ配信会社には払わずに、アプリストア運営会社に保留しておきます。
つまり、現行と異なり、純粋にアプリ配信会社の取り分の70円だけを支払うことになります。

③アプリストア運営会社から日本への消費税納付
現行と異なり、アプリストア運営会社がアプリ配信会社に払わずに保留していた消費税を、日本に納付します。つまり保留した消費税10円が納付されます。これによって、実質的にアプリ配信会社が納付したのと同じ結果になります。

上記をお金の流れだけに簡素化した表した図が下図です。

資金の流れにポイントを整理

アプリストア運営会社が配信会社に代わって納める形で消費税が納付されました。
この方式をとることによって、たくさんあるアプリ配信会社にいちいち対応することなく、主要なアプリストア運営会社のいくつかとやりとりするだけで消費税を回収することができます。
実際に、App storeを運営するApple、Google playを運営するGoogleは日本に拠点を持っています。

最後に

このように、現状の課題点と改正によって目指すものが何かを説明してきました。

そして、税調の資料では、こういったアプリストア運営会社に付加価値税(日本でいう消費税的なもの)の納税義務がある国々が多いといったことを示しています。

財務省説明資料 消費課税① P25
同 P31

世界的にもこういった潮流であるので、日本でもアプリストア運営会社に消費税の徴収義務を課してもそれほど大きな抵抗はないと考えられるでしょう。
ただ、現在、消費税は2019年から軽減税率が始まっており、また近いうちにインボイス制度なども始まる中で、こういった新しい消費税処理の方式が導入されると、事業会社の消費税処理はより煩雑になると想定されますが、それも日本の税収の確保のためにはある程度仕方ないのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?