IT業界を巡る税務の潮流

昨年の暮れぐらいから、米IT企業に関する税金関連のニュースがいくつかありました。

米IT、日本で直接納税 アマゾンが法人税150億円納付

ざっくり書くと、Amazonの日本法人が2017年、2018年でそれぞれ約150億円ほど納税した、ということです。(どうやってその情報を得たのかは不明ですが)

以前は、それよりはずっと納税額少なかったようですが、変化の理由として売上の計上方法を変更した、という点にあるようです。

(有料版の方では、取引概要図までみられますが、有料であることを配慮して、ここにはそのまま載せませんが)

元々、外資系企業の日本法人では、「コストプラス」方式と呼ばれる売上の計上方式をとる会社が多かったようです。

簡単に説明すると、日本法人でかかった人件費等の活動経費にある一定の料率を上乗せした分を海外の親会社に請求し、それを売上計上するような方式です。

「コストプラス」方式は、税務上の要件がはっきりと明文化されている訳ではなく、おおよそこの程度なら認められる、というような実務上の通例で成り立ってきたもののようです(私も、実例に豊富に関わってきた訳ではなく、聞いた話として)

そのため、ある程度通常の事業会社が活動が制限された箇所での活動を行う場合に限って認められてきたようです。例えば、サービス活動に限定する、とか、契約は親会社名義で行う、とか

参照 外国法人の進出形態①Cost Plus (Mark-up)

しかし、インターネットの大きな普及によって、日本国内における物理的な活動なくしても販売活動などが自由にできるようになっている中で、この辺りも曖昧になってきており、線引きが難しいのではないかと思います。

そういった中で、Amazonは、日本法人の決算において、コストプラス方式をやめて、通常の売上を立てる方式(バイセル方式、みたいな言い方もするらしいです)に変えて、それに基づいて利益計算及び納税計算をするようになったということでしょう。

そして、こういった方針に対して、このようなニュースもありました。

アマゾンが日本で納税、社員「ようやく親戚に胸を張れます」 方針転換が起きた理由

「親戚に胸を張れる」という表現が日本的ではありますが、やはり、それぞれの国ごとの国民感情を無視しては、その国におけるビジネスが成り立たない以上、一定の配慮が必要ということになるのでしょう。

米IT広告収入、日本で計上へ グーグルとフェイスブック

その他、こちらのニュースにあるように、グーグルやフェイスブックも、おそらく従前は、コストプラス方式であったところをバイセル方式に変えていくのであろうと思われます。

以前から、BEPSとして、IT化が進む世界における税金に関する問題は取り上げられてきましたが、消費者目線でいうと、税金をちゃんと納めていない、という批判がビジネスにも影響をし始めているという企業側が危機感を感じ始めたのかもしれません。

グーグルは、さらに、租税回避策として知られる「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」手法を今後活用しない、というような発表もしています。

世界規模の大手IT企業に関する税務の潮流が少しずつ変わってきている印象です

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