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ソフトウェアの会計の考察③

さて、前回は主にインターネットの歴史的な話をしました。

今回は現行の会計基準のベースとなっている1998-1999年の会計基準等がどのような背景からできたのかについて触れていきたいと思います。

制作目的別の基準

先日、公認会計士協会(以下、JICPA)が公表したソフトウェア制作費等に関する公開草案(以下、本公開草案)のⅡ2(2)において、以下の記載があります。

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これは1998年に企業会計審議会が発表した『研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書』の第3項を踏まえてのものです。

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ちなみに、この研究開発基準等ができる前にどのように処理していたかというと、『研究開発費・ソフトウェアの会計と税務』(税務研究会出版局)の10ページ目にこのような記載があります。

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1998年以前はソフトウェア会計に関する基準がなかったため、このように税法の基準を準用して、「取得形態別」の会計処理をしているところが多かったようです。

それが、この基準の策定によって、制作目的別の会計処理に変わっていったことになります。

制作目的別の定義

さて、このように研究開発基準等の策定によって、ソフトウェアの定義ができた訳だが、制作目的別として定められている「市場販売目的」「自社利用」そのものの定義は特に定められてません。

1998年当時は、定義を定めるまでもなく各社で制作したソフトウェアの区分は明確であったのかもしれないが、現在(2022年時点)においてはそこが問題の発端ともなっています。

そのため、本公開草案Ⅱ2(3)において、下記の記載があります。

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「制作目的をいずれとするかが重要」とあるように、制作目的によって資産計上の有無に影響を与えることになる。この辺りは、過去に下記の記事でも述べたとおりです。

また、こちらの論文をみると、制作目的別と取得形態別の資産計上について下記の表を用いて説明しています。

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(これだけ見てもイマイチ違いはわかりづらいですが、なんとなく、イメージをつかむ感じで)

課題認識

今回のJICPAの公開草案では、クラウドサービスとデジタルゲームの項目を設けてそれぞれの課題点などを提示しています。

Ⅱ2(4)では、SaaS取引について下記の記載

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Ⅱ4(3)では、デジタルゲームについて下記の記載

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制作目的別という現状のルールが、時代に合致しておらず、実務を行う各社において個別判断となり多様性が表れている形です。

多様性は一般的にプラスのイメージで語られることが多いですが、会計処理において多様性があることは決してプラスの面ばかりではなく、財務諸表の比較可能性を失わせるものであり、一定の限度内での多様性という形に収まるのがより良い形かなとは思います。

さて、次回は個別の論点について深掘りして行こうかと思います。

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