アプリストアをめぐる問題 2
さて、前回、フォートナイトの件で書いていきましたが、それに関連して少し周辺の事柄にも触れてみたいと思います。
(念のため、断りを入れておくと、アプリの事実と文言を確認出来る規約の以外の点は、私の想像などでつないでいる点もある点はご了承ください)
前回の記事中でも取り上げたこちらの記事中でいくつか気になるポイントがあるので、触れていってみたいと思います。
「アプリ内からはApp Storeでの課金を回避してはならない」というルールには、過去から異議も出され、対策もなされてきた。
もっともわかりやすい例は、「追加コンテンツやサブスクリプションにApp Storeを使わない」というやり方だ。
アマゾンの電子書籍ストア「Kindle」は、よく知られるように、iPhone/iPadの場合、Kindleアプリ内から本を買えない。ウェブブラウザー経由でアマゾンを開いて買う。
Appleが装備している、アプリ内課金システムを使わずとも、外部決済でコンテンツの決済が可能になるケースも存在します。その辺りのルールと運用が実際にどのような感じなのかを、事実を踏まえながら考察してみたいと思います。
1.Appleの規約
Appleのアプリ開発のレギュレーションとして、App Store Reviewガイドラインというものがあります。
項目3ではビジネスについての定めがあり、3-1-1で、アプリ内課金についての記載があります。
一方で、3-1-5(a)では、アプリの外部で使用する商品やサービスについて定めがあります。
これを簡単に図解すると以下のような形になるでしょうか。
2.Amazonの対応
さて、そこで、先ほどの記事中にもあったように、Amazonのアプリにおいては電子書籍であるKindle版を購入することができないようになっています。一方で、PCでAmazonサイトをひらけば、Kindle版を購入できます。そして、購入したものは、Kindleアプリで読むことは可能です。
①PC画面
これはPCで開いたAmazonの購入画面です。
コミック(紙)も電子書籍であるKindleも両方普通に購入することができます。
②アプリ画面
2つ並べていますが、違いが分かりますか?
左側は、Kindle用の購入画面です。ただし、「このアプリ内では本を購入できません」と記載があり、アプリで購入はできません。
一方で、右側は、紙のコミックの購入画面ですが、こちらは購入メニューが表示されており、購入できます。
ちなみに、画面タップの途中でわざわざこう言った表示も出てきます。
③スマホのブラウザ
そして、こちらの画面はiPhoneのchromeのブラウザ(つまり、Amazonのアプリではない)で開いたAmazonの画面です。
この場合は、PCと同様に、Kindle版も購入することが可能です。
iPhoneでも、アプリではKindle購入できないけれども、ブラウザで開くと購入できるのです。
なんじゃそりゃ?と言いたくなる現象ですが、これが今の実際なのです。
多分、これを見た人の多くはすっきりしない感じがすると思います。
PCからなら購入できて、アプリからだと購入できない。アプリから購入できないのであれば、スマホなどのモバイル端末から購入できないかと思いきや、アプリではなく、ブラウザでAmazonサイトを開いて入ると購入できる、、、
ちょっとまとめるとこんな感じかと思います。
推測するに(ある意味自明ですが)、iPhoneアプリでKindleを販売すると、アプリ内でのデジタルコンテンツの販売に該当し、Appleのガイドラインではアプリ内課金を使用せざるをえないため、アプリ上でのKindle販売をしていないということでしょう。
3.提供方法の違い(アプリ・ブラウザ)
前述のAmazonのように、アプリ上での決済を回避すれば、手数料30%を取られることがないので、全部そうしたら良いのではないか(o・ω・o)?
しかし、単純にアプリから外部決済システムへのリンクをつけてそこで決済させれば良いという訳ではありません。
先ほど掲載した、App Store Reviewガイドラインの3-1-1にはこの文言があります。
App内課金以外の方法で、ユーザーを何らかの購入に誘導するボタン、外部リンク、その他の機能をAppやメタデータに含めることはできません。
アプリ審査でこのあたりはリジェクトされることもあるようです。
また事例として、少し以前の話になるのですが、アプリ内でシリアルコード、バーコードの読み取り機能を入れていたら、Appleからリジェクトされたということもあります。
要は、コードを別口で販売すると、アプリ内課金機能を使わずにゲーム会社側が販売できてしまうので、それがアプリ内課金を故意に逃れるために使われることができるために不可、ということですね。
一方で、最初の掲載した記事を初め、いろいろなところで言われているように、NetflixやSpotifyはアプリ内での決済機能は入れずに、webサイトの方でのみ決済できるようにしているではないか、という点はどうなのでしょうか。
このあたりがまた微妙なところで、Apple側の判断基準も不明なところが多いのですが、ざっくりこんな感じではないかな、と。
アプリのみでサービスを提供しているものは、アプリ内課金が必須であるが、Webブラウザでサービスを提供しているものに関しては、アプリもリリースしていたとしても、web決済を使ってもOK、というような。
ご存知の通り、NetflixやSpotifyはWEBでも利用できます(というか私もNetflix契約していますが、見るときは、基本的にPCからです)
そしたら、ゲームアプリに関しても、WEBでもサービス提供すれば、WEB決済を入れて高いアプリ手数料払わなくて済むのではないか?と考えるところです。
しかし、(今は環境変わってきているかもしれませんが)アプリのゲームは、スマートフォンの機能を使った操作性の元で成り立っているものもあり、WEBブラウザで同じゲーム性を出せるかというと、必ずしもそうではないケースが多いのではないかと思います。
つまり、アプリではサービス提供できるけれども、WEBブラウザでは同じ水準のゲームは提供できないケースもある、という状態です。
実際、日本のゲームアプリランキング上位のサービスを見ても、iPhoneアプリで提供されているが、WEBでは提供されていないものがほとんどです。
そのため、WEB決済が使えずに、アプリ内課金システムを使わざるをえないという形になります。
以上の事柄をまとめると、このような状況ではないかと推測します。
ここで、さらに、WEB/アプリ両方でサービスを出しているケースを考えると、取り得るパターンがいくつかあります。
ここで、クックパッドの事例をちょっと見てみます。
クックパッドも、PCやスマートフォンのブラウザでも見れますが、iPhoneのアプリとしてもリリースされています。
そして、クックパッドには「プレミアムサービス」の会員があり、それの会員になるには月額有料となっています。そして、実は、会員になるルートによって、価格が異なっています。
ヘルプページにも記載がありますね。
税込みベースで比較すると、アプリ400円に対して、WEBでは308円なので、WEB決済の方が23%分お得ということになります。(アプリ手数料30%、WEBのクレジットカード手数料が数%程度として、その差がおおよそ23%程度になる、というところでしょうか)
ただ、これだと、提供しているものが同じなのに、ユーザー側がこの違いを知らずにアプリで有料会員になると、約100円多く負担することになります。
このパターンで言うと、WEB/アプリ両方で同じサービスを出している場合はいくつかの方法を選択できます。
クックパッドは、このうちの2番目のパターンを採用していることになります。また、NetflixやSpotifyは3番目のパターンですね。
ちなみに、NetflixやSpotifyが大企業だから特別という訳ではなくて、他のサービスでも見かけます。
例えば、ビーグリーという会社はまんが王国という電子コミックサイトを運営していますが、アプリも出しております。アプリ版では、電子コミックの購入はできずに、あくまでウェブサイトで購入したものを読むためのアプリ、という位置付けになっています。(AmazonのKindleと同じ形ですね)
(ちなみに、ビーグリーについては、過去、「コンテンツ資産分析」について書いています)
そして、今回Fortniteが行ったことは、ある意味、上記の表の3つとも異なる、第4の手段というか、真っ向から規約に反するやり方をした訳ですね。
アプリ上に、アプリ内課金と、外部決済を並べて表示した訳ですオイオイ (;^◇^)ノ
そりゃもちろん、こんな感じで並んでいたら、購入するものが同じであればどちらからユーザーが購入するかは当たり前にわかるはずです。わざわざ880円で購入できるものを、わざわざ1220円出して買うわけがないのです。
当然、これはあからさまに外部課金へ誘導している訳で、例のガイドライン3-1-1に違反しているという訳です。
ただ、アプリ課金を閉じて、WEB決済だけでやる方法がどこまで許容範囲なのかが判断基準が曖昧なところがあります。
比較的最近でもこういうことが起きているようです
どうもこの辺りのApple側の判断基準というものが曖昧なのが個人的はモヤモヤしているところで、かつ、多くの会社でもそう思っているからこそ、色々な問題が起きてくるのでしょう。
App storeを運営するAppleが最終的に判断する権利を持つのは当然ではあるのですが、とはいえ、Apple側の判断一つである日突然ビジネスが変わってしまうという状態ではアプリ配信する側にとっては、安心してビジネスができません。
もちろん、アプリビジネスに限らず、大企業とその下請け企業との関係でいうと、大企業側の経営判断で突然取引が切られる、と言ったような似たような事象はどこにでもある、とも言えます。とは言え、だからといって何をやっても良い、ということにはならないと思います。
特に Appleは時価総額も世界一となっていて、社会に与えるインパクトも大きいです。そういった企業は社会的責任の意義をもっと考えるべきとも思えます。
(まあ、この辺り踏み込むとどんどん長くなっていくので、いったんここで終わりにしますが)
4.サブスクリプション
さて、また今回のFortniteの件では、一部の会社は手数料率が30%ではないく、15%となる優遇を受けている云々という話もありました。
これについても、Appleのルール上で定められているもので、特定の一部企業を優遇しているという訳ではありません。(たぶん、、、もしかしたらこっそりある可能性もないとは言えないけど)
サブスクリプションタイプの場合、最初の1年間は他のアプリ同様に30%の手数料がかかりますが、2年目以降は半分の15%になります。
こちらにも同様のことを記載しています。
このように、サブスクリプションにすれば手数料率を下げることができるのです。
ちなみに、今回のFortniteでは、下の図のように、サブスクリプションではなく、「V-BUCKS」というゲーム内通貨の購入であるため、手数料割引は適用されないケースだと思います。
個人的には、サブスクリプションが2年目以降半額になるのであれば、他のゲームなどで使用するゲーム内通貨についても同様に半額にしても良いのではないかと思うのですが、なぜ、サブスクリプションに限定されているのでしょうね(゚ー゚?)(。_。?)
5.ゲームアプリストア
さて、それで、3のところでも触れた、ゲームはほぼアプリでしか出していないという件に関してです。実はHTML5を利用し、スマポアプリと同様のゲーム操作性を実現できるゲームストアを作ってApple,Googleに対抗しようとした会社があります。(ありました、の方が適切かなσ(゚・゚*) )
ちょっと長くなったので、次回にしますが、その辺りを書いてみようかなと思います。
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