養子縁組編 88回目 九拾

前回の成立のための条件を、最初の例に当てはめてみると。

「日本人Aさんが、外国籍Bさんと結婚をした場合に、

Bさんの子供(嫡出でない子)をAさんが養子にする場合」

そして、Cの本国法では、養子縁組制度がない。

さらにBとCの血縁上の母子関係があり、同一国籍である時。
この場合で、民法上検討しなければいけない条件は、

⇒配偶者のある者が未成年者を養子とするには、

配偶者とともにしなければならない。

ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は
配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
(民法795条)

子供Cとの関係において、Aさんは、Cが未成年の場合は、
Bさんと「一緒に縁組をしなければいけない」

とされていますが、Bさんの本国法では「養子縁組がない」

ということになっています。

つまり、日本人Aさんは、この条文上では、

Bさんと一緒に縁組ができない?となってしまいます。

「ただし」の後は「嫡出子」のことですから、子供Cには該当しません。

すると、この条文だけでは、Aさんは、子供Cと養子縁組はできない?

と思われますが、さらにその先の条文で

「配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない」

となっています。

この「配偶者がその意思を表示することができない場合」というのが、

本国法において養子縁組制度がない場合も含む。とされているのです。

「意思を表示することができない」というのは、「制度がないから」
意思表示をすることができない。

とも考えられるということです。

(ここら辺が法律でよく言われる解釈論的な部分ではありますが、

あくまでも、「子の福祉」という

ものを主眼に置いたうえで、最大限可能なことをしようとする

姿勢でもあります)

よって、この条文では、日本人Aさんは、Bさんと一緒でなくとも

養子縁組ができる。

という結論になります。

(あくまでも、この条文だけに限っては・・・・・)

では、次に検討するのは

・配偶者のある者が縁組をするには、

その配偶者の同意を得なければならない。

ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は

配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
(民法796条)

これはBさんの同意が得られれば養子縁組は可能ですから、

とりわけ問題にはならそうです。

さらに次では

・養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、
これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
・2
 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその

監護をすべき者であるものが

他にあるときは、その同意を得なければならない。

養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
(民法797条)

これもBさんが、同意することで問題がありません。

次には
・未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。

(民法798条)

これも、配偶者の直系卑=Bさんの子供、孫等にあたりますから

問題がなさそうです。

最後に、子供Cの本国法、すなわちBさんの本国法でもある。

この本国法上に保護要件があるかを確認しなければなりません。

その場合にヒントになるのが、「養子縁組制度がない」ということです。

制度がないということは、「禁止」はしていないわけです。

ですので、そもそも制度がないので、検討するべき保護要件というものは

ないということになります。

ということで、ここまで考えて、やっと実質的な条件に関しては問題がない。

と判断できることになります。

もちろん、これらの条件に問題がないことを届出をするときには、

証拠となる証明書等を添付して届け出なければいけません。