関東から一歩も出たことが無い、そういうレベルの関東人が、幸運なことに正社員として拾ってもらった。 場所は大阪。 もはや不安が、というレベルではなかった。 コロナ渦において、書店でのアルバイトに弊害をきたす出来事があった。 日常生活に問題が無い程度の難聴という、なんだかよくわからない症状を生まれつき持っていたためだ。 さすがに無音で接客はつらかった。 ということで、バイトを辞めた。 さて、次はどうしようかと考え、年齢的なこともあって正社員の募集を探
思えば、ろくなことが無かった。 中学に入ってすぐいじめが始まった。 県外の高校に進んでもそれは繰り返された。正直もう疲れた。 だから、屋上から飛ぶのがせめてもの抵抗で――。 「そんなあなたにコチラのプラン!」 ……せめてもの抵抗で。 「今ならなんと、バラ色の未来をゲットするチャンスが手に入る!」 「なんだよもう、うさんくさいなぁ!」 本当に意味が分からなかった。 いきなり声をかけられた時は、驚いて足を滑らせそうになった。 見た目は30代のサ
あまりいい手が思いつかなかったので、火事を起こしてみました。 慌てた人たちが次々と部屋を出ていってしまいました。 「嘘でしょ」 もう少し手間取ると思ったのですが、カギを開けたまま一目散に逃げていくのです。 ますます、あの紳士が手間取った理由が分かりません。 「まぁ、よしとしますか」 楽に侵入して目的達成です。 扉を通過する際、何かあっては困るのでいろいろ仕込んでおきました。 ロックがかからないよう詰め物したり、古典的ですがドアストッパーを差し込ん
運よくボートは沈没を免れた。 しかし、推力が無くなってしまったので、とりあえず板切れを拾って船をこいでみた。 ただ、まぁ、目的地はだいぶ遠い。だが心配はしてない。なぜなら。 「ヘリの周辺を探せ! ボートを回収後、基地に戻るぞ!」 そうです。敵の部隊です。 回収しに来ますよね。ほっといたら事件ですから。 ヘリが落ちたとか、まぁ、なんか言い訳は出来るでしょうけど。 さすがにボートに死体が乗ってたらマズいですよねぇ。 というか、どこから見てたんですか
「あのー。後どのくらいでつきます?」 「二時間くらいですかねー」 ヘリの中で、パイロットに尋ねた。 凄腕のパイロットということで、夜間飛行もなんのその。会長に空を飛ばしているのだが。 「あのー。ヘリじゃない方が、よかったんじゃ?」 「現地は絶海の孤島なので。戦闘機とかだと、ホバリングも出来ませんし」 「あー。それなら途中空母に降りるとか」 「敵地の近くに空母、持ってくるんですか?」 「正気の沙汰ではない、ですね」 「それと船もダメです。機雷が大量に設置し
「こんばんわ、いらっしゃいませ」 店を開けると、すぐに客が入ってくる。 ここは町の便利屋。もとい「何でも屋」だ。必要とあらばなんでも、どこからでも商品を仕入れてくる。 「すみません。あるかどうか聞きたいんですが」 50代くらいの紳士が、店のドアを開けて入ってきた。 「なんでしょう?」 「愛を探しています」 「お引き取りください」 金を出したら愛を買えるお店のチラシを渡して帰した。 まったく。ここをなんだと思っているのだろうか。 「いやいや、そうい
都会の大通りで、仕立ての良いスーツに帽子をかぶった男の手が、まるで壁に触れているように止まっていた。 何もないはずの空中を叩き、壁に戸惑っているかのようだった。 男は道行く人へ向けて叫んでいるようだったが、何も聞こえない。 通行人はそれを横目に通り過ぎていく。 何人かは興味を持って立ち止まり、男の前に置かれた空き缶へ小銭を入れていく。 そうして幾人も通り過ぎていき日が傾いてきたころ、ピエロの格好をした男が近づいてきた。 ピエロは空き缶を拾い上げると中身を確認し、
えーと。 ノートと、ツイッターを連携させて、そんでいっとりん……使い方わかんねぇ! ひゃっはー! 新しいことだ! 覚えてやるぜぇ! とか書いておけばきっとやる。たぶんやる。おそらくやる。さぁ、人生を遊んでみよう。