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学問への誘い

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『学問への誘い』は神奈川大学の教員が大学と学問の魅力を伝えるために執筆したエッセイです。自身の経験など踏まえ個性豊かな作品が多数収録されています。 1986年創刊、2020年か…
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#経営学部

歴史の地、イランから

 みなさんは、中東というとどのようなイメージを持つだろうか。戦争や難民などのニュースが届く一方で、産油国やオイルマネーを原資とするドバイなどの都市の繁栄ぶりはよく知られているとおりである。ところが、このような多様な顔を持つ中東地域でもよく知られていない国としてイランが挙げられる。欧米中心のメディア報道によってとかく否定的なイメージが浸透しているイランではあるが、かつてはペルシャと呼ばれ、長い歴史と豊かな文化をもち、日本でも高級品として名高いペルシャ絨毯が生産されている国でもあ

想定していなかった会計研究者という進路

 私は現在、会計学の研究者として働いていますが、もともとは農業経済学を勉強するつもりで大学に進学しました。それがなぜ今のような仕事をしているのか、どうして会計学の研究者という想定外の進路に進んだのかを説明しようと思います。私が伝えたいメッセージは、「偶然の出会いを大切に」ということです。  私は、大学入学時には農学部と一般に呼ばれるところに入学しました。もともとは農業経済学という分野に興味を持って、勉強してみようと思っていました。ところが1年目に履修したマクロ経済学・ミクロ

新入生のあなたへ|知花愛実

 新入生のみなさん、自由な世界へようこそ! 晴れて大学生になった今、どんな人と出会い、何を学び、どんな経験をしてみたいですか。みなさんの中には親元を離れ上京し、慣れない地で不安と期待を胸いっぱいにこの春を迎えている人もいることでしょう。自由を手に入れたのも束の間、自由には自制心と責任、タイムマネジメントが重要であることに気づきはじめた頃かもしれません。これらは習得するまでに多少時間かかりますが、一度マスターできれば、大学生活もその後の人生もより楽しく、実りある時間を過ごせるこ

「お祈りメール」なんて怖くない|湯川恵子

 大学生のほとんどが考える進路選択イコール就職先選びは、ある意味で学生にとって初めて社会を「自分事」として捉える場となる。どんな会社に入社したいのか、どんな仕事をしたいのか、自分に向いている仕事は何か、こうした問いに真剣に向き合うことになる。しかしいざ就職試験に行っても不採用通知を受け取ることは少なくない。「末筆ながら、貴殿の今後のご活躍をお祈り申し上げます」で締めくくられる不採用通知を皮肉って「お祈りメール」といわれるようになった新語だが、誰が言いはじめたのか「言い得て妙」

クリエイティブ・マインド ―ものごとを見る目とクリエイティビティ―|道用大介

大学では様々なことを学びますが、私はみなさんに「ものごとを見る目」と「クリエイティビティ」を大事にしてほしいと思っています。経済・経営系の学部ではその分野の理論、分析手法、過去の事例、価値観などを学びますが、これらは「ものごとを見る目」を鍛えていると捉えていいでしょう。しかし、一方で文系学部での「クリエイティビティ」というとピンとこないかもしれません。 クリエイティビティというのはものごとをよく見て、感じ、考え、自分の外に適切な形でだしていく(形にしていく)ことだと私は考え

大学の講義は役に立つ?|飯塚重善

学生時代の思い出深い講義は、入学直後の微分積分学の初回講義である。担当の教授が教室に入ってくるなり、自己紹介なども無しに板書が始められた。後日わかったのだが、微分積分学に繫がる実数論の初歩「デデキントの切断」の話だったようである。 今だから言えるが、私などは、心底数学が好きで数学科を選んだのではないので、高校の時から大学レベルの数学に挑戦するといった先行的な取り組みもなく、高校数学だけで漠然と〝面白そうだな〟という軽い気持ちで選んでしまった。 よって「デデキントの切断」は