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学問への誘い

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『学問への誘い』は神奈川大学に入学された新入生に向けて、大学と学問の魅力を伝えるために毎年発行しています。 この連載では最新の『学問への誘い 2023』からご紹介していきます。…
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#経済学部

学びを深めるための情報との付き合い方

大学での学びということについて考えてみると、自分が大学に入った頃と比べて大きく変わった点がいくつかある。学びにおける統計データ※の入手のし易さは、その一つだと思われる。今では信じられないかもしれないが、20年程度前は、容量が1.4メガバイトしかないフロッピーディスクが(流石に姿を消しつつあったが)まだ普通に利用されており、数十メガ程度のデータを扱うことですら苦労した。インターネットを通じた統計データの提供は始まりつつあったものの、十分に整備されておらず、紙の統計書を見なければ

事例を通じてマーケティング「論」を学ぶ

 大学教員という仕事柄、入試で高校生に面接を行う、あるいはゼミ選考の一環として面接を行うことがあります。その際、よく聞かれるのは、「マーケティングは身近な学問なので、楽しい」、「マーケティングは社会に出て役に立つので、大学で(ゼミで)実践的に学びたい」といった言葉です(忖度している?)。皆さんが興味を持ってくれていることは嬉しく思いますし、私も大学入学時に皆さんと同じような思いを持ち、それが今に続いているのかもしれません。ただ、1人の教員として若干気になってしまうのは、皆さん

自分を磨くために|奥山 茂

 学生時代に3年次のゼミナールでは「批判とは何か」というような課題を与えられ、図書館にこもって四苦八苦した経験があります。その際に、最も初歩的な批判としては誤字・脱字の指摘、文章の不備の指摘があることも知りました。大学院のゼミナールでは後輩の学部生にそのような批判をしつつも、自らも徹底的な批判を受ける立場にあったことと、その際に、「間違い・不備に気付かなければその当事者と同レベルかそれ以下だ」と指導教授から指摘されたことが懐かしく思い出されます。  さて、ここではそのような

異国に行って学ぶこと|灘山直人

 異国に行くと何か新しい刺激を得られるような気がする。日常から離れた場所に身を置くことで、気分転換できるとともに、もしかしたら日本にはない刺激を得られるのではないかと心のどこかで期待する。それは出張中の会社員であっても、旅行中の家族であっても、留学中の学生であっても、定年退職後に海外移住した人であっても共通して抱くものではないだろうか。私もそんな異国での刺激を期待して30歳を過ぎてフィンランドで暮らし始めた。最初は何でも面白く映り、日本との違いを探せばいくらでもあった。気候、

今さら聞けない……「わからない」との付き合い方| 品川俊介

みなさんは、インターネットで何かを調べる際、「今さら聞けない○○」というタイトルがつけられたサイトを目にしたことがありませんか? Amazonで書籍を検索してみても、(私の専門とする経済学の本を含め)『今さら聞けない~』と題されたものが多数ヒットします。これらのことが本当に「今さら聞けない」かどうかは別として、このようなタイトルは人の目を引くために有効であると考えられているのでしょう。 たしかに、世間では常識とされているようなことを、自分が「知らない」「わからない」というこ

じっくりと、かつ軽やかに| 小川淳平

20数年前の春、私は新しい世界への期待と緊張とともに大学に入学しました。 通学先が地域の男子校から華やかで大きなキャンパスとなり、とにかく自分の居場所を見つけるのに懸命であったように思います。 経済学は、希少な資源の配分を考えます。何かを得ることはほかの何かを諦めることになりえます。大学生になると自分の意思で「時間」を決めることが増えます。高校までのように、毎朝早く家を出なくてもよいかもしれませんし、履修する授業や授業後・週末の過ごし方の自由度も高まります。また、社会人とは