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旦那が私のエプロンで手を拭いた


 このエプロンは大学時代の友人から結婚祝いで貰ったもので、かれこれ10年ほど使っている。
 可愛いエプロンを見つけても買うのを我慢してきた。つけられなくなるまで貰ったエプロンを使おうと決めていたから。
 このエプロンをつけて私が作ったものを食べて、私たち夫婦は生きてきた。
 旦那もこのエプロンには愛着があるはずだ。新婚の時なんかは下品なエプロンのつけ方をして2人で楽しんだりもした。

 そのエプロンで旦那は手を拭いたのだ。とっさに私は旦那の首を両手で掴み、前後に振った。どういうつもりかを大きな声で問い続けた。

 「いや、わかなもエプロンで手拭いてるじゃん」

 そう言ってこの前のホームパーティー中に撮った動画を見せてきた。そこには料理を振る舞う私に友達がシュークリームを渡してきた時に、とっさにエプロンで手を拭く私が映っていた。

 その時の私と、今のお前では状況が違うだろ、的なことを大声で言いながら旦那の首を手で掴み、前後に振った。のこりの後片付けの全てとこのエプロンを含めた洗濯を命じた後に飲んだビールが美味かった。お酒は飲むまでのプロセスまでがとても大事な飲み物なのだと改めて思った。




ハラグチわかな

1981年、岐阜県生まれ。エッセイスト。婚約日当日から夫婦生活についてのエッセイをブログに投稿。2014年、ブログの記事をまとめた『私たちは普通の夫婦でしょうか』を出版。さまざまな年代の女性から支持を集め、エッセイストとしての地位を早々と確立させる。
主著に、『今日は旦那が出張でーす(笑)』、『毎日ピザを食べたい 〜シーフード〜』『勝ち組でも負け組でもない大多数の大人へ』などがある。

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