見出し画像

初詣の帰り道(2016/1/1)

 歩き疲れた帰り道。家までの道のりが途方もなく遠く感じる。

 毎年、初詣は4日、5日頃に行っていた。
 初夢もそのくらいに見ていた。
 今年はいいスタートを切りたくて、生まれて初めて1日に初詣に行った。人の多さに驚いた。酒に酔っている人もいて、なんて罰当たりなやつだと思った。お参りの列に横入りするやつもいた。その上、願い事まで叶えてもらおうなんて大層めでたい。

 俺は今年、やり遂げたいことがある。
 会社で売上No.1になること。
 今年7年目で社員30人ほどのベンチャー企業だ。

 500円を賽銭箱に入れて願い事をした。

 「今年は彼女が出来ますように」

 神様に嘘をつくのは良くない、と土壇場で思ったのだ。親や友人にいう建前の目標を祈るのは失礼だと。

 初詣でヘトヘトになった体に鞭を打ち、初売りに向かった。康二は一通り服を見てから1番気に入った服を買いに戻るスタイル。とにかく歩くのだ。
 「ビビッと来たら買っちゃえばいいんだよ!」
 「めっちゃ似合うじゃん!」
 「タイムセールらしいよ!」
 俺が言ったこれらの言葉は全て宙に浮いた。

 欲しくもない下着を買った。
 大きな袋を持った若い子に混じり、小袋を持った俺も電車に乗り込む。

 年の初めに立てた目標を、年の最後まで想い続けた年が無かった。
 今年は彼女が出来るかな。
 愛と別れて今年で3年が経つ。
 今も帰り道に愛のことを考える時がある。
 悲しくはない。むしろ暖かい気持ちになる。

 4日までのスケジュールを確認する。
 プチ同窓会が続く。
 今日はお笑い番組を見て過ごす。
 とにかく寒い。暖かい服でも買えば良かった。
 コンビニに寄る。タバコを買う小銭がない。
 お賽銭に入れた500円を後悔する。
 彼女が欲しいとお願いするなら「ご縁」にかけて5円玉で良かったのに。

 いいスタートを切り損ねている感じが否めない帰り道。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?