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そろそろ足が痺れてきたからのいてくれてもいいんだけど

 おじさんには少し前、つまり華の中高生には悠久の太古の話。

 

 先生、この古文の問題なんですけど、「かひなく立たん名こそ惜しけれ」という短歌の下の句の部分、「かひなく」の部分が「かひな」と「甲斐無く」の掛詞だということはわかって、女の人がこの歌で男の人の腕枕をしてあげようという申し出を断っているということまではわかったんですが、なんでこの男の人は、腕枕なんてしようと思ったんですか?手枕ってどういうことなんですか?

春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たん 名こそ惜しけれ

周防内侍『千載集』雑・961


 と、トンチキなことを尋ねてきた高校生がいて、俺はどう答えればセクハラのそしりを免れることができるのかと頭をひねったものだけれど、そんなことはまあ今はどうでもいい。古文教育とセクハラ問題はまたそのうちきちんと書くことにしよう。



 さっきから、愛しの柴犬ムギコちゃんが俺の膝に顎を乗っけて、腕枕ならぬ膝枕を決め込んだ状態でスヤスヤと眠ってしまわれたのだ。

 それはもう沈魚落雁ラブリーキュートな寝顔なので、俺はすぐさま彼女を起こさないようにそっと身をよじってスマホに手を伸ばしてシャッターを切り、この羞花閉月スイートプリティーな横顔を全世界に発信せねばならぬと使命感に駆られたのだが、やんぬるかな。どうトリミングしようにも、閲覧注意の不快画像おじさんのスネ毛が入り込んでしまう。これは困った。俺は世界で一番かわいい柴犬の写真を共有する親バカを発動して不興を買うことはやぶさかではないけれど、自分の身体部位を露出して喝采を浴びようとするつもりはさらさらないのだ。

 しかたがないのでこの微笑ましい光景は俺の脳裏にだけしまっておいて、その残像だけでも文章にして世界におすそ分けすることにしよう。

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