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M&A後の主人の変化(後編)

後任者が配属された

半年後の退職が迫る中、ようやく後任者が配属されました。
彼は買収企業から派遣された若者で、素早く仕事を覚えてくれました。
PC操作もスムーズにこなし、引き継ぎ作業は順調に進行していきました。

主人に変化が!

「いつものように朝の準備を進めていると、主人がまた「会社に行きたくないなぁ」と言い出しました。
「またか...」とため息をつきつつ、主人の顔を見たとき、衝撃が私を襲いました。少しニヤけていたのです。「えっ!ニヤけている?」
はい、そうです。会社に行きたくないと言いながらも、前ほど深刻さは感じられなかったのです。

それからも主人は「行きたくない」と言いつつ、前のように目に生気がない様子はありませんでした。

そればかりではありません。以前は、会社から帰宅すると、仕事について語ることが多かった主人ですが、その頻度が次第に減ってきました。

どうやら後任者が来た事が大きな原因でした。
後任者が来たと言うことで、肩の荷が降りたのでしょう。
以前の主人は教える前から「後任者は覚えられるのだろうか?」などど、心配をしていました。
しかし、今回はそのような様子がありませんでした。

言い方は悪いかもしれませんが、覚えようが覚えられなかろうが、半年後には退職するのです。
その時が来ればきっとうまく対処できると私は信じています。
おそらく、主人も同様に考え、今回は過度な心配をしていないのでしょう。

一つだけ心配な事

主人と私には会社に対して一つ心配な事がありました。
それは、主人の右腕として信頼をおいている従業員が一人います。
この人物は、長年にわたって主人や私の相談相手でありました。

新経営陣は彼を主人の後任者と任命しました。
先に述べた後任者は、実際には事務関連の仕事に派遣された者で、この既存の従業員は組織全体の統括と現場の責任を引き継ぐことになりました。

彼は「考えると夜も眠れない」と主人に漏らすようになりました。
確かに彼のこれまでの仕事とは別の領域ではあり、未知な世界です。

さらに、これまでの会社は主人がいてこそ成り立っていました。
主人が退職した後の会社の方向性は誰にも予測がつきません。
競合他社の反応、取引先の反応、初めての挑戦に対して、誰も具体的な答えを持っていません。

彼のことは心配だけど、私はきっとできると思っています。
25年前、突然父が亡くなってしまった時の私や、ある日突然、サラリーマンから経営者へと転身した主人のように、悩み苦しみながらも成長していくのです。そして、私たちが周りの人々の助けを借りて乗り越えたように、人柄が良い彼なら、きっと周りの人が助けてくれることでしょう。


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