【詩】ゆたかなくに

つかわなくなったものでいっぱいの部屋で
すがたかたちがそのままのわたしが
うたったり
ないたり
おこったり
するから
すばらしい日々はうたかたに消えて
うたがわしいことがいっぱいの部屋で
ゆたかなくにに住むきみが
死ぬまでのあいだ
とほうもない暇つぶしをしている。

今日はどのCDをながそうかと
本能のままえらぶあいだ
ほどほどにさめたホットコーヒーが
深く焙煎されたとさけんでいるから
もうもくなわたしは
そうとおくもないカップを手にとるために
そぞろに立ちあがった。

階段をのぼったさきにある
ちいさな部屋は
靴をぬぐことがふつうだから
まいにち1平方センチメートルずつ
ひろくなっているような気がして
りろせーぜんと話すきみは
きっととおくにいると思いこむぐらいに
ちいさく見えた。

しらないことばでうたう音楽をきこうと思って
歌詞カードをひらいたら
ドアベルがなって
時間がきたことに気づいた。

ありがとう
ここはゆたかなくにで
した。

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