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家庭菜園概略


0 はじめに

 私は鈴鹿山脈の麓のド田舎出身ということもあり幼い頃から自然に触れるという経験が豊富でした。中でも家庭菜園は小学生の頃からの年中行事でその歴は早15年になろうとしています。これは15年になんなんとする家庭菜園歴の総決算として、およそ家庭菜園を行うにあたって必要とされるだろう一般的な原則をまとめたものです。畑作りから収穫までの流れをざっと概略的に追ったものなので、各作業のより専門的な部分については扱いません。もちろん、私はプロの専業農家ではありませんので記述に誤りもあるでしょう。あくまで、家庭菜園を続けてきた実体験や近所の農家の方などから聞いた話をもとにアマチュアが編集したものだということにご留意ください。

これを読めば
1、家庭菜園をやるにあたっての基本的な流れが理解できます
2、家庭菜園の面白さが分かります

プランターで育てているダイコンの様子

1 畑作り

 土を柔らかくすることによって作物が根を張りやすいようにします。また、苦土石灰や肥料を土壌になじませ、畝を作ることで栽培に適した環境を整えます。これらの作業は苗を植え付ける2~4週間前には終える必要があります。

1-1 耕す

 まず畑を耕す作業からしなければなりません。これが思いのほか重労働で畑の敷地が広ければ1日ではなかなか作業を完了させることができません。また、雨が降った日の翌日などは土がめちゃくちゃ重くなって掘り起こすのが大変になり、逆に乾燥しすぎていると砂埃が舞って目が痛くなるので注意が必要です。まず、大きなシャベルを使って深くまで土を掘り起こします。(シャベルの先端が全部隠れるくらいの深さ=30cmが一つの目安だと言われています。最低でも15cm程度まで掘れば許容範囲だと思います
 その際、雑草の根や石などが出てきたらできるだけ取り除くようにしています。また、ミミズは土を肥えさせてくれるのでシャベルで潰すことがないように畑を耕す作業が終わるまで避難させてあげます。一方で、土の中にネキリムシやコガネムシの幼虫などの害虫は目を皿のようにして捜索し、発見すれば捕殺するという作業も遂行する必要があります。もし取り逃がせば植えた苗の茎をへし折られたり根を食害されたりして生育に多大な影響が出てしまいます。
 最後に、鍬を使って土の塊を砕いていきます。鍬を使っても砕けずに残っていたものは自分の手でほぐしてあげます。土がだいたい柔らかくなったら次の作業に移ります。

1-2 土壌改良

 畑を耕すという作業は土を掘り返すだけでは終わらず、苦土石灰をまくことで土壌を中和し、肥料をまき地力を回復させる作業も要します。石灰や肥料をまいたら鍬を使って土壌に混ぜ合わせまんべんなく行き渡るようにします。石灰をまく作業は最低でも苗を植え付ける2週間前に、肥料をまく作業は1週間前には終えておく必要があるとよく言われています。(ただ、わざわざ分けて行う必要もないので植え付けの2~4週間前にこれらの作業を行うのが良いでしょう。)というのも、撒いてから直ちに効果を発揮するようになるわけではないためです。また、肥料には有機肥料と化成肥料との2種類ありますがどちらか一方だけをまくのではなく、均等にまくのが良いと言われています。

1-3 畝づくり

 さて最後に畝を作るという作業もしましょう。畝を作ることによって水はけがよくなったり作物が根を伸ばしやすくなったりする効果が期待できます。また、人が水やりや収穫の際に通るための通路を確保するという目的もあります。畝の幅や高さは植えようとしている作物によって変える必要があり、小さな作物には幅の小さな畝を、大きく成長する作物には幅の広い畝を、根菜や水はけのよい土壌を好む作物には高い畝を、水をたくさん必要としているような作物には低い畝を作るのが良いとされています。よく分からない場合、高さに関してはとりあえず15cmくらいにしておけば無難な感じがします。幅に関しては何の作物を植えるのか、一列で植えるのか二列で植えるのかで全く異なってくるので何とも言えません。
 畝を作る際にはまずどの程度の幅で作るのか紐などを用いて区画を予め設定します。次にその区間の一番外側の辺にそって鍬を掘りこんでいき真ん中に土を寄せていきます。設定していた高さまで畝を上げることができたら、レーキという農具を使って畝の表面を平らにします。仕上げに側面を軽くたたくなどして固めれば完成です。
 最後にマルチングと言われる作業も検討していいでしょう。この作業では畝全体をビニール製のシートで覆うことによって、雑草が生えてくるのを防止したり水分を蒸発させにくくしたりする効果が期待できます。ただし、費用がかかるのと大量のごみが発生することになるので自己判断にお任せします。詳しい作業方法は検索してみてください。
 プランター栽培に関しては畝を作る作業以外をやってもらえれば大丈夫です。


2 苗

 家庭菜園においては苗の良し悪しの要素が50%近くを占めていると言われています(苗半作)。つまり、苗選びは収穫量を大きく左右する重要なプロセスになります。苗の入手方法は購入する場合と自分で育てる場合とに分かれます。

2-1 購入苗

 購入する苗を選定する方法について書いていきます。さて、家庭菜園においてはどんな苗を購入したかが成功と失敗とを大きく左右すると言われています。極論、いい苗を購入すればそこまで手間をかけなくてもある程度収穫できるし、悪い苗を購入してしまえばその後どうあがこうがたくさんの収穫は見込めなくなってしまうということです。つまり、プロ野球のスカウトのように将来有望なものを慎重に見極める必要があるのです。さて、ホームセンターのガーデニングコーナーなどに並んでいる苗を見極めるにあたってどのような点に注目すればよいのでしょうか。専業の農家ではないので知識は浅いですが、私は
①葉っぱの色が全体的に鮮やかで枚数が多いか
②徒長していないか
③昆虫に食害されたり病気になったりしていないか
④お花が咲きそうになっているか
⑤茎が太くてがっしりしているか
⑥節と節との間隔がつまっているか
⑦根っこがポットから飛び出していないか
⑧双葉がついていてかつ黄色くなっていないか
⑨根元がぐらぐらしていないか
などを他の苗と比較しながら検討しています。

〈また、接ぎ木苗(味がよく収穫量も期待できる植物の根よりも上の部分(穂木)を切り取り、病気に強く根をしっかり張る別の植物の根(台木)に結合させた苗)は実生苗(種子から育てられ接ぎ木をされていない苗)と比べて連作障害もほぼ起こらないし、病気にも強く収穫量も多い傾向にあるので、値段は高くなりますがおすすめです。自分で接ぎ木苗を作るという方法も考えられますがそもそも難しくお勧めできません。自分は一度もやったことがないので詳しくは書けませんが、台木にはよくカボチャが用いられると聞いたことがあります。ただ、同じ科同士なら接ぎ木がだいたいは可能だと思います。やろうとしている作物によってやり方が異なるし、そもそも工程自体が複雑なのでよく調べてからやってください。もし、実験してみたい方がいるなら挑戦してみても面白いとは思います。(しかし、チョウセンアサガオを台木にして育てられたナスを食したことによる食中毒の事案も過去にあることから不用意によくわからない植物同士で接ぎ木苗を作ることはいくら実験とは言え控えてください)〉

2-2 種から苗を育てる

 種から育てることももちろん可能ですが、例えばナスは2~3月に種をまく必要がありまた発芽の適温が20度~30度程度と言われていることからもある程度の育苗する設備がないと難しいものもあります。もし種から育てるならばマメ類や葉菜類、根菜類、オクラなどがおすすめです。
 種を植える際に最も注意しなければならないのはそれを埋める深さでしょう。種子には光が発芽するために必要な好光性種子と逆に光が発芽に悪影響を与えるような嫌光性種子とがあり、好光性種子は浅いところに埋め、嫌光性種子は比較的深いところに埋める必要があります。好光性種子を深い場所埋めたり、嫌光性種子を浅い場所に埋めたりすると発芽率が低くなってしまうので注意が必要です。どの種子が好光性で嫌光性かを覚える必要はなく、購入した種が入っている袋の外側に埋める深さなどが印字されているのでそれをきちんと守って埋めれば失敗しないでしょう。
 また、ポットに植える際は1つのポットにつき3個程度埋めるのがいいでしょう。というのも、発芽率が100%ではないからです。もったいなく思われるかもしれませんが、複数個発芽した場合は一つを残して順次間引くことになります。
 また、直接畑にまく(直播き)場合はばらまき(小さな葉菜類)や筋をつくってそれに合わせてまく条まき(根菜類やホウレン草等)などがあり作物に応じてやり方を変える必要があります。また、まくときに種と種との間隔も守る必要があります。
 水やりは基本的に種が小さいものほど多く水をやり、種が大きいものほど控えめに水を与えるのが良いと言われています。また小さい種の場合強く水をかけてしまうと種が流れ出てしまったり、土が固まって発芽しにくくなってしまったりするのでやさしくあげる必要があります。

2-3 挿し木(芽)苗

 例えば、トマトは管理の段階でわき目と言われる部分を取ることが必要になってきますがこれを捨てずに土に突き刺しておくと、なんと!根を生やし新しい苗になるのです。もちろん水を枯らしてしまうと失敗しますが。このようにいくつかの作物では挿し木することによって個体を増やすことができるのでおすすめです。特にトマトがやりやすいのでぜひ挑戦してみてください。(トマトの苗を購入するなら1つで十分です。挿し木で増やせばいいと思います。)

3 植え付け

 さてある程度まで育った苗は土に植え付けなければなりません。この植えるという作業はとても単純なように見えますが、個人的には一番気をつかう作業なのではないかと認識しています。というのも、①植え方の問題②植える場所の問題③植えるタイミングの問題のすべてをクリアする必要があるからです。

3-1 植え方の問題

 まず作物によって浅く植えなければならないもの(浅植え)と深く植えなければならないもの(深植え)とがあり、植え方を守らなければ根腐れをおこすなどして失敗してしまいます。また、植える際にできるだけポットの土は崩さないようにして植えたほうが基本的には良いとされます。(トマトやキュウリなどは例外)オクラは気をつける必要が特にあり、一般的に一つのポットに数本生えた形で売られていることが多いですが、これを分割して植えてしまうとほとんどの場合失敗に終わってしまいます。このようなタイプの品種はバラバラに植えるのではなく一緒に植える必要があります。その後生長に応じて間引きます。

3-2 植える場所の問題

 気を付けるべき点は植え方だけにとどまらず植える場所にも及びます。まず、同じ科の植物を同じ場所に連続で植えることはできないことに注意しなければなりません。病気になりやすくなったり、収穫量が減少したりします(連作障害)。毎年同じ科の植物を植えていると土壌の栄養バランスが崩れたり、特定の微生物が増加しすぎてしまうことが原因だと言われています。したがって、どこで何の植物を栽培していたのか記録を残すか、記憶しておく必要があります。しかし、この問題に関しては接ぎ木苗を購入することで概ね解消されます。
 別の問題として、植え付け間隔を守るというものがあります。別の苗との間隔を十分に確保しておかなければ株があまり成長しなくなったり、葉っぱが込み合って風通しが悪くなり病気の発生につながったりします。
 またその土壌が水はけがよい土壌か悪い土壌か把握しておく必要もあります。例えば、スイカやトマトなどの水はけのよい土壌を好む作物を水はけの悪い土壌で育てると根腐れや病気が発生しやすくなってしまいます。
 最後に植えようとしている作物が日向を好む作物なのか、日陰を好む作物なのかによって植え分けをする必要があります。トマトやキュウリなどの陽性植物は6時間以上、イチゴやホウレン草などの半陽性植物は3~4時間程度、ミョウガなどの陰性植物は1~2時間程度直射日光が当たるような場所で栽培するといいと言われています。つまり、日照条件によって植えることのできる作物に制限がかかることに注意が必要です。自分の植えたい作物が上の3つの類型のどれにあたるのかは野菜の日照条件を検索すれば判明します。マンションのベランダなどでプランター栽培をする場合、どこにおいても日の当たり具合が変わらない場合もあるでしょう。しかし、あまり日が当たらない場合でも午前中だけでも日が差し込んでいればトマトやキュウリを育てることは十分可能です。

3-3 植えるタイミングの問題

 ポットの底の方を見たとき根が透けて見えているかどうか(ポットの底の方が握って柔らかくないか)が重要な指標だと思っています(根がポットの底から飛び出していたら遅い)。ポットの底から根が見えているものは十分にポットの中で根を張り巡らすことができていると判断できるし、これ以上放置しておくと根を伸ばす場所がなくなって根詰まりをおこす一歩手前まで来ているとも言えるからです。逆に、ポットの底から根が見えていない苗(ポットの底の方が握ったとき柔らかい苗)はまだ土に植えることを控えるべきだと判断できます。
 他の指標として例えばトマトやナス、ピーマンなどはお花が咲いてからすぐに植えた方が収穫量は増えるのではないかという気がしています。さらに本葉の枚数(植えるもののにより異なる)なども参考になるでしょう。
 次に植える時間ですが、夏野菜はよく晴れた日の朝に植え、秋冬野菜は曇った日の夕方に植えるべきだとよく言われています。その理由は根が張りやすくなるからだとか植物の生育リズムを整えるためだとか言われています。
 最後に植える時期ですが夏野菜の場合一般的に5月のゴールデンウィークの連休中かそれが終わった後あたりが良いとされています。というのもそれ以前の時期はまだ霜が発生する恐れが高いからです。もし植え付け後に夜間霜が発生しそうになった場合は園芸用の土が入っていた袋を上から被せたり、不織布で上から覆ったりするなどの応急処置が考えられますが、投資できる方はトンネルを作るのがいいでしょう。越冬する作物に関しては、苗が大きくなった状態で冬を迎えさせると寒さに弱くなって枯れてしまうので、種をまく時期を調整しできるだけ小さい状態で冬を迎えさせる必要があります。 
 植え終わったら活着をよくするためすぐにたっぷりと水を与えましょう

3-4 コンパニオンプランツ

 最近、私が家庭菜園で取り入れるようになったのがコンパニオンプランツを混植するという栽培方法です。コンパニオンプランツとは植え合わせることによって、互いの成長に良い影響を与え合い共存することができるような2種類以上の植物の組み合わせを意味する用語です。これの何がいいのかと言えば農薬のまく量を減らすことができたり、また単独で植えたときよりもより立派に育つことなどが期待できる点です。例えば、マリーゴールドをキュウリやスイカと一緒に植えておくと害虫や線虫が発生しにくくなったり、病気や連作障害を防ぐことができ(マリーゴールドの病害虫忌避効果)、枝豆とトウモロコシを一緒に植えておくとトウモロコシが立派に成長するなどの効果が期待できます(枝豆の根には根粒菌がいて窒素固定を行い肥料代わりになる。トウモロコシは肥料を多く欲するという関係)。畑の彩りもよくなるのでぜひ試してみてはどうでしょうか。中には組み合わせることが逆効果になるようなものもあるので、一度調べてから実践されることをお勧めします。

コンパニオンプランツの例:イチゴとニンニク


4 維持管理

 苗を植え終えれば収穫まで管理を続けていくという段階に入ります。水やりや草取り、害虫駆除などが挙げられます。

4-1 水やり

 毎日続ける管理として水やりがあります。水やりにもいくつかのポイントがあります。まずは、水をやる回数と時間帯に注意する必要があります。夏野菜と冬野菜で大きく異なるのでそれぞれ分けてみていきましょう。
 夏野菜を育てる場合、毎日朝と夕方の2回涼しい時間帯に水をやる必要があります。気温が上がってから水をやると植物が火傷してしまいます。また全体的に水分を多く欲する野菜が多いのでたっぷり水を与えるようにします。露地栽培(畑に直接植える栽培法)に比べてプランター栽培の方が相対的に水を多く与える必要があり、特にプランター栽培の場合はプランターの底から水が流れ出てくるまで与えるということが一つの指標になってきます。
 しかし、やりすぎにも注意が必要です。というのもまだ土の表面が乾いていないような状態で次の水やりをしてしまうと根腐れしてしまったり、土の中が酸欠状態になってしまうなど生育不良の原因になってしまいます。また、夏野菜は水分を多く欲する傾向にあるとは言えすべての夏野菜が多くの水分を欲しているわけでもないのです。たとえば、アフリカの砂漠を原産地としているスイカは乾燥気味で育てる必要があります。
 冬野菜を育てる場合水やりは毎日する必要はなく、土の表面が乾いている日の気温の高い日中に行うことが重要です。特に夜に水をやってしまうと過湿気味になってしまう他、土の中に留まり続けた水分が氷結してしまい根が傷む原因になります。 
 人によって得意な作物と苦手な作物が出ることがあると言われたりしますが、それは人によって水やりの癖が異なるからではないかと思ったりしています。

4-2 支柱

 例えば、高さのある野菜を育てる場合(トマト、キュウリ、インゲン豆など)は支柱を立て紐で誘引し本体を支える必要があります。あまりにも根元に近い位置に支柱をさすと根が傷んでしまうので植え付けの前に支柱をさしておくか若干根元から離してさす必要があります。また立てる際はできるだけ深くさすと安定します。数本の支柱を組み合わせて立てることで強度が増すので、別途支柱を立てる構造を調べてみてください。支柱を買う際は他のものと比べ太くて長いものを選ぶと無難です。
 また作物が支柱の高さを超えそうになった場合は作物の先端を切り取り生長を止めます。

4-3 整枝・摘芯

 中には途中で整枝したり、脇芽を摘み取ったり、摘芯を行ったりする必要がある作物もあります。本体ばかりが大きくなってあまり実がつかなくなる原因になったりするからです。自分が育てようとしている野菜がそのような作業が必要なものか調べておく必要があります。

4-4 追肥

 畑を耕した時にまいた肥料だけでは野菜を最後まで栽培することはできず途中で何度か追加で肥料をまく(追肥)必要があります。追肥を行うタイミングは育てている野菜により異なるので調べる必要があります。追肥のポイントは肥料をできるだけ根元から遠い場所にまくようにすることです。さらに、まいた肥料の上から土を少量被せるとより肥料が効果を発揮しやすくなります。また、肥料には主に有機肥料と化成肥料の2パターン存在しますが混合させてまくとより良いとされています。また、まきすぎは厳禁で肥料やけをおこし野菜が枯れる原因になってしまいます。
 一般的に葉菜類は基本的に追肥が不要で、果菜類(実をつける作物)は収穫期になれば半月に1回程度、根菜類は間引き後に数回行うとされています。しかし、自分の育てている作物がどのタイミングで追肥が必要なのかは事前に調べておく必要があるでしょう。

4-5 草取り

 生えてきた雑草を抜くことも重要な管理の一つと言えるでしょう。特に栽培の初期段階では雑草が栽培している野菜に勝ってしまう可能性が高いので見つけ次第除去していく必要があるでしょう。
 しかし、ある程度大きくなってからは雑草をすべて取りきらない方が良いと主張する方もおられます。その理由と最も挙げられているのが病害虫対策を行うためというものです。確かに、雑草を残しておくと病害虫の住処になってしまいますが、仮に病害虫が来ても益虫も同時に来やすくなるので問題ないというロジックだそうです。また、本来野生の植物は別の種類と隣り合って自生しているのだから野菜も雑草と隣り合わせで育て競争させた方がよい(自然農法)と主張される方もいます。実際、雑草をある程度残しながら育てた野菜は雑味が取れておいしいという方もおられます。さらに土壌が乾燥しにくくなるというメリットもあるでしょう。土壌の微生物も多様化するみたいです。
 一方で、益虫が来るとは言え、やはり植物の密度が高くなるほど病害虫が来る可能性が高くなるのだから雑草は確実にとりきってしまった方がいいという方もいます。さらに雑草の方が成長が早く背が高くなり日光が遮られたり、そもそも作物に与えたはずの肥料や水分を奪われてしまうという悪影響も考えられます。ブタクサなど花粉症の原因となる雑草も多く存在し人間にも悪影響を及ぼします。ちなみに私はできるだけ雑草を抜くようにしています。
 ある程度作物が育った後、雑草をどうすべきかに関しては様々な見解が存在するのでぜひ自身で調べてみて一番納得のいく見解を採用してみてください。ただし、まだ栽培している作物が小さいうちは雑草をできるだけ除去することだけは心掛けてください。

4-6 病害虫対策

4-6-1 排除
 
害虫対策も重要です。もし害虫が葉に止まっていたらすぐに捕殺する必要があります。ただし、中には毒を持っている昆虫などもいるので確認が必要です。捕殺できない場合は農薬などを用いて撃退することになります。ホームセンターに行けば自然由来の成分で作られた農薬なども販売されているので、できるだけ土壌に滞留しないような農薬を選ぶと安心です。
 また、作物が病気になっていた場合(炭疽病やうどん粉病)すぐにその部位を除去し袋などに入れてゴミに出すか、被害が深刻な場合は他の個体に影響が出ないようにするために根元から引き抜くことも検討せざるを得ません。早期発見できれば被害は最小限に抑えられるので日頃から葉の様子に変化はないかなど観察しておく必要があります。

4-6-2 予防
 
念のため病気が発生した株とその周辺に植えられていた株には病気を予防するための農薬を散布しておくとなおよいでしょう。また、病気の発生の原因には風通しの悪さや過湿などが多いので、込み合っている葉を切り取ったり、水やりを控えめにしたりするなどの対策が必要です。

5 受粉

 果菜類の中には実をつけるために受粉が必要なものもあります。根菜類や葉菜類は当然不要な工程になります。

5-1 人工受粉が必要な場合

 ここまで来たら収穫まであと一歩です。最後に、果菜類には受粉という工程が待っています。まず、実をつけるために人による受粉が必要な作物と不要な作物とがあることに注意が必要です。例えば、カボチャやスイカは雄花と雌花とに分かれており、人の手で雄花を摘み取り雌蕊に軽くたたくように触れさせる必要があります。この作業はできるだけ朝早くに行い、また雄花はその日に咲いた新鮮なものを用います。畑で育てる場合はもし時間がなかったりして人の手で受粉させることができなくても昆虫が代わりにやってくれていることもままあるのですが、マンションのベランダでのプランター栽培となると確実に人の手で行う必要があります。また、スイカなど収穫の目安日の起点が受粉をさせた日となる作物はいつ受粉を行ったのか記録しておく必要があります。

5-2 人工受粉が不要な場合

 一方で、キュウリなどは人の手による受粉は不要でキュウリは雌花だけで実を肥大化させることができます(単為結果性が強い、逆に受粉すると種が大きくなってまずくなる)。ピーマンや枝豆は実をつけるのに受粉が必要ですが、ほとんどの場合特に何もしなくても勝手に受粉できていることが多いです(風や振動などで受粉できているのでしょう)。

5-3 一番花

 とても重要なことを言い忘れていましたが、一番目に咲いた花(一番花)の受粉に失敗すると最終的な収穫量がかなり減少してしまうので、一番花は確実に受粉させないといけません。一番花が受粉することで生殖生長が始まりますが、もし失敗すると葉や茎の成長にエネルギーが優先的に割かれるようになってしまうからだと言われています。


エダマメの花
受粉してしばらくたったスイカ

6 収穫

 さて、いよいよお待ちかねの収穫です!

6-1 収穫の目安

 さて、収穫の目安はそれぞれの作物によって全く異なるので詳しくは触れません。ただし、果菜類の場合、収穫の初期段階は株にかかる負担を少なくするため実は小さめでとった方が良いと言われています。また、実を巨大化するまで放置すると株が傷んでしまい、成りが悪くなります。葉菜類や根菜類は種まきをしてから何日経過したかが収穫の目安になることが多いです。

6-2 収穫の時間帯

 また、収穫は朝か夕方に行うのが良いとされています。例えば、キュウリやトウモロコシなど果菜類は朝に、レタスやキャベツなど葉菜類は夕方に収穫すると味が良くなると言われています。日中の暑い時間帯に収穫した場合傷みやすくなり保存可能期間が短くなるので避けた方が良いでしょう。取れたての段階が一番鮮度高くておいしいので、収穫したらできるだけ早く調理して食べてしまいましょう。さて、中にはメロンやカボチャのように収穫してからしばらくの間寝かせておいた方がおいしくなる野菜もあるので注意が必要です。


プランターで育てているピーマン(ほんとは支柱立てないとだめだけど(笑))

7 終わりに

 ここまでの文量が10000字を超えるという衝撃的なことになっていますが、私の研究成果(笑)はいかがだったでしょうか。君は法学部なのだから法律や政治に関するレポートを書きなさいと言われるでしょうか。ただ、自分が好きなことについて何か書くということになったとき一番初めに思いついたのが家庭菜園でした。
 家庭菜園をやっていて一番やりがいを感じるのはやっぱり収穫した野菜を食べる時です。家庭菜園は思いのほか大変なことが多いので達成感をおぼえるというか。やっぱり、自分で育てた野菜には思い入れがあるので、この上もなくおいしく感じるし、食べるのがもったいないくらいになります。うちにいるカニ―ヘンダックスフンドのアンちゃんにも食べてもらうのですが、ただでさえかわいらしいアンちゃんがもっと愛くるしくなってくれるので、大変だったけど家庭菜園やってよかったなって気持ちになります。家庭菜園はおなかも心もいっぱいに満たしてくれるものなのです。また、食卓に野菜が並ぶまでにどれほどの工程を経てきたのかに思いを馳せれば、農家の方々に感謝の気持ちも湧いてくるものです。
 毎年、これまで育てたことのなかった作物にも挑戦し少しずつ経験値を積み重ねています。将来的にはガーデニングアドバイザーなどの資格にも挑戦できればと思っています。皆さんもぜひ家庭菜園に挑戦されてはどうでしょうか。

家で収穫できたキュウリ
収穫間近のスイカ


先ほどのスイカを収穫してみた

8 お礼

 最後まで読んでくださってありがとうございます。お礼として、もし家庭菜園を始めるのだとしたらこれはお勧めできる!という品種を紹介して終わりにします。
ミニトマト:千果(たくさんとれる)
ナス:千両二号(栽培が簡単)マー坊(炒めるとうまい)
キュウリ:北進(たくさんとれる、みずみずしい)
スイカ:新世界(珍しい品種、種ごと食べられる、プランターでも栽培可能、中玉サイズ)
枝豆:湯あがり娘(おいしい、コクがある)
ピーマン:ニューエース(めちゃくちゃとれる、ほっといても何とかなる、これ一択)
イチゴ:らくなりイチゴ(簡単にとれる、犬も喜んで食べる)
メロン:コロタン(手のひらサイズのメロン、プランターで育てられる)
マクワウリ:プリンスメロン(育てやすくたくさんとれる)
 本格的なメロンは水の管理などが大変でまともに成功したことがありません。めちゃくちゃ難度が高いです。

一度だけ辛うじて収穫できた本格的なメロン


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