【要約練習】Marry Kate Blake, 2020, "Other Duties as Assigned: The Ambiguous Role of the High School Counselor"

※本記事は、Marry Kate Blake, 2020, "Other Duties as Assigned: The Ambiguous Role of the High School Counselor" の要約です。筆者の要約練習になりますので、一部お見苦しいところもあるかと思いますが、あたたかい目で見ていただき、もしよろしければ誤りの指摘やアドバイスなどいただけると幸いです。

要約の練習をしていきます。

本日から、論文の要約をコンスタントにあげていこうと思います。
大学院の授業で「要約は大事で習慣にしたほうがいい」と教授がおっしゃってたので、筋トレと思ってやっていこうかと思います。
基本的には専門である教育社会学系の英語論文をあつかっていく予定です。理由は、まず自分の英語読解力が非常に未熟であること、そしてこうでもしないと英語論文を継続的に読まないことがあります。。

要約にあたり、以下のことを意識していこうと思います。
要約を読まれた方で、「これ、意識できてねえじゃん!」と思われた方は、(可能な限りやさしく)アドバイスいただけるととっても嬉しいです。

〈要約にあたって意識すること〉
1.少なくとも大学生(学部や専攻問わず)は誰でも読んで意味が分かる
2.概念やケースの違いができるだけクリアに伝わるような文章にする
3.分量は「感想」を含めずA4(10.5pt)で2~3枚以内とする

はじめに

これまでの研究では、(高校の)スクールカウンセラー(以下、カウンセラー)は生徒の心理や学業などのカウンセリングを十分にできておらず、生徒一人ひとりに適切な進路を考えられていなかったり、生徒からは信頼を寄せられていなかったりするとされてきた。そうした問題の解消のためにカウンセラーの増員が求められてきたが、コスト面等で難しさを抱えている。
本研究では、カウンセリング職と職場環境である学校および学区が学校におけるカウンセラーの役割をどのように構成しているかについて調べるために、関係者へのインタビューとカウンセラーおよび学区のカウンセリング会議の観察を行う。それによって、カウンセラーの役割における困難が生徒の社会的スキルや学業の向上の可能性をいかに阻んでいるかを検討していく。

背景

カウンセリングの分野は1900年代初頭のガイダンス・ムーブメントにルーツがあり、当時は職業選択に焦点が当てられていた。その後、1920年代後半から1930年代に、カウンセラーの数の確保とカウンセリングの役割を心理的問題の対処へと拡張する動きが起こった。1958年から1965年の間にはカウンセラー数は倍増、カウンセラー1人あたりの生徒数も減少していくが、カウンセラーは教育実践に従属する者とみなされ、学校運営業務が肥大化することになる。1980年代には専門化が進みカウンセリング教育が標準化され、最近ではカウンセラーも修士卒で社会関係や感情面、学業など様々なカウンセリングを提供している。
カウンセラーの働きについては、生徒の学業や進路に関する影響を示す研究があるものの、カウンセラーの関与や組織内のポジションが不明確であり把握するのは難しい。だが組織論の観点でカウンセラーを見れば、学校や学区によってその役割がどのように配当されているか、そしてカウンセラーが生徒に貢献する仕方を探ることができる。

そのうえで念頭に置いておくのが、役割理論(Role Theory)における「役割曖昧性(Role Ambiguity)」と「役割葛藤(Role Conflict)」である。役割曖昧性は、役割内容の不明瞭さや責任範囲・評価基準の不確かさによって特徴づけられる。また役割葛藤は、役割に期待されることが不明確であることで、異なる複数の役割期待に応えなくてはならなくなってしまうことである。これまでの研究で、両者はストレスや低質なパフォーマンス、およびバーンアウトを引き起こすとされている。
スクールカウンセリングにおいては質問紙調査で業務パフォーマンスとバーンアウトに関連付けられることが知られており、最近ではインタビューや観察などの質的調査も行われている。本研究ではカウンセラーの役割曖昧性・役割葛藤を、カウンセラー個人の認識を超えて、カウンセラーの受ける訓練と配置される組織構造を見ていくが、より重要なのはそれを生徒の成績のインプットとしてとらえることである。

データと方法

調査対象地はアシュビューというアメリカ中西部の中都市で、主な対象校はハンター高校とエドワード高校。前者は地区内で最も学業成績が良く、貧困層や人種的マイノリティが少ない一方、後者はその真逆に当たる。二校を選定したのはカウンセラーが生徒の成績等に及ぼす影響の比較のためだ。インタビューは対象地内のカウンセラー計26名(上記2校11名、そのほか15名)に加え、対象地区内の主要11校の校長やキャリア指導主任、スクールソーシャルワーカーなど関係者のほか、カウンセラー養成校のメンバー11名にも実施した。そして、主な対象校である2校では2週間にわたりカウンセリング業務の場面(生徒との面談・地区内のカウンセラー会議・外部のカウンセラーとの非公式なやり取りを含む)を観察した。また、全国および州別のカウンセラー会議でも観察を実施した。
フィールドノートやインタビューのトランスクリプトは反復的なコーディングを行い、特にカウンセラーが役割曖昧性・役割葛藤にどのように直面しているか、それが業務パフォーマンスにどう影響しているかに着目して分析した。

結果

まずは「役割曖昧性」について。カウンセラーの仕事は曖昧にしか定義されておらず、その責任範囲や役割期待も不明確である。仕事がどのように評価されているかもわからないため、雇用への影響を考慮し、結果的に他の職務に当てはまらない様々な仕事を、生徒へのカウンセリングの時間そっちのけで請け負うことになってしまう。また、曖昧性は「ソーシャルワーカー」の仕事との重複にも関係がある。ソーシャルワーカーもカウンセラーと同様メンタルヘルスの専門職であり、生徒のケアのためにときに家庭や地域にも働きかけるアプローチをとる。しかしソーシャルワーカーはメンタルヘルスのために外部と連携した長期的ケアを行うというはっきりとした目的があるのに対し、カウンセラーは学業面のカウンセリングや運営管理業務など、心理カウンセリング以外のことにも責任を持っているのである。さらに業務評価についても曖昧性がある。これについては妥当な評価を行う動きが起こり現場でも試みられたが、有効な指標を見出せずうまくいかなかった。

次に「役割葛藤」について。カウンセラーは校長や地区の行政官といった、〈非〉カウンセリング専門職の人に監督されている。彼らは(心理)カウンセリングの仕事を評価することが難しいため、カウンセラーは学校現場で生徒の活動計画を組む役職として認知されてしまったり、そのため任される業務のせいで生徒への精神的・感情的ケアを行おうにも時間を確保できなかったりといった困難を抱えることになる。
カウンセラーは生徒の学業成績に責任を持っており、それは学校の評判に関わるものである(特にハンター高校のような進学校の場合)。カウンセラーは学校への責任と生徒へのケアの二者択一を迫られることになり、結果的に生徒への関わりは心理的なカウンセリングを基調としたものではなく学業への斡旋がメインとなる。そのため生徒からも「カウンセラー」ではなくむしろ「権威者」として認識されることになる。またカウンセラーにとって、生徒へのケアは教育的指導とも天秤をかけられるものになる。カウンセラーはクライアント(=生徒)中心のケアを行うよう訓練されているが、それは学業に関する指導を行うことでもあり、そのことはしばしば生徒の精神面や家庭的背景を配慮しない指導につながってしまう。カウンセラーと教育者の2つの役割の間で板挟みになり、最終的に生徒のニーズに十分にこたえられないという結果を招く。

考察

以上の結果から、カウンセラーの感じる役割曖昧性・役割葛藤が業務遂行を困難にし、ひいてはそれが生徒との関係性づくりを難しくすることがわかる。役割曖昧性・役割葛藤は地域に関わらず存在することから、こうした問題もまた地理的条件に関わらず生じていると考えられる。また今回の研究から、カウンセラーはカウンセリング以外の業務が少なければ自身が身に着けた専門性をより発揮できると考えていることがうかがえる。

示唆

カウンセラーが十分に生徒をサポートできていない状態では、生徒が精神面や学業面などでフォローを得られなかった生徒が進路などの面で不利になり、格差の増進につながりかねない。「ホール・スクール」や「ホール・コミュニティー」などの動きはカウンセラーやソーシャルワーカーを増やし、生徒を学業面のみならず精神的・身体的健康についても保障していこうとするものであるが、カウンセラーにいたっては職務内容の明確化や生徒のために使う十分な時間と資源がない限り、成功を期待するのは難しい。
今後は、カウンセラーの役割曖昧性・役割葛藤が及ぼす生徒の高校卒業や大学入学といった結果への影響のような、カウンセラーの仕事環境と生徒への影響(の認識)を関連付ける研究が待たれる。

〇感想

米国のスクールカウンセラーの仕事の困難性について書かれた論文。多くのカウンセラーやその関係者/機関へのインタビュー&観察によって、カウンセラーは学校において(組織的問題として)役割の曖昧さや葛藤を抱えており、それが生徒との関係づくりを困難にして専門である心理的ケアの遂行を難しくしている、という至極真っ当な結論が導かれる。
日本でいうところの「教員の多忙化」問題とかなり親和性を感じるが、米国はカウンセラーの位置づけが(おそらく)日本とかなり異なっており、また違った難しさを抱えているのだろうと思う。いずれにせよ、こうした“職務の際限のなさ”問題は教育や福祉などの対人職においては避けては通れないところではあるだろうが、それでも筆者のいうように「専門性が発揮されるための条件整備(職務内容の明確化や専門職遂行の時間や資源の確保)」は極めて重要であり、特に専門職を「管理する側」がいかに監督(supervise)・評価(evaluate)していくかという組織的課題は強く意識したいと感じる。

〇文献のリンク

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0038040720932563#

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?